ベリーグッドマンRover&MOCA|TEPPANなレーベル設立!絶やさず届ける冷めない音楽

ヒマやったんです。ぬか漬けとか漬けてたんで

──冒頭でアルバムリリースの予定はコロナ前からあったとおっしゃっていましたが、作り始めたのはいつ頃からですか?

Rover

Rover 5月に出したEP「Start Start Start」に「おとん~yat~」と「#みんなと作った卒業ソング」が入ってたので、その2曲はすでにあって、「STAY GOOD」と「Dreamer」も早めに作り上げたので、7月が制作の佳境でしたね。なかなか楽曲制作っていう脳みそにならなかったんですけど、MOCAが素材を集めたり音頭をとってくれたりしたので、MOCAのエッセンスがけっこう入ってるかなと思います。7月頃にはソーシャルディスタンスをとれば会ってもいいみたいな風潮になっていたんで、何度か会って。特にスピード感が必要やったんで、曲ができたらすぐ歌を録る、みたいにして作っていきました。

──MOCAさんのエッセンスというのはどういう部分に?

Rover エッセンスというか趣味みたいなところ? 「Good Vibes」とか「Chill Out」はけっこうMOCAの趣味なんです。もちろん3人とも大好きな曲調やからGOを出したんですけど、MOCAが普段聴いている音楽だったり、彼に染み込んでるものがこんな感じなんだということがわかったし、トラックメイカーのWood Cherryくんの家にMOCAが行ったりして、いろいろやってくれて完成した曲なんですよ。MOCAが一番このアルバムに対して前向きだったんかなって。

MOCA ヒマやったんです(笑)。なんもやることがなくて、ぬか漬けとか漬けてたんで。7月に集まって一気に完成させるまでに、「Good Vibes」「アイカタ」「Chill Out」あたりは断片があって。勝手にアルバムの構想を練るのが趣味で、次のアルバムの構想も僕の中ではもうできてるんです。

──プロデューサータイプ?

MOCA いや、趣味です(笑)。「アイカタ」とか原型留めてないぐらい変わってて、曲名しか残ってないんで、プロデューサーではないです。妄想家ですね。それが自分のモチベーションになって、チームのモチベーションになるのであれば全然苦じゃないというか、常に動いていきたいタイプなんです。「アイカタ」は僕が持ってきた形とはトラックもメロディも違うんですけど、Roverの出だしで「あ、これきたかも」っていう感覚がありました。力注いで届けていきたい曲ですね。

──ミュージックビデオでミルクボーイと共演していますが、漫才コンビをテーマにした曲と言っていいんでしょうか?

MOCA 漫才に限らず、大切な人全般ですね。僕たちメンバーも相方ですし、夫婦もそうやし、ワンちゃんもそうだと思いますし、野球で言えばバッテリーやチームメイトもそう。コロナ禍で改めてその有難みを感じた人が多いんじゃないかと思って、このタイミングで公開しました。僕ら大阪のチームなんで、お笑い芸人の方ともお付き合いが多いんですけど、Roverが昔、芸人さんと飲んだときにカラオケ行ったら必ず最後「リンダリンダ」歌いながら泣く、みたいな話を聞いたことがあって、そんなシーンが思い浮かんだんです。ミルクボーイさんとも10年来の付き合いなんで、この曲にぴったりな彼らにMVに出てもらおうとメンバーからお声がけしました。

自分で責任持ってカッコいいものを作る

──「Chill Out」はWood Cherryさんのトラックだそうですが、彼以外にもTOCCHIさん、GeG(変態紳士クラブ)さん、ISSEIさんのお名前が歌詞に登場していますね。

MOCA ISSEIはヒューマンビートボクサーで、歌もラップもするし、僕らの「ライトスタンド」とか「さくら」のMVも撮ってくれたんですよ。ジャパニーズニューヨーカーみたいなバイブス持ってて、なんでもやるみたいな。TOCCHIは僕らの曲のリミックスもしてくれてるんですけど、北海道から沖縄に移住して、唾奇っていうラッパーとクルー組んでやってたり。GeGはスタジオが近いんですよ。なかなか会えてないですけど、3月に「I Gotta Go feat. kojikoji, WILYWNKA & Hiplin」っていういい感じの曲を出して、ちょうどそのとき聴いてたんです。今、旬な4人というか、けっこうアンダーグラウンドですけど、間違いないトラックメイカーですね。

──そういうこともあって、この曲にはストリートっぽい感触がありました。

MOCA トラック聴いて「チルアウトっぽいな」って感じたんで、なんも考えんと速攻で作ったんです。絶対タイアップ付かへんやろし、誰にも何も言われることがないやろから、いい意味でテキトーにゆるい感じでやりました。

──これに限らず、どの曲もタイトルを見た段階でどんなことを歌っているのかある程度想像がつくというか、曲ごとのテーマがとても明快ですよね。

MOCA 「Chill Out」もそうなんですけど、僕、トラックを聴いてタイトルを付けちゃうんですよ。それで異議がなかったらそのまま進むんで。「STAY GOOD」はRoverが持ってきたんですけど、タイトルはシンプルな傾向があるかもしれないですね。

