昨年メジャーを果たしたBimiが挑戦したいことを語る|1st EP「心色相環」でさらけ出した等身大の自分 (2/2)

ギャンブルは自分を形成する大きな要素

──「心色相環」は楽曲ごとに喜怒哀楽がテーマになっていますが、喜びを表現した「博徒街道」はギャンブルがテーマになっていますね。

ギャンブルは自分の中でかなり大きな要素ですね。そもそも家系的にギャンブルが好きで。2歳ぐらいからテレビゲームでパチンコをやってたし、小学校の頃にはゲームセンターのパチンコ台に座ってて(笑)。パチンコだけじゃなくて花札、麻雀、ポーカー……賭け事はなんでもやりますね。だから、ギャンブルは自分を形成する中でもかなり大きいし、「ライフ・イズ・ギャンブル」が座右の銘。

──歌詞にも「俺は博徒 賭博の中にこそBackbone」という言葉がありますね。

そもそも、アーティストとか芸能活動自体が、ギャンブルみたいなもんじゃないですか。人の巡り合わせもそうだし、何がバズるのか、どうやって注目されるのかも時の運が大きいし。

──自分のコントロールが及ばない部分ですよね。

そこに人間を感じるんですよね。努力してなんとかなるものは、自分でもできると思うんですよ。でも、運ばかりはどうにもならないし、努力しても手に入らないものにワクワクする。そして、それこそ人間にしかない感情や娯楽だと思うんですよね。運に身を任せて、一喜一憂する……そういう人間の業というか、欲にまみれた姿が本当に好きなんですよ。

Bimi

──オリエンタルなトラックや、抑揚を抑えたまさにお経のようなフロウも印象に残る曲ですが、EPに収録された「輪 -味変-」や、過去曲である「軽トラで轢く」での演歌調のパートもBimiさんの楽曲では印象に残る部分ですね。

日本の音楽文化や感性も大事にしたいという感覚はありますね。海外の音楽も好きで、当然影響も受けてるけど、ガラパゴスな日本の音楽の魅力も同時に感じているし、世界に発信したときに、日本の音楽は新鮮に聞こえるんじゃないかなって。それに、子供の頃にじいちゃんばあちゃんの車に乗ると演歌がかかってたり、祭りの音楽も近くにあって。だからと言って聴き込んでるわけではないんだけど……。

──“体幹”として存在するというか。

そうかもしれないですね。だからそういう部分が自分の曲に反映されるのかなと思います。

聴くに堪えない言葉にラップをまぶして

──「怒鈍器」では怒りが表現されていますが、セカンドヴァースの細かく韻を踏んでいくパートなど、ラップスキルも強調されています。

怒りのままに歌詞を書いたら、聴くに堪えない言葉になったので、香辛料で臭みを誤魔化すみたいに、テクニカルなラップをまぶすことで聴けるものにしましょうと(笑)。本当に、最初は口汚すぎて呪いのノートみたいになってたんですよ。でも、それだとちょっと売り物にするには、ライブで披露するにはあまりよろしくないなと思って、この方向に落ち着きました。韻の場所や置き方はdipさんと話し合ったりもしますし、自分でもラップしていて気持ちいい場所に言葉を置いていくと、こうなっていきましたね。

──“哀”がテーマの「インベーダーインバイト」は物語性が強いですね。

コンビニで半年ぐらいバイトしてたことがあるんですけど、疲れた表情を浮かべて、「この人今楽しくないんだろうな」と勝手に想像しちゃうようなお客さんが少なくなくて。そこでの哀しさみたいなことを形にしようと思ったんですけど、それを人間対人間で書くと、説教臭くなっちゃうなと思って。それで店員側を宇宙人にして、地球外生命体が「人間はなんでそんなに無理してまでがんばるの?」と素朴に問いかけるような構成にすれば、嫌味にはならないかなと。

Bimi

──聴き心地としても、ディスコティックな展開でキャッチーさが強いですね。

この曲が薄いわけじゃないけど、ほかが濃い味の曲ばっかりなんで、手軽に聴ける曲も1曲は必要だなと。

──そういうバランスはEPというパッケージだからこそ考えたのでしょうか?

