ナタリー PowerPush - ベベチオ

日々の生活を優しく包み込む 自然体ニューアルバム完成

日常を続ける大切さに気付いてもらえたら

インタビュー風景

──今回のアルバム「リビングのデカダンス」を象徴している曲を1曲挙げるとすると?

「つづく」って曲ですかね。生活の中でも例えば、家族の中で誰か死んで、ひとつの命が終わったとしても生活は続いていく……そんなポジティブな強い生みたいなものがそこにはある。ベベチオがレコーディングにもなかなか時間取られへんってなったとき、言うたら僕もソロで作ろうかなって思った時期もあったんです。でも、その間にベベチオのライブがあって、2人で一緒に演奏するとやっぱエエなって思って、こんな感じで続いていくねんなって。どんなときでも“つづく”ってことを肯定していきたいというか。

──さらに今は、計らずも日常の大切さを感じやすくなっている時期でもありますしね。

そうですよね。今回アルバムができて、その中に収録された「キーワード」って曲がFM802の「ヘビーローテーション」になって、たくさん流れてうれしいんです。みんなの中に、僕の中にもそうですけど、その言葉を口にしたり、思うだけで勇気付けられたり、答えが見えてくるようなキーワードがあると思うんです。そのキーワードから、日常を続けていけることの大切さや幸せに気付くことができたり……そういうことを曲にしてみたんですけど、こういう時期だから「震災のことがきっかけで書いたんですか?」って訊かれることが多くて。曲を書いたのはもちろん震災前なんですけど、たとえ震災がなくっても、こういうことって気付いているべきことだと思うんですよね。だけど、普段は見えにくかったりすることに、こういう状況になったことがきっかけでやっと目を向けられるというか。みんなが日常の大切さに気付く時期にこの曲が流れるのは、作った者としてもうれしいですね。

このアルバムがたくさんの人に残ってほしい

──以前からベベチオの音楽の中に日常を感じることはありましたが、今回は特に日常の生活とリンクしていますよね。これまでベベチオには、ポップスとして心地良いものを追求するような職人的なイメージもありましたが、日常から発する音楽にどんどんシフトしてるように感じます。

確かに、日常からヒントをもらってることが多いですね。生活の中で感じることや、考えることの多くを占めていることがあったら、それが音楽になって出てくるというか。以前は曲を書くときに、ラッパーほどそうではないけど、韻だったり言葉の技法なんかも意識しながら書いてた部分はあったんです。例えば、ここでひねった言い回しを使うとか、表現する人はみんなそういうことで個性を出すじゃないですか? だけど、音楽を物語として考えたら、小手先な部分はあまり意味ないとも思えるようになって。もちろん、文学的なゾクゾク感みたいな「そこ、その言葉で言うんや!」みたいな喜びってあってしかるべきやと思うけど、暮らしの中にそれはいらんし……。そんなテンションで作ったのが今回の「リビングのデカダンス」なのかもしれないですね。

──それは、今回の制作を通じて気付いたこと?

そうですね。なんか自分なりに成長した、と言っていいのかわからないですけど、進歩したところというか。バリバリスーツを着てビシっと決めるような感じじゃなく、あくまで普段着というか。ちょっと話が飛ぶけど、よくミュージシャンの人とライブの打ち上げとかで音楽の話になりますよね? 「高校のとき、何聴いてた?」とか。僕、それがあんまり面白くなくて(笑)。そんなん大体わかるじゃないですか? それよりも、それぞれの暮らしを知りたい。「今年の正月どうしてた?」とか「好きなごはん、何?」とかいう話からのほうが、その人の音楽のことがわかるというか。人となりに惹かれた上でその人の表現に触れて、「それなのに、あれやってんねや?」って、もっと好きになったり。それに生活の中で大切にしていることが見えることで、その人が表現の中で重きを置いている部分が見えてくるような気もしますからね。

──なるほど。では、完成した今、「リビングのデカダンス」はどんなアルバムになったと感じてますか?

毎回、たくさんの人に聴いてほしいって思って作ってますけど、今回はたくさんの人の心に残ってほしいって思える作品になったと思います。例えば青春の頃に聴いてたちょっと恥ずかしいもんでも、改めて聴いてみると、やっぱエエなって思うものってあるじゃないですか? それはやっぱり音楽のパワーやと思うし。この先の日常の中に残ってもらえたらうれしいですね。アルバムを手にした人がいろんな変化や成長をしながら、10年後、20年後に改めて聴いたときに、その都度、いろんな聴こえ方をするような……。きっと、そういう作品になったと思ってます。

インタビュー風景

ニューアルバム「リビングのデカダンス」 / 2011年4月27日発売 / 2520円(税込) / In The Garden Records / XNHL-14003

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CD収録曲
  1. bit
  2. いとしいときわ
  3. キーワード
  4. 写真の声
  5. 愛のカタチ
  6. BOY
  7. ブギのカギ
  8. どこ吹く風
  9. 水の泡
  10. つづく
ベベチオ"ジャポネイオン2011"『リビングのデカダンス』Release Live
  • 2011年6月24日(金)
    東京都 下北沢GARDEN
    OPEN 18:30 / START 19:30
    チケット代:3500円(ドリンク代別)
    問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION(03-5720-9999)
  • 2011年6月25日(土)
    大阪府 大阪BIG CAT
    OPEN 18:00 / START 19:00
    チケット代:3500円(ドリンク代別)
    問い合わせ:GREENS CORPORATION 06-6882-1224
「リビングのデカダンス」インストアライブ
  • 2011年5月1日(日)
    大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 6Fイベントスペース
    START 15:00
  • 2011年5月14日(土)
    北海道 HMV札幌ステラプレイス
    START 17:00
  • 2011年5月15日(日)
    福岡県 福岡キャナルシティ博多 B1Fサンプラザステージ
    START 13:00
  • 2011年5月22日(日)
    大阪府 タワーレコード梅田大阪マルビル店イベントスペース
    START 15:00
  • 2011年5月22日(日)
    大阪府 タワーレコード難波店イベントスペース
    START 18:00
  • 2011年5月30日(月)
    東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
    START 19:00
ベベチオ

高校時代の同級生だった早瀬直久(Vo, G)と平良正仁(B)による音楽ユニット。それぞれ別々の道を歩んでいた2人が2000年に再会し、ユニットを結成する。2002年に宅録による自主制作CDを発表。これが話題となり、翌2003年に同作をリミックス&新曲を追加した1stミニアルバム「左右対称のダンス」をリリースする。2008年にはセルフプロデュースによる1stフルアルバム「ちょうちょ」を発表し好評を博す。その後は独自のペースでライブ活動を続け、2011年4月に約3年ぶりとなるアルバム「リビングのデカダンス」をリリース。