MONO NO AWARE「Billboard Live Tour 2024」開催記念特集|ライブは生き物、4人の目指す表現

MONO NO AWAREが10月22日に東京、10月24日に大阪のBillboard Liveで公演を行う。

6月にリリースした通算5枚目のフルアルバム「ザ・ビュッフェ」が好評を博しているMONO NO AWARE。Billboard Liveのステージに登場するのは昨年10月の初出演以来、約1年ぶりとなる。前回は活動休止中だった竹田綾子(B)に代わり、サポートベーシストの清水直哉を交えての出演だったが、竹田が復帰した今回は清水が鍵盤担当で加わる特別編成に。「ザ・ビュッフェ」のリリースツアー「アラカルトツアー」とは違った音世界が繰り広げられること必至だ。

「上質な都会の夜を演出する」と謳うBillboard Liveは、ライブハウスとはひと味違うトータルの世界観を味わえる点も魅力の1つ。そもそもMONO NO AWAREはライブという体験をどのように捉えているのか。音楽ナタリーではメンバーにインタビューを行い、バンドとして2回目のBillboard Live公演への意気込みはもちろん、これまでのライブ体験と、自分たちの目指す表現について語ってもらった。

取材・文 / 黒田隆憲撮影 / 笹原清明

公演情報

MONO NO AWARE Billboard Live Tour 2024

<出演者>
MONO NO AWARE
サポート:清水直哉(Piano, Key)

2024年10月22日(火)東京都 Billboard Live TOKYO
[1st]OPEN 17:00 / START 18:00
[2nd]OPEN 20:00 / START 21:00

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2024年10月24日(木)大阪府 Billboard Live OSAKA
[1st]OPEN 17:00 / START 18:00
[2nd]OPEN 20:00 / START 21:00

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すべてがダイレクトに伝わる空間

──MONO NO AWAREのBillboard Live公演は約1年ぶりですね。まずは前回を振り返っていただきたたいと思います。客席ですごく盛り上がって熱狂しているお客さんもいらっしゃったと聞きました。

玉置周啓(Vo, G) よく覚えています。その場に偶然居合わせた人たちだったみたいですが、一緒に盛り上がってくれて本当にありがとう、って感じです。そのほかにも、確か「イワンコッチャナイ」の演奏を始めたら会場全体のお客さんが自然に立ってくれて、ふわっと会場の雰囲気が変わったというか。お客さんが立ち上がった瞬間の驚きと感動がありました。

玉置周啓(Vo, G)

玉置周啓(Vo, G)

──前回のBillboard Liveでは、基本的に着席で観ることを想定してセットリストを組んでいたんですか?

玉置 そうですね。いつもはギターでガンガン攻めるライブをやっているけど、そのときはピアノやシンセも入れて、Billboard Liveのイメージに合わせたライブにしようという話をした気がします。

柳澤豊(Dr) 個人的にはThe New Mastersoundsみたいなダンス系のアーティストをBillboard Liveで観たときに、お客さんが自然と立ち上がって踊りだす瞬間に遭遇したこともあって、立ち上がってくれたらいいな、くらいの気持ちでいたよ。むしろ「立たせたら勝ちだな」と思ってました(笑)。もちろん最後まで座って観ている人もいたし、それはそれでいいと思う。座っていることで演者の姿が見えるし、Billboard Liveってそういう作りになっているわけですから。

──竹田さんは当時活動休止中だったんですよね。

竹田綾子(B) そうなんです。観に行くこともできなかったんですけど、本編の最後に「東京」を演奏して、そこでステージ奥のカーテンが開いて景色がすごかったというのをあとからメンバーに聞きました。想像するだけで素敵だなあと。Billboard Liveは行ったことがなくて、めっちゃ憧れの場所ですね。

2023年10月開催「MONO NO AWARE Billboard Live TOKYO」の様子。(撮影:西村理佐)

2023年10月開催「MONO NO AWARE Billboard Live TOKYO」の様子。(撮影:西村理佐)

──ほかのメンバーの皆さんは、お客さんとしてBillboard Liveに行ったことはありますか?

玉置 僕は2回ほど行ったことがあって、そのうちの1回がINO hidefumiさんでした。ローズピアノが主軸のステージで、それを観ていたのもあって、基本的にBillboard Liveは着席で落ち着いて音楽を聴く場所なんだなって勝手に思い込んでいた部分があったのかも。

柳澤 なるほどね。僕は、さっきも言ったようにThe New Mastersoundsや、最近だとエルメート・パスコアールやテラス・マーティンのライブも観に行きました。Billboard Liveはお客さんとの距離感が近くて、そこも印象に残っていますね。お客さんのいるテーブルの脇の通路を通ってステージに向かうのも新鮮ですし。

柳澤豊(Dr)

柳澤豊(Dr)

玉置 そう、柵とかもないしね。段をちょっと降りたらすぐにテーブルがあるくらいの距離感。

加藤成順(G) 僕はお客さんとして行ったときよりも、やっぱり去年自分が出たときの印象のほうが強いかな。ほかのライブハウスとはまた違った雰囲気があるじゃないですか。アンプの音や体の動きなど、すべてがダイレクトに伝わる気がするし、その点は前回の公演でも大切にしました。

──料理を食べながらライブを楽しんでもらうという形も、MONO NO AWAREにとっては新鮮だったのではないでしょうか。桃をベースにしたオリジナルカクテル「モモノアワレ」も提供されていましたね。

