音楽を通じてつながれた人たちと集まれる場所

──7月に地元名古屋で開催された初の主催フェス「PAPA FES」についても聞かせてください。今振り返ってどんなことを思いますか？

はっこー　ずっと主催フェスをやってみたかったので、まずはやっと実現できた喜びがありました。野外ライブが大好きなので、これは毎年やりたいなって。当たり前ですけど、ライブハウスでイベントを企画するのとは準備の大変さがケタ違いなんですよね。だからこそフェスに対する思いも増したし、達成感も大きかったです。

井深　遠くから僕らの思いに賛同して集まってくれたバンド仲間の姿を見て、改めてバンドっていいものだなと感じました。刺激も受けたし、僕らの世代でシーンを盛り上げていける可能性とか、新たな希望が見えた場所だと思います。

ワタさん　当日は僕らも機材搬入を手伝ったりして。改めてスタッフさんや裏方としてサポートしてくれる方のありがたさを感じたし、「みんなで一緒に作ってるんだな」と実感しましたね。

斉本　僕らってそんなに積極的じゃないし、バンド同士の交流が少ないほうなんです。それでも毎年このフェスを続けることで、音楽を通じてつながれた人たちと集まれる場所を自分たちで守っていきたいなと思っています。

正直言って余裕がない

──今回のシングルをきっかけにバンドハラスメントのことを知った人たちって、よくも悪くもとても多いと思うんです。今後はそういった不特定多数の人たちも相手に活動していくことになると思うのですが、今のバンドの姿を自分たちではどう捉えていますか？

斉本　そうだなあ……今は正直言って、自分たちを第三者目線で見る余裕がなくて。さっきも話した通りほかのバンドと飲みに行ったりもしないから、周りがどんなことをやっているのかもよく知らなくて。僕たちって、決して新しいジャンルの音楽をやってるわけではないと思うんです。だけど同じような立ち位置にいるバンドとか、比べる対象になる人ってあまり見つからなくて。今の僕たちが世間にどんな姿に映っているのか、どの程度がんばれているのかは……全然見えてこないですね。

はっこー　言ってしまえば僕らって、純粋な音楽好き以外の人の目に留まる機会がなぜか昔から多いんです。もちろんそれもありがたい話なんですけど、どうしてもそれがマイナスの方向に作用しがちで。

斉本　うん。その機会をしっかりプラスに変えなくちゃいけないんですよね。

ワタさん　ただ、比べる対象がいないってことは、僕ら自身もどんどん変わっていけると言うことだと考えていて。今回の「解剖傑作」のMVにしても、公開する前は「今までのバンハラと違う」みたいな意見が出るかなと想像していたんです。でも実際には、こちらの想定以上に好感触な感想が多くて。いろいろな表現に臆することなく挑戦できるのは、僕らの強みなのかなと思いますね。

知らない人たちに思いを伝えていきたい

──10月には全国ツアーも始まります。ツアーでファンと直接交流することで、バンドの今の姿が浮かび上がってくるのかもしれないですね。

斉本　そうですね。バンドによってはファンが減ろうと増えようと関係なく、自分たちのやりたいことを貫く人たちもいると思うんです。でも僕らはそうではなくて。より多くの人に伝えるってことを大切にしているし、お客さんがいなければ自分たちにはなんの意味もなくなるので。今回のツアーで、もっともっと僕らのことを知らない人たちに思いを伝えていきたいですね。

井深　「解剖傑作」は自分たちの新しい一面が詰まった、攻めの1枚になったと思っていて。なので初見の人はもちろん、いつもライブに来てくれている人にも新たな発見をしてもらえるツアーにしたいです。どうやってお客さんを楽しませるか、いかに自分たちのメッセージを届けるか、全員で試行錯誤している最中なので、ぜひライブに足を運んでほしいなと思います。