ナタリー PowerPush - Base Ball Bear

ブレない僕らの初ベスト

武道館が終わってから伝えることを意識した

──メンバーから見ても当時の小出くんの変化は顕著に感じていましたか?

堀之内大介(Dr, Cho)

堀之内 めちゃくちゃ感じていましたね。こいちゃんにセルフプロデュース力がついたことが一番デカいと思う。3.5枚目の制作があったときにそれを目の当たりしたんですよね。

──3.5枚目からセルフプロデュースになったんだよね。

堀之内 そう。だからこそこいちゃんの成長をすごく実感して。そこで俺ら3人ももっと自我を出して、プライドを持ってやらなきゃいけないと思ったし。でもね、今こいちゃんの話を聞きながら改めて思ったんですけど、俺たちはすごく人との出会いに恵まれてますね。それは個人的に感じることもあるし、バンドとして感じることもある。スタッフもプロデューサーもみんな常に愛をもって俺たちと接してくれた。バンドがブレないでやってこれたのは、周りの人の協力や理解も大きいと思います。

──3.5枚目からセルフプロデュースになったのは、自分たちで望んだことなんだよね?

小出 そうですね。要はインディーズ時代に戻った感じなんですけど。インディーズ時代は僕がいろんなことをジャッジしていて。そこからメジャーに行って1st、2nd、3rdと僕が制作で悩んだときのジャッジをプロデューサーにしてもらっていたんですよね。そこに甘えていた部分もあったし、身体を預けっぱなしにしていたなって。このままじゃダメだって思った。単純に誰にも頼らずゼロから音楽を作るときに、自分はどういう曲を作るのかという興味もあったし。それで3.5枚目からセルフプロデュースにしたんです。

──ちょうど結成10周年に向かって、自立の時期でもあったんだね。

小出 うん。道場を飛び出した感じですよね(笑)。

──前のインタビューでも話してくれた、最初の武道館で覚えた「これでいいのか?」という違和感も大きかっただろうし。

小出 そうそう。最初の武道館以降、伝えるということをすごく意識し始めたから。ただ曲を作って、ただステージでライブをするのではなくて、何を伝えたくて曲を作り、どういうふうに伝わってほしいと思うのか。それが表現だと気付いたんです。

──その思いが「新呼吸」のコンセプトにもなっていった。

小出 まさにそうです。

身体はそのままに流れる血を入れ替える

──ここからはシングル「PERFECT BLUE」の話にいかせてください。まずね、表題曲の「PERFECT BLUE」なんですけど。これ、ベボベにとって究極の1曲だと思った。

小出 ありがとうございます。

──ある夏に自ら死を選ぶことで完璧に青春を閉じ込めようとした女の子と、残された男の子がいて。そして、その男の子が数年後に次の夏へ向かうという物語で。

小出 うん。

──俺はこの1曲でベボベは青春を歌うことを卒業するんじゃないかとも思ったんですけど。

小出 あはははは(笑)。

──この曲はどういう流れで生まれたんですか?

小出 まず、「初恋」のリリース後に新曲の制作をまとめてやっていた時期があって。この曲もその中で生まれた曲なんです。これは今のモードにもつながってくる話なんですけど、これまでやってきた自分の曲の作り方に完全に飽きてしまって(笑)。

──うん(笑)。

小出 こういうコードの動きが好き、とかね。

──手癖とかも含めて。

小出 そうそう。そこに飽きたというのがひとつデカくて。で、今までの曲の作り方をあえて裏切っていこうと思ったんです。その流れでいろんな曲を作ったうちのひとつがこの「PERFECT BLUE」で。

──でも、ベボベの王道も感じさせるっていう。

小出 そう。今までの僕らの王道パターンを踏襲しつつ、ぜんぜん違う曲の作り方をした。だから今までにないコード進行の曲になった。でも、重要なのは王道を踏襲しているというところなんです。今までの僕らのスタイルを感じさせつつ、いかに別のモノにすり替えるか。それが大きなテーマだった。

──これまた高度な試みだよね。

小出 難しいですね。発想としては、身体はそのままに流れる血を入れ替えるということだから。でも、この曲ができてそのやり方をつかめたんです。じゃあ歌詞はどうするか。これもサウンドと同じく、王道を踏襲しつつ、これまで手を付けてない表現に踏み込もうと思った。それで、僕らの曲のテーマを振り返ったときに、インディーズ時代から今に至るまでずっと対極にあること──表と裏であり、光と影であり、白と黒が同居したものを描いてきたなって。それは歌詞だけじゃなくて、サウンド面でもそうで。さっき言ったみたいに王道と新しいアプローチの同居だったり。それで「PERFECT BLUE」はその対極の同居を、もっと踏み込んで表現しようと思ったんです。「PERFECT BLUE」というタイトルは僕の好きなアニメ映画「パーフェクトブルー」から取っているんですけど、これしかないと思って。僕らの曲って青がモチーフになっているものが多いんですね。で、ほら、青って悲しい面もさわやかな面も内包してるでしょ。どっちだよって思うけど、どっちでもある感覚。

──そうですね。この曲の空に抱くイメージもそうですよね。

小出 そう。さわやかな象徴である空と、悲しいときに見上げる空だったり。

──死に向かって飛ぶ空でありね。つまり、この歌詞は死の重みとさわやかさが同居した青春を描いていて。この物語性は、小出くんがいつか映画を撮るべきものだと思うんですけど。

小出 ありがとうございます(笑)。この物語が実話かどうかという部分は置いておいて、歌としてちゃんとリアリティがなきゃいけないと思って。それが僕の思う歌詞だなって。なんかね……当たり前の感覚として、生きていることの裏側に死があることはわかっていたつもりだったんだけど、ずっと実感できていなかったんですよね。身近に亡くなった人がいなかったから。

ベストアルバム「バンドBのベスト」/ 2013年2月13日発売 / 2980円 / EMI Music Japan / TOCT-29119~20
DISC 1収録曲
  1. CRAZY FOR YOU の季節
  2. GIRL FRIEND
  3. ELECTRIC SUMMER
  4. STAND BY ME
  5. 祭りのあと
  6. 抱きしめたい
  7. ドラマチック
  8. 真夏の条件
  9. 愛してる
  10. 17才
  11. changes
DISC 2収録曲
  1. LOVE MATHEMATICS
  2. 神々LOOKS YOU
  3. BREEEEZE GIRL
  4. Stairway Generation
  5. kimino-me
  6. クチビル・ディテクティヴ
  7. yoakemae (hontou_no_yoakemae ver.)
  8. short hair
  9. Tabibito In The Dark
  10. 初恋
  11. 若者のゆくえ(Original Version)※ボーナストラック
Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)

小出祐介(Vo, G)、関根史織(B, Cho)、湯浅将平(G)、堀之内大介(Dr, Cho)からなるロックバンド。2001年、同じ高校に通っていたメンバーによって、学園祭に出演するために結成された。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」をリリース。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビューする。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催した。バンド結成10周年を迎えた2011年には、シングル3枚とアルバム「新呼吸」を発表。2012年は2度目の日本武道館公演を皮切りに活発なライブ活動を展開。2013年2月に初のベストアルバム「バンドBのベスト」とシングル「PERFECT BLUE」を発表した。