ナタリー PowerPush - Base Ball Bear

結成10周年を経て辿り着いた新境地 ニューシングル「yoakemae」制作秘話

Base Ball Bearが結成10周年を迎えた。メモリアルイヤーを記念してリリースされる第1弾シングル「yoakemae」は、彼らが新たなステージに足を踏み入れたことを告げる決定的な楽曲だ。

ここに至るまで、彼らはさまざまな壁や葛藤と直面し、それらをひとつずつ乗り越えてきた。バンドが着手した改変の途中経過を示したのが、昨年9月リリースの“3.5thアルバム”と位置付けられた2枚のミニアルバム「CYPRESS GIRLS」と「DETECTIVE BOYS」である。ナタリー初登場となる今回のインタビューは、メンバー全員に3.5thアルバムを振り返ってもらうことから始まった。

取材・文/三宅正一 インタビュー撮影/中西求

去年の初武道館は満足度20%くらい

──バンドとして、新たなのろしをあげるようなシングルですね。

インタビュー風景

小出祐介(Vo, G) ありがとうございます。

──このシングルに至るまで、昨年9月にリリースした2枚の3.5thアルバムの存在がかなり効いているなと思っていて。今振り返ってみて、3.5thは自分たちに何をもたらしたと思いますか?

小出 そもそも3.5thを作るモチベーションになったのが、去年の1月3日にやった初めての武道館ライブで。それまで自分たちは(メジャーデビューから)3年で3枚のアルバムを出していて、それがずっと同じテンポ感だったんですよね。アルバム作ります、それに向けたシングルを何枚かリリースします、アルバムが出ました、ツアーで年が明けました。じゃあ、また春先にシングルを出しましょう──って、そういう感じで3年間やってきた先に武道館がありまして。で、武道館をやってみて、納得のいくものではなかった。個人的な満足度は20%くらいで。

──どういうところが納得いかなかったんですか?

小出 いちバンドマンとして、武道館というスペースでしっかり自分たちの音を鳴らせたかというと、うーんっていうのもあって。

──会場を掌握できなかったとか、そういうことですか?

小出 個人的な感想としては「武道館でやらせてもらった」という感じだったんです。メンバー4人全員が未熟だったなって。ホントはもっとやれると思ってるんだけど……じゃあ何がいけないのかもよくわからない。それに武道館をやって気付いたんですよね。

──もっとやれるはずなのに、何がいけないのかもよくわからないという現状に気付いた。

小出 そうそう。何を今までやれていなかったのか、何が足りないのか、そういうことを武道館が終わってからすごく考えた。ほかのメンバーもそうだったと思うんですけど、特に僕はすぐに武道館のDVDを出すことになって、ミックスとかいろんなチェックをするために何回もライブ映像を観なきゃいけなくて。あまり観たくなかったんですけど……。

伝えたいことが全然伝わってなかった

──そこからバンドをどう動かしていきたいと思ったんですか?

インタビュー風景

小出 DVDのチェックをしながら今村さん(ディレクター)やスタッフと話していて、「コイちゃん次は何がやりたいの?」って言われて。スタッフサイドから初めて「今後の動きは任せるから」って言われたんですよ。僕は武道館を終えて、さっき言ったことを踏まえてずっと考えていたのは、もっと人に伝えるということ。自分たちの気持ちを伝える、意志を伝える。その「伝える」ことをすごく考えるようになった。で、武道館以降の満たされない思いの原因を探っていく中で曲を作っていて、これまでも100%自分の入れたいことを詰め込むことができているとは思ってたんですけど……。でも文章もそうだけど、「実際には書いてないけどね」っていうのがあるじゃないですか。

──受け手に行間を汲み取ってもらうということですよね?

小出 そうそう。ミュージシャンのほとんどがそうだと思うんです。言ってないけど、歌ってないけど、音としては入れてないけど、ここはこういうことが隠されている、というものがあるんですよ。僕は元々そういうものを曲にいっぱい込めて書いているつもりだし、そういうものを読み取ってもらいたいとすごく思っていて。でも3rdアルバムの頃から、自分がこういうふうに読み取ってもらいたい、伝わってほしいということが、あんまりうまく伝わってないなって。3rdのときはそれですごくイライラして。それから武道館があって「これは誰のせいだ?」「俺が悪いのか?」みたいになって、それをハッキリさせようって思うようになったんです(笑)。

ニューシングル「yoakemae」 / 2011年6月29日発売 / 1000円(税込) / EMI Music Japan / TOCT-40335

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CD収録曲
  1. yoakemae PV視聴
  2. Fragile Baby

CD-EXTRA ドキュメント2011「僕の目(仮)」 Directed by 小出祐介

Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)

2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するために結成。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」を発表。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビュー。「GIRL FRIEND」「ELECTRIC SUMMER」「STAND BY ME」などシングルを連発し、同年11月にアルバム「C」をリリースした。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。その後も順調にリリースを重ね、2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催する。2010年9月、3.5thアルバムと位置付けたコンセプトアルバム「CYPRESS GIRLS」「DETECTIVE BOYS」を発表。