ナタリー PowerPush - Base Ball Bear
ブレない僕らの初ベスト
「PERFECT BLUE」の詞はダブルミーニング
──「新呼吸」のときのインタビューでも話していたけど、「yoakemae」のリリース日(2011年6月29日)におじいさんが亡くなったんだよね。
小出 そう。おじいちゃんが亡くなって初めてわかったんだよね。確実にある死を。かといって、それがわかったことで自分の日常が大きく揺らいだわけでもなかった。それも事実で。それはおじいちゃんが、生きているうちにやりたいことを全部やって幸せに亡くなったという部分も大きいんだけど。でも、確実に自分の中で生と死のコントラストは強くなったんです。それでこういう歌詞を書いたというのはありますね。初めて煙が昇っていくのを悲しいと思ったし。
──うん。この曲の歌詞にもそれを思わせる描写がありますね。
小出 うん。僕は仕事があっておじいちゃんの葬式には出れなかったんですよ。だからそのときの火葬場の煙も見ていないんだけど、別の日に工場から煙が昇っているのを見たときに悲しいと思ったんですよね。そこで自分の中でバチンッとハマった瞬間があって。
──そういうこともひっくるめて、「もうすぐ夏がくる」というフレーズで終わるのも重要だよね。
小出 すごく重要ですね。でも、この曲ってさわやかさが片面にもあるから、インタビューでもそっちだけで話を成立させることも可能なんですよ。で、さわやかな面だけでこの曲を捉えたときに最後の「もうすぐ夏がくる」っていうのはすごくさわやかな終わり方じゃないですか。でも、もうひとつの面から捉えると、また別の含みが浮き上がってくる。
──つまり最初から最後まで……。
小出 ダブルミーニングになっているんです。サビの「君は翔んだ」からのフレーズもそうだし。
──3人はプレイヤーとしてどんなところにポイントを置きましたか?
堀之内 僕としても、とにかく歌を聴かせたかったから、ストレートなドラムにしようと。そこを意識しながら気持ちよく叩きました。
湯浅 ギターもひさしぶりにシンプルなアプローチをしていますね。ギターロック的なギターというか。
関根 ベースはさっき言っていた新しいコード感を意識しました。聴いてる人はなかなか気付かないと思うんですけど、プリプロの時点で「あ、新しいところにきた」ってすごくワクワクしたんですよね。
小出 サビのコード感とかもね、我ながら絶妙だなと。最後の最後まで細かいところで悩んだんですけど、悩んだ甲斐がありましたね。
言葉から転がした「アイノシタイ」
──この曲のカップリングに何を当てるかというのもすごく考えたと思うんですけど。
小出 そうですね。僕らってシングルの特典ってあまり付けないから、書き下ろしの3曲をパッケージしましょうということになって。で、三宅さんからタイトルをもらった「アイノシタイ」の話になるんですけど。
──そう、この曲に関してはどう聞こうか迷っていたんだけど(笑)、「アイノシタイ」というタイトルは俺が考えたもので。
小出 便宜的に説明すると、そもそもスガシカオさんの新曲タイトル公募というのがあって。
──去年の6月ですね。
小出 そこに三宅さんがTwitterから「アイノシタイ」というタイトルを応募して。僕は三宅さんが「アイノシタイ」というタイトルをツイートした瞬間、「あ、これ獲っちゃうだろうな」と思ったんですね。
──正直、俺も獲れるなと思ってました(笑)。
小出 そうでしょ? 「アイノシタイ」は最終候補まで残ったんだけど、結果的には「Re:you」というタイトルになったんですよね。
──スガさんに取材でお会いしたときに選考理由を直接お聞きしたんですけど、「アイノシタイ」は言葉が強すぎて、歌詞がタイトルに飲み込まれちゃうと。
小出 わかる、わかる。スガさんのバランス感覚が選ばなかったんだろうなって思った。で、僕がTwitterを通して「そのタイトルください」ってお願いして。
──俺も「どうぞ、どうぞ」って。
小出 まず、「アイノシタイ」というタイトルで曲を転がしたいと思ったんです。確かに言葉が強すぎるし、この曲はあえてブックレットに歌詞を掲載しないんですけど。
──そうなんだよね。
小出 それくらい「アイノシタイ」というカタカナ表記の言葉のリズム自体が重要で。それが楽器にも伝播してるタイプの曲になっているから。
──それでトリッキーでダイナミックなグルーヴが転がっていくサンバになったし。今までにないタイプの曲になったよね。
小出 そう、暗いサンバね(笑)。最初はスガさんっぽいファンク感のあるサウンドだったんですよ。でも、それを僕らがやるのはやっぱり違うなと思ってから試行錯誤して。「アイノシタイ」っていう言葉から転がしていくこと、どうしてもエロティックな方向に引っ張られるんですよね。
──ちょっと粘着質なね。
小出 そう。その粘着質な感じに引っ張られすぎると、たぶん僕の好きな仕上がりにはならないと思ったんですね。それで、軽やかな部分を出すためにリズムで引っ張っていくことにしたんです。意味を限定しないまま言葉をどんどん転がしたかった。
- ベストアルバム「バンドBのベスト」/ 2013年2月13日発売 / 2980円 / EMI Music Japan / TOCT-29119~20
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DISC 1収録曲
- CRAZY FOR YOU の季節
- GIRL FRIEND
- ELECTRIC SUMMER
- STAND BY ME
- 祭りのあと
- 抱きしめたい
- ドラマチック
- 真夏の条件
- 愛してる
- 17才
- changes
DISC 2収録曲
- LOVE MATHEMATICS
- 神々LOOKS YOU
- BREEEEZE GIRL
- Stairway Generation
- kimino-me
- クチビル・ディテクティヴ
- yoakemae (hontou_no_yoakemae ver.)
- short hair
- Tabibito In The Dark
- 初恋
- 若者のゆくえ(Original Version)※ボーナストラック
- ニューシングル「PERFECT BLUE」/ 2013年2月13日 / 1000円 / EMI Music Japan / TOCT-45063
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CD収録曲
- PERFECT BLUE
- アイノシタイ
- Typical Girl
Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)
小出祐介(Vo, G)、関根史織(B, Cho)、湯浅将平(G)、堀之内大介(Dr, Cho)からなるロックバンド。2001年、同じ高校に通っていたメンバーによって、学園祭に出演するために結成された。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」をリリース。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビューする。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催した。バンド結成10周年を迎えた2011年には、シングル3枚とアルバム「新呼吸」を発表。2012年は2度目の日本武道館公演を皮切りに活発なライブ活動を展開。2013年2月に初のベストアルバム「バンドBのベスト」とシングル「PERFECT BLUE」を発表した。