BBHF|2作品の同時制作で生まれた推進力

DAIKI(G)インタビュー

悩む前にレスポンス

──「Mirror Mirror」と「Family」はそれぞれ音楽性が大きく違う作品になっていますが、DAIKIさん自身はそれぞれの作品で意識の違いを感じた部分はありましたか?

「Mirror Mirror」は、僕と当時東京にいた仁司くんがSNSなどを使って北海道にいる雄貴くん、和樹くんと遠隔で作業するということをやってみた作品だったんです。自宅でギターを入れたりサンプルを録ったりする作業が大半で、それぞれがいいなと思った音をデータ化して、そこから雄貴くんや和樹くんが使う素材、使わない素材を選別していきました。たぶんそのときに「この素材は誰が出したものだったか?」ということは、2人もあまり意識しなかったと思うんですよ。一方で「Family」は、旭川にみんなで集まったときにできた楽曲も多かったので、誰から出てきたものかを確認しながら、顔を突き合わせて作業をしていきました。その結果、いい意味で緊張感があって、自分の演奏にもけっこう違いが出たような気がします。悩む前にお互いレスポンスを返していくような感覚でした。

DAIKI(G)

──バンドとして音を緻密に構築していくのが「Mirror Mirror」だったとすると、「Family」では全員で集まってバッ!と音を出したときのグルーヴを大切にしたと。

はい。だからこそ、ライブでの演奏にもすんなり移行できそうな曲になったと思います。「Mirror Mirror」はライブをするにも「このパートの担当はどうする?」といろいろ考える必要があったので。

あまりギタリストという自覚はない

──「Family」の制作作業の中で、DAIKIさんが印象的だった曲をいくつか挙げてもらえますか?

「シンプル」は、もともと楽曲の雛形はあり、ライブでもやっていたものをちゃんとレコーディングしていった曲で。この曲は演奏的にもすごくシンプルなので、「Mirror Mirror」での作業と比べると、けっこう新鮮だった気がします。演奏してもストレートに気持ちいい曲ですね。もう1曲は「涙の階段」。レコーディングが佳境に入った頃から別々で作業することが多かったんですけど、そのときに雄貴くんが「曲ができたから聴いてよ」とこの曲を持ってきて、「いいじゃん」という雰囲気になって。そこからブラッシュアップする作業を急いで進めていきました。この曲は衝動でできた楽曲だなと感じます。

──2作品を制作する際に影響を受けた音楽などはありますか?

「Mirror Mirror」のときはサンプルを入れていたので、その面では影響を受けたものがあったと思います。ヒップホップだと、最近はジェイペグマフィアが好きで聴いているんですよ。いわゆる1960~70年代のソウルミュージックをサンプリングするだけではなくて、ミームや面白動画のようなものをサンプリングして作る楽曲の雰囲気が面白くて、そういう要素も入れたいなと思っていましたね。逆に「Family」はみんなで集まって、そのときのパッションで演奏した感じです。音楽的には全然違いますけど、雰囲気という意味では、1stの頃のBrockhamptonがみんなで共同生活をして音楽を作る動画を思い出したりして。ごはんを食べるのも一緒というか、そんな生活の中で音楽をやっていくというのはなかなかできないことなので、すごく面白い体験でした。

DAIKI(G)

──そもそもDAIKIさんは、BBHFではギタリストとしてどんな演奏を意識しているんでしょう?

僕自身は、実はあまりギタリストという自覚はなくて、BBHFに入る前にCURTISSというバンドで曲を書いていた頃も、自分がギタリストだという感覚はありませんでした。じゃあ何に重きを置いてきたかというと、それはやっぱり、歌が好きだということで。だからBBHFでも、歌に寄り添うような、歌がしっかり聞こえてくるようなギターを弾きたいということは考えていますね。

──DAIKIさんが、ほかのメンバーに感じている魅力というと?

和樹くんはすごく器用でいろいろなことができると思うんですけど、最近はマッチョなプレイもできるようになってきたのがすごくいいなと思っていて。最近のライブでは決められた枠の中から飛び出そうとする雰囲気があって、そこにゾクッとしたり、自分も張り合おうと思ったりする瞬間があります。仁司くんはバンドの音を一番客観的に見てくれている感じ。バンド全体を見たうえで「ここはもうちょっとこうしたほうがいいかもね」と的確に指摘してくれます。そして雄貴くんについては、僕個人としても尾崎雄貴の声が好きだし、曲についても歌詞についてもすごく尊敬しています。歌詞を書いて歌を入れるときに、洋楽の影響下にある音楽だと、日本語はメロディに乗せるのが難しい部分もあると思うんですよ。でも特に今回は、メロディに乗せる日本語のキレイさがすごく際立っていると思います。「涙の階段」の歌詞もすごく好きなんですよね。欧米のものに影響を受けながらも、日本語のよさも大切にしている。

2作品が今後のターニングポイントに

──2作品を作ってみて、新たに気付いたことは?

「Mirror Mirror」ではアンダーグランドっぽい要素を取り入れた音楽を緻密に構成できて、「Family」ではメインストリームで鳴っていてもおかしくないような歌や歌詞の曲が制作できて。その2つを作り分けられることって強いなと思いました。2面性があるからこそ、今回のようにコンセプトを意識して作っても、自分たちも楽しめるし、聴いてくれる人たちも楽しめるんじゃないかなと思うんですよ。

──確かに「涙の階段」のような壮大な曲と、複雑に構築された「Mirror Mirror」の楽曲とでは、そもそも聴きたいライブ会場の種類も違うかもしれません。

そうですよね。大きな会場に向けた楽曲もあると思いますし、ミニマムなセットでやるようなこともできると思いますし。そうやって、いろいろな可能性があるのが面白いなと思います。今回2つの作品を出したことで、今後もいろんな顔を見せながらやっていくのは楽しいかもしれないという話にもなっていて。そういう意味では、今回がターニングポイントになったような感覚もあるかもしれません。