「MONO NO AWARE Billboard Live TOKYO」で提供されたオリジナルカクテル「モモノアワレ」。

「MONO NO AWARE Billboard Live TOKYO」で提供されたオリジナルカクテル「モモノアワレ」。

玉置 そういうことができるのもいいですよね。MONO NO AWAREを結成して最初に企画したライブでも、友達の料理人に頼んで衛生上問題なく出せる簡単なフードを提供したんですよ。「音楽を聴くためだけに行くわけじゃないライブ」というか、トータルの世界観を体験できるような場に惹かれるんです。Billboard Liveはまさに、その最上位みたいな場所ですよね。

MONO NO AWAREのライブの原体験

──前回の皆さんのBillboard Liveが、人生で初めて観たライブというお客さんもいたようです。そこで今回、皆さんが初めて観たライブ体験についてもお聞きしたいです。

竹田 私は高校生のとき、軽音楽部に入ってBUGY CRAXONEというインディーバンドのコピーをしていたんですけど、そのバンドのライブを下北沢CLUB Queに観に行ったのが最初のライブ体験です。会場が地下にあって、ドキドキしながら階段を降りて行ったときのことを強烈に覚えていますね。それまでCDとかスピーカー、イヤフォンでしか音楽を聴いたことがなくて、本当に初めて“生”の音を体感したのですが、音が直接体に伝わってくる感覚にものすごく感動しました。

加藤 いい話だね。僕は高校まで八丈島に住んでいたので、初めてライブハウスに行ったのは大学に入ってからでした。サークルの先輩がやっているオリジナルのハードコアバンドで、踊り場とかに人がたくさんたまっているようなイカツい雰囲気だったんですけど(笑)、竹田と同じように音の振動がダイレクトに体に伝わってくるのが衝撃的で、最初に生で聴いたのがハードコアでよかったなと思いましたね(笑)。

加藤成順(G)

加藤成順(G)

玉置 生まれて初めて観たライブは忘れてしまったんですけど、(加藤)成順に誘われてサカナクションのライブを幕張メッセで観たのが、いわゆる“大バコ”で観た最初の体験でした。360°にスピーカーが配置されていて、飛行機の音や電子音がサラウンドで流れて、そのあとにライブが始まるっていう演出がすごく印象的でしたし、あれだけでかい空間にたくさんの人が詰めかけている様子にも衝撃を受けましたね。例えば渋谷のスクランブル交差点の人混みなどとは違い、たくさんの人たちが全員同じ方向を向いて体を揺らしている状態を見るのは生まれて初めてのことだったし。もちろん、ライブの内容もめちゃくちゃよくて、感動して泣いた記憶があります。

柳澤 僕が初めて観に行ったライブは、UVERworldの東京ドームで、確か高校の頭くらいのときだったと思います。お姉ちゃんにチケットを取ってもらって一緒に行きました。ライブを観るのも初めてだし、あんなに人が集まってる場所に行くのも初めてで、すごく緊張してた気がします(笑)。「PROGLUTION」っていうアルバムが今でも好きなんですけど、そのときのライブはDJみたいな感じでどんどん曲がつながっていく瞬間があって、曲が終わったと思ったら次の曲が始まり、アルバムにも入っているインタールードがフェードインしてくるんです。聴いていると、いつの間にか曲が変わっていくのがすごく印象的で、それがグッときた記憶があります。

MONO NO AWARE

MONO NO AWARE

──では、これまで観たライブの中で特に印象に残っているものは?

玉置 僕は2017年にフジロック(「FUJI ROCK FESTIVAL」)で観たThe xxですね。GREEN STAGEでやっていたんですけど、音数が少ないのにものすごくカッコよかった。今年ベス・ギボンズのライブを観たときも同じようなことを感じたのですが、それまで音数が多めのロックをよく聴いていたのに対して、あれだけ音を絞り込んでいるのに、それをカッコよく響かせるってすごいなと。僕、感動するとすぐ泣いちゃうタイプなんですけど(笑)。The xxを観たときも涙が出てきて「やべえ!」って感じでしたね。

加藤 僕が思い出すのは、2018年にLIQUIDROOMで観たマック・デマルコかな。彼の音楽性も人間性もゆるくて、自然に楽しむ感じがあって、お客さんもそのムードに取り込まれている感じがしました。何かを強要するわけではなくて、「好きにしたらいい」っていう雰囲気がよかったんです。

──確か、ビールを抱えてステージに登場していませんでした?(笑)

加藤 そうそう、飲みながらやっていて、僕もついつい飲みすぎて最後はベロベロになっちゃいました(笑)。でも、それくらいライブの雰囲気に飲まれてしまうというか。演者としての人間味も音楽にも出ていて、それがお客さんを引き込んでいたのがよかったですね。

竹田 私も(玉置)周啓くんと同じくフジロックなんですけど、2016年にGREEN STAGEで観たSigur Rósのライブが本当に素晴らしくて。ちょっと肌寒い、夜の澄んだ空気の中で聴く彼らの演奏は本当にヤバかったです。それまでSigur Rósをあまり熱心に聴いてきたわけではなかったのですが、1人で泣いてしまうくらい感動して。あの体験は特別でしたね。私にとっては2回目のフジロックだったんですけど、フェスってこういう体験があるからみんな行くんだなと実感しました。

竹田綾子(B)

竹田綾子(B)

柳澤 僕は2014年のサマソニ(「SUMMER SONIC」)で観たPhoenixのライブが印象に残っています。音が本当によくて、あのときの感動を今でも目指している感じがあるかな。最近だと日本武道館で観たSTUTSさんのライブもすごくよかった。ゲストがたくさん参加するなど、STUTSさんの人脈の広さや人間性がライブに出ていて、お客さんにもそれが伝わっているのが感じられて感動しましたね。