もちろん。僕のリスナーが自分の友達にBimiの曲を勧めるときに、あまりにコアな曲ばかりだと、入り口としてどうなのかなと。でも、今回のEPに収録されてる新曲は4曲ともカラーが違うし、そのどれかには興味を持ってもらえると思うんですよね。ロックもハウスもポップも……みたいな、どんなリスナーも楽しめる、どのフェスに出ても戦えるようなバリエーションになっているはずだし、それが自分の音楽的な広がりだとも思う。

──「ミツ蜂」は、これまでのBimiさんのサウンドイメージに近いように思いました。

Bimiサウンドというか、Bimiがライブでパフォーマンスしてる姿が一番想像しやすい、お客さんもノリやすい曲だと思います。やっぱりメジャーに行ったことで、既存のファンは不安になってる部分があると思うんですよね。メジャーに行ったことで変わってしまうんじゃないか、みたいな。それがもしかしたら「babel」と「インベーダーインバイト」で加速してる部分もあったかもしれないんで、「ミツ蜂」で「お待たせしました!」という(笑)。

──この曲も含めて、セクシャルなイメージや、ダーティワードとも取れる言葉も少なくはないですね。

過激な歌詞を書いたとしても、それを許してくれるレーベルだし、その意味でもこれまでと一番近いかもですね。ミツバチはススメバチに襲われたとき、集団で囲んで、発熱して倒すんですけど、その内側が熱くなるのって……「セックスやん! それもテーマにしよう!」みたいな感じで(笑)。それから“密=蜜”で、ライブハウスもイメージできる言葉だなと。あと集団で集まったりすることからサバトが浮かんで、そこから宗教的なモチーフが入ってきたり。そうやってパズルみたいに構成された曲ですね。

ジャンルを問わずに挑戦していきたい

──「babel」はBimiさんのマインドを映した側面が強い曲ですね。

自分にとってはタトゥーに近い曲ですね。「babel」というタイトルは、バベルの塔を作ったことが神の怒りに触れて、1つだった言葉が分裂して、人類がわかりあえなくなったという神話から取ってるんです。僕自身、人とわかりあうことはできないと思ってる。でも、言葉は通じなくても、ハートの部分でならわかりあえるかもしれないという、期待と不安が入り混じった歌にしたかった。そのイメージをらせん状の塔から、DNAのらせん構造につなげて、人生を表現したかったんですよね。

Bimi

──この曲を書いたことでご自身の中で何か変化はありましたか?

自分の人生と向き合えるようになったと思います。過去や現状、そしてこれからどう戦っていくかを言語化することによって、漠然と考えていたことが明確になって、自分としても引き締まったなって。

──歌詞を書くうえで意識していることはありますか?

たくさんあるんですけど、過去に自分が関わった役柄をイメージさせるような単語は極力排除していますね。そういうワードを使うことで、過去にすがっていたり、その役や作品に媚びていたりするように思われたくない。さまざまな作品に関わったのは自分にとって誇りだし、この先にはそのときを振り返ることはあるかも知れないけど、それは今ではないなって。何かを成し遂げてから振り返らないと、今の自分で満足してしまうかもしれないし、可能性を潰してしまうかもしれない。だから、何か自分で大きな手応えを感じたときに、そういったワードを使うときがくるんだと思います。

──個人的に、内面性を打ち出しても、承認欲求のような欲望はあまり現れていないように感じたんですが、その部分はいかがでしょうか?

自分の奥底を見せているつもりではいるんですが、ただ見せるだけなんですよね。別に認めてほしいわけでもないし、手助けが欲しいというわけではない。聴いた人が僕の音楽で喜怒哀楽を感じて、ライブとかでそのままの感情をぶつけてくれれば、満たされますね。

──EPをリリースした先のことはどう考えていますか?

このEPで自己紹介が終わったと思うので、これからは「こんな武器もあるよ」という手札を見せていく段階だと思いますね。フロアを沸かす曲なのか、“あなた”にだけ刺さる曲なのか、自分が歌うんじゃなくて提供する形なのか……それぐらい、いろいろな武器を自分は持っていると思うし、ジャンルを問わずに挑戦していきたいですね。そして、どんなライブでも、どんな場所でもカマします。

フォトギャラリー

イベント情報

Bimi「心色相環」発売記念パネル展

2024年3月12日(火)~25日(月)東京都 タワーレコード新宿店


Bimi POPUP STORE -心色相環-

2024年3月13日(水)東京都 池袋Club Mixa
OPEN 11:00 / CLOSE 21:20
※時間指定入場・1時間交代制


Bimi Release Party 2024 -心色相環-

  • 2024年4月17日(水)東京都 WWW X
  • 2024年4月21日(日)愛知県 NAGOYA JAMMIN'

※チケットはソールドアウト

プロフィール

Bimi(ビミ)

1998年4月28日生まれ、千葉県出身。2021年6月に配信シングル「Tai」でアーティストデビューした。2023年10月にはKING RECORDS内レーベル・EVIL LINE RECORDSからメジャーデビューを果たした。2024年3月に1st EP「心色相環」をリリース。4月に東京と愛知でライブイベント「Bimi Release Party 2024 -心色相環-」を開催する。