BBHF|純粋な気持ちで生み出した純粋な音楽

「マリオカート」の絵が浮かぶ

──4曲目は今作のタイトル曲になります。

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「Mirror Mirror」は、制作中にたまたまTalking Headsを聴いていたんですよ。それもあって、MVでデヴィッド・バーンが踊っているような映像を思い浮かべながら音を連想していきました。そのうえで、楽曲でも歌詞でも同じフレーズのループを使っていて、その絵を思い浮かべてほしいな、と思って作った曲です。今回、サビで同じ言葉を繰り返している曲が多いんですけど、これってGalileo Galileiとしてメジャー感のある曲を作っていく際に、テクニックとして言葉を意図的に変えていたこととは真逆なんですよ。その癖をやめてまで、「繰り返していこう」というのは、今回の作品に限らず、ここ最近の自分のテーマの1つのような気がします。

──Talking Headsのような雰囲気は、特に後半のアフロビートに表れているように感じました。

そうですね。でも実はその後半のギターのイメージって、僕の中では「マリオカート」のサーキットっぽいイメージだったんです。もし、思いきりふざけてMVを作ってもいいのなら、「マリオカート」の映像をそのまま使いたいくらいなので。

──まさかの「マリオカート」だったんですか(笑)。

もちろんふざけていたわけではなくて、「だいすき」でも話したような、「世界から見た日本のイメージ」にしっくり来たから入れた要素だったと思います。今作の曲は言葉で説明すると支離滅裂になりがちなものばかりなんですけど(笑)。

──「Moon Boots」は「曲ごとに別々のことをやろう」という雰囲気の作品だったと思うのですが、今回はいろんな要素が混ざり合ってできている曲ばかりのような気がします。

僕らの場合、いろんな要素が詰まったデモをバンドの作品として落とし込んでいくときに、方向性を絞って完成させることが多いんです。そういうこともあって、「Moon Boots」は曲ごとに違うサウンドが詰まったアルバムになったんだと思います。でも、今回は僕がこれまで以上に舵を取る役割をしたことで、最初に思い描いたイメージをどれだけ忠実に人に伝えられるか、ということを大切にしていました。だからなのか、いろいろな要素が詰まっていますし、自分で聴き返していても、聴いたタイミングによって違う曲に聞こえることがあるような気がします。

尾崎雄貴の考える「血が通っている音楽」

──最終曲の「リビドー」はエレクトロニックな音楽性でありながら、同時にフォークやカントリー、ブルースを感じる瞬間がありました。聴くときによって、どちらの要素を強く感じるかというのは、聴くシチュエーション、タイミングによって変化しているように感じました。

僕はブルースが血として流れている人種でもなければ、そういう育ち方もしていない人間ですけど、同時に自分が感銘を受けたブルースやカントリーの節回しをどうにか歌として表現したい、ということをずっと考えていて。「リビドー」にフォークやブルースを感じるというのは、曲にただギターが入っているということではなくて、メロディや歌い方も含めていろんなことが影響した結果だと思います。それってまさに、僕が考える「血が通っている音楽」なんです。「リビドー」でそう言ってもらえるのは、すごくうれしいです。この曲は、「ゆるっと踊れる曲」をイメージして作っていきました。今話しながら思い出したんですけど、今回はタイトルが「Mirror Mirror」ということもあって、いろんな要素が反射しながら、ぶつかり合いながら曲になるようにしていて、「何かの問いかけに対する答え」という形で、それぞれの要素が反応しあっている雰囲気があって……それってすごくブルースっぽいですよね。その感じは、僕がそもそも音楽をやっている意味ともつながっているものだと思います。僕はこっちが問いかけたことに対して、メンバーやお客さんが返してくれることが楽しいからこそ音楽をやっているし、自分に問いかけて、それに自分で返すという作業も、曲作りの面白いところだと感じているので。

──ああ、なるほど。

音楽を作ることって、僕にとっては、自分が経験してきたいろいろな感情や経験をもう一度振り返ってみて「あれってどうだったんだろう?」と思い返していく作業なんです。それが大変だと思う時期もありましたけど、今はそれが心の安定にもつながっているし、自分から何かを問いかけて、いろいろな人が言葉を返してくれたり、何かを見出そうとしてくれたりすることがすごく楽しいと感じていて。「それってすごく恵まれた状況だよな」という実感を、ミュージシャンをやっていてすごく感じるようになりました。ライブを通じて自分の力を試せていて、なおかつ「自分はこう思うんだけど、どう?」という問いかけが曲を通じてできている。その実感がこれまで以上に湧いてきているからこそ、制作もライブも含めて、音楽活動がますます楽しくなってきていますね。ただ、これはもしかしたら俺だけかもしれないし……メンバーもそうであってくれたらいいなと思います(笑)。

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BBHFのアイデンティティ

──今回の作品を経て、BBHFはどんなバンドになっていきそうだと感じていますか?

今回のように2つのコンセプトで作品を作ることって、すごく難しいことだと思うんです。メンバーそれぞれの音楽性が違っていた場合には、「こっちはやりたくない」という気持ちが出てくるかもしれないですし、それぞれのアクが強すぎると形にならない。そういう意味では、BBHFはそのバランスがすごくいいバンドなのかな、と思います。付き合いが長くなると、どうしてもお互いのプレイに飽きてしまうこともありますよね。でも、今の僕らはそうなりかけた時期を乗り越えたからこそ、すごく特別なつながりを感じられている気がしていて。その中から生まれる音楽が、BBHFのアイデンティティなのかな……今はそうとしか思っていないです。

──それはどうしてですか?

これまではいろんな音楽を聴いて、「こういうことがやりたい」と思うことが多かったのに対して、今は自分たちの生活が音楽に影響を与えていて、音楽が僕らの生活の中から生まれてきている感覚があるからです。今はあえて意識しなくても、自分たちがかつて憧れていた音が出せるようになっているのかな、と。その「自分たちの生活から音楽が生まれていく」という感覚は、メンバー全員に共通しているように思います。今、すごく純粋な気持ちで音楽活動ができているので、だからこそこの音を多くの人に広めたいし、同時に自分たちがいる居場所をきちんと見て活動をしようと思っていて。例えるならそれはアメリカのインディーバンドの感覚に近いのかな。彼らのようにBBHFはこれから、自分たちの生活や在り方と表裏一体な活動を続けるバンドになっていくのかな、と思っています。

ライブ情報

BBHF「1stEP"Mirror Mirror"完全再現公演」
「LIQUIDROOM 15th ANNIVERSARY」
  • 2019年7月30日(火)東京都 LIQUIDROOM
    OPEN 18:00 / START 19:00<出演者> BBHF / mol-74

ツアー情報

BBHF「ONE MAN TOUR"Mirror Mirror"」
  • 2019年9月14日(土)北海道 cube garden
  • 2019年9月21日(土)大阪府 umeda TRAD
  • 2019年9月27日(金)東京都 マイナビBLITZ赤坂
  • オフィシャルHP先行:7月1日(月)12:00~7月10日(水)23:59