言いたいことは「愛してる」なんでしょ?
──音作りはどうやって進めていきましたか?
どの曲も頭の中でアレンジの構想はできていて、その音のリクエストに応えられるアレンジャーさんとスタジオに入ってから一から作り上げていきました。歌詞を英語歌詞にしていく作業に一番時間がかかるので、スタジオの中でその作業をしながら音を聴いて「お、それいいじゃん」って。アレンジと歌詞の制作はほぼ同時進行でした。
──日本語独特の言い回しを英語に変えるのは難しいとよく聞きます。
それもあるし「Google翻訳で変換しました」って感じのじゃ絶対に嫌だから。日本語特有の言い回しを外国人にもわかるように、インターナショナルな肉付けをしたかったんですよね。あとは単純に日本語用に作ったメロディだと、英訳しても文字数が全然足りないんですよ。その部分は「言いたいことはこういうことだよね」っていうのを自分なりの解釈で足していかなくてはいけなくて、その作業にすごく時間がかかりました。カバーでありながら、私の価値観や経験したことが歌詞にすごく詰まっています。
──英訳するのに一番苦労した曲はなんですか?
UNISON SQUARE GARDENの「シュガーソングとビターステップ」ですね。この歌詞はかなり哲学的だし、言葉遊びの面白さもあるので、そういうものをどうやって英語に落とし込んだらいいのかと苦戦しました。何回も試行錯誤して今の形になりましたね。
──日本語でそのまま歌うだけならまだしも、英訳するということは原曲の歌詞をきちんと理解してないとできないですよね。
そうそう。しかも日本の歌詞ってオブラートに包まれていると言うか、聴いた人によってポジティブな歌なのか、ネガティブな歌なのか全然変わる可能性があるんですよ。ポエティックな要素が多いのでそれを英語にすると、何が言いたいのか答えを言いたくなる自分もいて。歌詞には「愛してる」っていう言葉はないけど、言いたいことは「愛してる」なのであれば「I LOVE YOU」って歌うべきなのか、それともこのオブラートに包んだまま歌うべきなのか……そういう部分の判断が難しかったです。
──夏目漱石が「I LOVE YOU」という言葉を「月がきれいですね」と訳したように、日本人独特の愛情表現がありますよね。奥ゆかしさと言うか。
そうですね。あえて直接言わない表現っていうのが文化の違いだなって思います。だけど英語で歌うからには英語圏の人たちにも共感してほしいし、そっちにも寄せないともったいないなって。そのさじ加減が歌詞に関しては難しいところですね。
最近の課題は体重の管理
──今年3月から47都道府県を回るツアー「BENI Live House Tour 2017 "HOTEL BENI"」を行っていますが、なぜ今回このようなツアーを?
これは完全にノリです! 今回のツアーではいろんなライブハウスを回りたかったのでせっかくなら47都道府県回っちゃおうかなって。今やっと20公演を終えて(取材は8月3日)、ツアーの重みを感じ始めました(笑)。
──重みっていうのは?
すごい体力が必要だなって(笑)。だけど昔クラブを回っていたときと同じ気持ちで、初心に戻ってライブができてめちゃくちゃ楽しいです。各地でごはんやお酒を楽しめるのもいいですよね。地酒とか食べたことないようなおいしい逸品があるから大変です。体重の管理が(笑)。
──そう言えば「ツアーの合間、-180℃冷却サウナに通ってる!」ってInstagramに投稿していましたよね。
そうですよ! 土日はいろんな土地で楽しんで、平日でどれだけ調整できるかっていうのが最近の課題です(笑)。
完璧って超つまんない
──話は変わりますが、BENIさんは今年で歌手デビューしてから13年が経ちます。そして昨年30歳になりましたが、三十代になって何か変化はありますか?
二十代の頃は、三十代になれば急に大人に切り替わると思ってたけど、意外に変わらないんだなって思いましたね。強いて変わったところを挙げるなら、あんまり考え過ぎなくなったかな。変に頑固な部分はなくなったかもしれない。
──考え過ぎていたのはいつ頃ですか?
二十代前半は「私はこういうふうに生きるんだ!」っていうルールを決めないと自信を持てなかったからすごくカッコつけていました。
──それはアーティストとして?
プライベートでもそうです。あるときふと、それが自分にとってつらかったりストレスになるんだったらそうする必要がないなと思ったんですよね。年齢を重ねるといろんな考えがシンプルになってくるのかな。これが自分だからって受け入れられるようになってきたのかもしれないです。
──シンプルな考えに変われたきっかけはなんですか?
