ナタリー PowerPush - Base Ball Bear

王道ギターロックに挑んだ2011年第2弾シングル「short hair」

Base Ball Bearは形があってないバンド

──それは今回のカップリング「ido feat. 呂布」にもよく表れてる(笑)。

そうです、そうです(笑)。だから「short hair」もBase Ball Bearだし、「yoakemae」や「ido」もBase Ball Bearであると。逆に言えばそのすべてがBase Ball Bearではないとも言えるわけです。

──4thアルバムへ向かう前に、それを振り切った形で提示したのが3.5thアルバムだった?

インタビュー風景

そうそう。だから僕らの有利であるとともに不利な部分は、形があってない部分で。常に面白いものを求められているバンドだと思うので、「short hair」のようにストレートな曲ってなかなか出しにくいんですよ。

──小出君の中からシンプルに生まれるものではあるんだけど、バンドの方向性を考えると出し方が難しいっていう。

そう、そういうジレンマがあって。バンドでやりたいと思ってること、やるべきだと思っていることと、僕個人のソングライターとしてのモードが正反対なところがあって。そこをちゃんと折衷させるのが難しい。ホントはややここしいメロなんか全然出てきてないのに、それをバンド用にややこしくする作業があったりとか。しっかりメロと歌詞があるものを、そっくりそのまま変化球にする作業とか。そういうことに時間がかかるんですよね。

──でも、「short hair」は小出君のソングライターとしての素顔がクリアに見える。

うん、素材そのままって感じですよね。

新たな手法にチャレンジしたレコーディング

──前回のインタビューで「yoakemae」は音像処理も大きなテーマだったと語ってくれましたよね。で、次に出すシングルはその面でもさらに発展したものになると言っていて。

「short hair」って曲こそストレートだけど、録り方は全くそうじゃなくて。「yoakemae」の発展形として録っているんです。曲の性質上、膨らんでいる感じの音像になっていて、要はバキッとさせてないんですけど。

──シューゲイザー的ともいえる浮遊感が全体を覆ってますよね。

うん。ただ、低音感は、完全に「yoakemae」の発展形になっていて。何よりギターがすごくシンプルに聴こえると思うんですけど、これ30本くらい入ってるんですよ。

──えっ!?

メインで聴こえているのは、僕のギターと湯浅のギターと、あとサビでもう1本出てくるくらいなんですけど。僕の1本に聴こえているギターは実は30本音を重ねているんです。

──なんでそういう手法に至ったんですか?

またフォーマットの話になるんですけど、曲の構造的にギターに厚みを出さざるを得なくて。でも、厚みのあるギターって基本的にうるさいし、ギターがいっぱい鳴っているという体感で曲が埋まるのはイヤで。メインで聴こえるギターはシンプルなんだけど、そこに重層的な音が埋まっているという音像にしようと思って。それで、同じフレーズを弾いているギターを30本重ねて、ちょっとずつ音色を変えるということをして。厚みはあるんだけど、実音としてはそんなに聴こえてないっていう。

──フェティシズムを注ぎ込みながら、シンプルに着地させたと。

フェチですよね(笑)。レベルの調整とかシンプルに聴こえるようにするためにすごく時間がかかったけど、それをやったら絶対うまくいくと思ったから。

同期や打ち込みは面倒くさいからイヤ!

──またそもそもの話になるけど、小出君が打ち込みや同期モノに頼らず、4人のメンバーだけで完結したいと思うのはなぜなんですか?

なんだろうな? めんどくさいんじゃないですか?(笑)

──あはははは! 最高の答えだな。

インタビュー風景

バンドで制作していて、ときどき行き詰まるとよく言うんですよ。「もう、キックとか打ち込みにしちゃおうか?」とか「こっそりシンセ入れちゃおうか?」って。でも、自分で言ったあとにそれを作るのがめんどくせえなみたいな。

──でも、それよりも面倒くさいことをこの曲でもやってるわけでしょ?

そうなんだけど(笑)、そっちのめんどくさいことには俺もメンバーもスタッフも慣れてるから。また新しいめんどくせえ作業を覚えるのがめんどくせえっていう(笑)。

──(笑)。

だって、ここまでこういうやり方でやってきて、今さらシンセや打ち込みを導入するのも野暮な感じがするし。どうせ打ち込みとかやるなら、バンドではない別の形でやります。うちのバンドは4人の音だけで積み重ねてきましたからね。行き詰まったからといって、違うことをやるのは考えられないなっていう。

ニューシングル「short hair」 / 2011年8月31日発売 / 1000円(税込) / TOCT-40355 / EMI Music Japan

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CD収録曲
  1. short hair PVを観る
  2. ido feat. 呂布
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Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)

2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するために結成。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」を発表。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビュー。「GIRL FRIEND」「ELECTRIC SUMMER」「STAND BY ME」などミニアルバム、シングルを連発し、同年11月にアルバム「C」をリリースした。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。その後も順調にリリースを重ね、2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催する。2010年9月、3.5thアルバムと位置付けたコンセプトアルバム「CYPRESS GIRLS」「DETECTIVE BOYS」を発表。2011年6月にバンド結成10周年のアニバーサリーイヤーの幕開けを飾るシングル「yoakemae」をリリースした。