ナタリー PowerPush - ベベチオ
日々の生活を優しく包み込む 自然体ニューアルバム完成
ボーカル&ギターの早瀬直久と、ベースの平良正仁による2人組ユニット・ベベチオ。2000年の結成以来、良質なポップスを送り続けてきた彼らが、3年ぶり2枚目となるフルアルバム「リビングのデカダンス」を完成させた。うららかな春の日差しのような柔らかな温もりをまとったベベチオの音楽は、日々の暮らしをキラキラとした美しいシーンに変えてくれる魔法のようでもあり、一方でその美しさや楽しさは刹那的な瞬間の連続からなっているものを気付かせてくれるようでもあり、そして、さまざまな感情を思いめぐらせながら日常の生活を送れるということのかけがえのない“大切”を気付かせてくれるようでもある。充実のアルバムを完成させたベベチオから、早瀬直久に話を訊いた。
取材・文/宮内健 インタビュー撮影/平沼久奈
気張らずに大事なことだけを言おう
──前作の「ちょうちょ」から3年ぶりのアルバムとなったわけですが、その間、ベベチオはどんな時間を過ごしていましたか?
音楽制作はちょいちょいしてたんですけど、実は1年半ぐらい前に、がっつりアルバムを作ろうかって動きだした時期があったんです。前作の「ちょうちょ」の制作では、僕がひとりでバーっと作りすぎたなって思いがあったので、今回はベースの平良(正仁)と2人でああだこうだ言いながら作れればいいなと思って、一度取りかかったんです。僕が曲を作って、ヘッドアレンジはほぼできてたんですけど、平良とベースアレンジを一緒に作ろうって曲をまとめて渡したら、彼がスランプに入ってしまって。期限をいつまでって決めることが彼の中でプレッシャーになってしまったところもあったので、レコーディングに入る前に2人でとにかく作っておいて、それから本格的に走り出そうっていう。そのスタート地点に立つまでが、ちょっと時間かかりましたね。
──時間的な制限に追われず、ベベチオが2人で音楽を紡いでいくペースを取り戻すような感じで、アルバム制作が進んでいったんですね。前作「ちょうちょ」は宅録的なアプローチもあって凝った印象もありましたが、今作の「リビングのデカダンス」はサウンド的にナチュラルな印象を受けました。
今は便利になって宅録や多重録音が簡単にできるようになったから、アレンジを細かくして、音をどんどん詰め込んでいくことも、時間があればできちゃうんですよね。それに良いところと悪いところがあるのは、僕自身もこれまで作りながら感じていたところであって。前作を作り終えてから、曲が本来持っている芯の部分を大切にしたいって思えるようになってきたんです。最初の気分で音を足したくなるけど「この曲はこれでいい!」って、足さずにやった曲も数曲あって。気張らずに大事なことだけ言おうって心構えで、最後までできましたね。
写真イベントに參加して気付いた“シンプル”の魅力
──純粋に楽曲を引き立たせて、シンプルに歌と言葉を響かせるサウンドというか。
もちろん音響的なところにこだわってもいて。騒がしいところでスピーカーで聴いたらいまひとつわかり辛い部分も、静かな場所でしっかり聴いてもらったら、細かいこともしてるんだなってわかってもらえると思うんですけどね。今回、カメラマンさんといろいろ話したことが、アルバム作りのヒントになった部分もあるんです。
──それは、どういった感じで影響を受けたんですか?
「ALBUM EXPO OSAKA 2010」という写真のイベントがあって、そのテーマ曲として「写真の声」を作ったんです。それがきっかけで、平間至さんをはじめ何人かのカメラマンさんと知り合って、いろいろとお話させてもらうようになって思ったのは、モノクロ写真のほうがカラー写真よりもカラフルなんじゃないか?ってこと。それは、音楽にも通じるなと思ったんです。音楽でもシンプルなほうが、元々眠ってる複雑な思いや感情が際立って見えてくることがある。だからあまり派手にせずに、曲ができたときのテンションを大切にするのも大事だなって思うんです。
──例えばiPhoneの写真アプリもそうですけど、フィルターをかければ、元の写真からどんどんイメージが変わっていったりもしますしね。
それが簡単にできちゃうのが、良いところでもあり、殺伐としているところでもあるというか。元々どんなやったっけ?って感じで変わっていっちゃうのは、ある意味仕方ないけど、自分のやる曲ぐらいはジジイになっても歌えて、演奏できるものでありたいというか。すぐ歌える状態にしておきたいっていう気持ちはありましたね。僕らは、ライブやるときは2人やから打ち込みを使うこともあるけど、最近はアコギとベースだけでもやりますし、1人のときやったら、何も楽器を弾かないでハンドマイクだけで歌ったりすることもありますからね。だけど音源を制作していくってことはアイデアを足していく作業で、それももちろん大事なことでもあって……って、そんな感じのことを考えながらアルバムを作ってました。
ベベチオ"ジャポネイオン2011"『リビングのデカダンス』Release Live
- 2011年6月24日(金)
東京都 下北沢GARDEN
OPEN 18:30 / START 19:30
チケット代:3500円(ドリンク代別)
問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION(03-5720-9999) - 2011年6月25日(土)
大阪府 大阪BIG CAT
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット代:3500円(ドリンク代別)
問い合わせ:GREENS CORPORATION 06-6882-1224
「リビングのデカダンス」インストアライブ
- 2011年5月1日(日)
大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 6Fイベントスペース
START 15:00 - 2011年5月14日(土)
北海道 HMV札幌ステラプレイス
START 17:00 - 2011年5月15日(日)
福岡県 福岡キャナルシティ博多 B1Fサンプラザステージ
START 13:00 - 2011年5月22日(日)
大阪府 タワーレコード梅田大阪マルビル店イベントスペース
START 15:00 - 2011年5月22日(日)
大阪府 タワーレコード難波店イベントスペース
START 18:00 - 2011年5月30日(月)
東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
START 19:00
ベベチオ
高校時代の同級生だった早瀬直久(Vo, G)と平良正仁(B)による音楽ユニット。それぞれ別々の道を歩んでいた2人が2000年に再会し、ユニットを結成する。2002年に宅録による自主制作CDを発表。これが話題となり、翌2003年に同作をリミックス&新曲を追加した1stミニアルバム「左右対称のダンス」をリリースする。2008年にはセルフプロデュースによる1stフルアルバム「ちょうちょ」を発表し好評を博す。その後は独自のペースでライブ活動を続け、2011年4月に約3年ぶりとなるアルバム「リビングのデカダンス」をリリース。