アリシア・キーズの「The Thing About Love」って曲があるんですが、その曲は音程がハズレていたり、なんか歌い方も雑で「え? これでいいの?」っていうくらいギリギリなラインの曲なんですよ。だけどそれがめちゃくちゃカッコよくて、「あ、完璧って超つまんない」と思ちゃって。完璧を求めてもそれはただの自己満であって、伝わらなかったら意味ないなって思えたことが私にとって大きなターニングポイントになりました。それは音楽だけじゃなくて、プライベートや人生においても言えることなんですけど。
──「COVERS THE CITY」の大幅なアレンジができたのって、BENIさん自身の心境の変化も影響しているのかもしれませんね。
そうかもしれません。みんなに好きって言われなくても「こんなの聴いたことない」とか「なんか力が湧く」って思ってくれる人がいればいいんだなって。ライブで歌ったときに喜んでくれる人を見ると、それだけで次に向けて力になりますね。
- BENI「COVERS THE CITY」
- 2017年9月13日発売 / UNIVERSAL SIGMA
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初回限定盤 [CD+DVD]
3980円 / UMCK-9924 -
通常盤 [CD]
2980円 / UMCK-1583
- CD収録曲
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- 新宝島 / サカナクション
- 海の声 / 桐谷健太
- 恋音と雨空 / AAA
- Nandemonaiya(English ver.) / RADWIMPS
- ひまわりの約束 / 秦基博
- ヘビーメロウ / スピッツ
- 魔法って言っていいかな? / 平井堅
- シュガーソングとビターステップ / UNISON SQUARE GARDEN
- 家族になろうよ / 福山雅治
- ずっと好きだった / 斉藤和義
- R.Y.U.S.E.I. / 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE
- もう一度… / 童子-T
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「新宝島」MUSIC VIDEO
- 撮り下ろし映像
- BENI Live House Tour 2017 "HOTEL BENI"
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- 2017年3月30日(木)東京都 東京キネマ倶楽部
- 2017年3月31日(金)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2017年4月1日(土)熊本県 熊本B.9 V2
- 2017年4月7日(金)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
- 2017年4月8日(土)青森県 青森Quarter
- 2017年4月15日(土)香川県 高松MONSTER
- 2017年4月16日(日)愛媛県 松山サロンキティ
- 2017年4月21日(金)宮城県 darwin
- 2017年4月22日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2017年4月28日(金)広島県 SECOND CRUTCH
- 2017年4月29日(土・祝)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年6月25日(日)神奈川県 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
- 2017年7月1日(土)群馬県 高崎clubFLEEZ
- 2017年7月2日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
- 2017年7月8日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
- 2017年7月9日(日)静岡県 SOUND SHOWER ark
- 2017年7月22日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2017年7月23日(日)富山県 MAIRO
- 2017年7月29日(土)三重県 M'AXA
- 2017年7月30日(日)北海道 苫小牧CLUB ROOTS
- 2017年8月5日(土)大分県 DRUM Be-0
- 2017年8月6日(日)宮崎県 SR BOX
- 2017年8月19日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
- 2017年8月20日(日)秋田県 Club SWINDLE
- 2017年8月26日(土)鳥取県 米子 AZTiC laughs
- 2017年8月27日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2017年9月2日(土)福井県 福井まちなか文化施設 響のホール
- 2017年9月3日(日)山梨県 KAZOO HALL
- 2017年9月9日(土)山形県 山形ミュージック昭和Session
- 2017年9月10日(日)岩手県 Club Change WAVE
- 2017年9月15日(金)兵庫県 クラブ月世界
- 2017年9月16日(土)高知県 X-pt.
- 2017年9月22日(金)京都府 磔磔
- 2017年9月23日(土・祝)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2017年9月30日(土)長崎県 DRUM Be-7
- 2017年10月1日(日)佐賀県 SAGA GEILS
- 2017年10月7日(土)滋賀県 滋賀U★STONE
- 2017年10月9日(月・祝)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
- 2017年10月14日(土)山口県 周南RISING HALL
- 2017年10月15日(日)島根県 松江 AZTiC canova
- 2017年10月22日(日)徳島県 club GRINDHOUSE
- 2017年10月26日(木)大阪府 Shangri-La
- 2017年10月27日(金)奈良県 奈良NEVER LAND
- 2017年10月28日(土)和歌山県 SHELTER
- 2017年12月10日(日)宮崎県 SR BOX
- 2017年12月16日(土)北海道 cube garden
- 2017年12月17日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2017年12月24日(日)沖縄県 桜坂セントラル
- BENI(ベニ)
- 1986年生まれ、沖縄出身の女性シンガー。2002年に第8回全日本国民的美少女コンテストに出場したことをきっかけに、2004年6月にシングル「Harmony」で歌手デビューを果たす。2005年にはディズニーの人気アニメ「キム・ポッシブル」の主題歌を担当。ミュージックビデオが全世界で放送されるなど、大きな注目を集めた。2008年にリリースしたユニバーサルミュージックへの移籍第1弾シングル「もう二度と…」をはじめ、リアルな気持ちを歌ったラブソングが同世代の女性の共感を呼び、2010年発売のアルバム「Lovebox」はオリコン週間アルバムランキングで1位を獲得。2012年より男性ボーカルの楽曲を英語歌詞で歌うカバーアルバムシリーズ「COVERS」を3作リリースしており、累計100万枚ヒットを記録している。2017年9月に「COVERS」最新作「COVERS THE CITY」を発表。また同年は47都道府県を回るライブハウスツアー「BENI Live House Tour 2017 "HOTEL BENI"」を開催しており、12月24日に沖縄・桜坂セントラルにてファイナルを迎える。