──あと、心なしか全体的にレゲエ色が濃い気がしました。

Rover 本来の僕たちのスタイルが反映されてるのかもしれないですね。3人組で歌ってるのって珍しいっちゃ珍しくて、だいたいヒップホップかレゲエかになってくると思うんです。アイドル以外は。トラックは一緒やけど、そこに乗せる感性とか間合いが3人それぞれ全然違う、けど成立しちゃうっていうのはレゲエっぽさ、ヒップホップっぽさかなと。で、たまたま大阪人だっていうことでヒップホップっていうよりレゲエかなって感じもあったり。レゲエって言いきれる曲ばかりじゃないから、J-POPですって言ってるんですけど、フォーマットとしては近いですよね。同じコード進行やし、そんなにめっちゃテクニカルなことはやってないけど、ただ自分の歌うヴァースは自分で責任持ってカッコいいものを作るっていう。その任務をずっと果たし続けてる感じはありますね。

MOCA サウンド感でいうとレゲエっぽさはあんまりないかもしれないですけど、HiDEXはレゲエアーティストにも多くトラック提供してるんで、そういうエッセンスも入り込んでるのかなと思いますね。

生まれ変わったらラッパーになりたい

──あと、やっぱりMOCAさんのボーカルはレゲエのディージェイっぽいような。

MOCA そうですね。僕、ライブで自分が歌えないのは作れないんですよ。トラックを聴いて、一番おいしい音みたいなところからちょっと上がったり下がったりするだけで、基本は一緒というか。だから全曲一緒に聞こえちゃうかな、とかも思うんですけど(笑)、それがMOCA節みたいになってればいいか、とも。よく聴いたらけっこう一緒なんですよ。自分でも気付いてるんですけど、やめようとはしてないです。

Rover 仕方ないですよね。ケツメイシのRYOさんみたいなスタイルやから。

MOCA 「#みんなと作った卒業ソング」ではちょっとポエトリーラップみたいな、語りっぽいのをやってみたんですけど、全っ然できなくて、Roverに全部直されました(笑)。「音にはまってない」って言われて、「はまんの? これ」とか思いながら。

Rover ラップに正解はないと思うんですけど、いつもやってることじゃないことをやろうとしてたから、「それやったら、ちょっとアドバイスさせてくれ」って言って、1回僕が歌い直させてもらって、聴かせたら「わ、めっちゃはまってるやん」っていう。

MOCA びっくりしました。

Rover 僕もすごい難航したんですけどね。(テーブルをトントンと叩きながら)こういうリズムで「♪『それぞれの道で頑張ろう!』なんて綺麗事」なんてフロウ、書いたことないから。でもリズムのアクセントがはまるとこは絶対あるはずだ、ってことで模索しました。ただ、もう二度とやらないでほしいです(笑)。

MOCA ビビりました。それから自分の作ったやつ聴いたら「何やろうとしててん」って思いましたよ。

Rover 逆にポエトリーラップって理にかなってるんやなって改めて思いましたね。

MOCA ライブでも毎回一緒やから、聞こえてないところで音を取れてるっていうことなんですよね。

Rover MOROHAさんとか、カッコええもんな。

MOCA 神戸で活動されてる神門さんとかもめっちゃカッコよくて、大学時代に影響受けました。

──Roverさんはポエトリーラップをやったことがなかったのに、うまくはめられたのはどうしてですか?

Rover 僕ね、めっちゃラッパーに憧れてて、何回も練習してるのにうまいこと歌えないんですよ。たぶん発声ができてないんです。ラップを本気でやるんだったら歌を辞めなあかんって思ってるぐらい根本から違ってて。MOCAはどっちかといったらラップなんですよ、発声が。僕は生まれ変わったらラッパーになりたいくらい憧れがあったから、そこはシビアに見てたのかもしれないですね。そこにチャレンジしたいと思うMOCAの好奇心はウェルカムやったんで協力しましたけど、ずっと語りラップみたいなんやったらリスナーもびっくりしちゃうから、途中でメロディを入れたりして。完成したものには僕もけっこうテンション上がりました。たぶんラップ好きなんですよ、僕。普段からあんまり聴かないようにしてるんですよ。好きやから。

MOCA 乗り移っちゃったら作品に出るもんな。

Rover 僕はラップができる体を持ち合わせてないんですよ。こないだHilcrhymeのTOCさんとテレビ番組でしゃべって、「シンガーでありラッパーのTOCさん」って言ったら「いや、僕はシンガーじゃないよ。歌なんかめちゃくちゃヘタクソだから」って言ってて、本当にその言葉がしっくりきたというか。「ラップやってて歌もやってます」はウソやと思うんですよね。どっちかだと思うんです。ソフトボールと野球ぐらい違うと思うんで。