いちリスナーとしてワクワクした（井深）

──「解剖傑作」を初めて聴いたとき、メンバーの皆さんはどう思われましたか？

はっこー（B）　制作に入るけっこう前の段階で斉本から「次はダークな曲になる」と言われてたので、ある程度は覚悟してたんです。それでも想像以上にダークはダークでしたけど（笑）、当時から彼女との関係についてはよく聞いていたから、特に違和感はなく。

ワタさん（G）　僕も同じで、そんなに驚きはしなかったです。斉本って日頃から自分の身の回りで起こったことをいろいろ話してくれる人だから。

──井深さんはこの曲を歌うにあたって、レコーディングはどんな思いで臨まれたんですか？

井深（Vo）　僕はこの曲を初めて聴いたとき、単純にいちリスナーとして「ああ、いい曲になるんだろうな」とワクワクしたんです。斉本と僕は性格も全然違うけど、彼の書く詞には必ず共感できる部分があって。だからこの曲の主人公を全力で演じられたと言うか、「自分の感情を全部投じてみよう」と思ってレコーディングしました。同じサビでも1番と大サビでは歌い回しを全く変えてみたりして、感情の揺らぎや高ぶりを表現できたんじゃないかなと思います。

これ以上過去の恋愛を曲にしたところで、正直どうなんだろうな

──井深さんのボーカルだけではなく、皆さんの演奏もリミッターを外したかのような鬼気迫るものがあって。

斉本　今まであえて出してこなかった部分を思いっきり出した感じです。ここまで凝ったアレンジもバンハラではやってこなかったので。過去の制作を振り返っても、今回が一番アレンジに時間がかかりました。

はっこー　2番終わりの間奏に入るタイミングとか、決めるまでに30パターンくらい作ったよね。

斉本　うん。あとはAメロですかね。ドラムのリズムが一小節ごとにどんどん変わっていくので、どこでどの楽器を出して引っ込めるかはかなり悩んで。

ワタさん　アレンジには時間がかかったけど、しっかり固めて何回もプリプロを重ねていたのでレコーディング自体はスムーズでした。今回ボーカル以外の録音は、すべて宅録なんです。まだまだ技術的には適わないんですけど、ゆくゆくは自分たちでトラックダウンまで手がけたいなと思っていて。

──なるほど。ところで斉本さんは先日Twitterで「これ以上この物語を続けようとも書こうとも思わない」という投稿をされていましたよね（参照：斉本 佳朗 (@KARAN_CHE) | Twitter）。つまり今回のシングルで、過去の恋愛にはようやくひと区切りが付いた？

斉本　まあこれ以上僕の情念だったり過去の恋愛を曲にしたところで、お客さんとかメンバーは正直どうなんだろうなって（笑）。自分でもちょっと飽きたところもあります。もっともっと違うことも書いてみたいですし、僕自身も変わっていかないといけないのかなと……でもたぶん書くんですけどね、引きずるものを。しばらくしたらですけど（笑）。

カップリングはミスりました

──カップリングの「一人かくれんぼ」は「解剖傑作」に比べるとキャッチーな雰囲気で、ライブ映えしそうな楽曲ですよね。ただ、歌詞にはやはり不穏な言葉が並んでいて。

斉本　ネットで有名な怪談話から発展させていった言葉遊び系ですね（笑）。楽しんでもらえたらいいんですけど。

はっこー　ただ「解剖傑作」のアレンジに時間をかけ過ぎたせいで、この曲のレコーディング時間がめちゃくちゃ少なかったんですよ。各々がやりたいことをぶつけてみた感じなので、肩の力の抜けた楽しい雰囲気は出てると思うんですけど。

斉本　今聴き直すと、リズムがぶつかってる所とかあるもんね。「どっちも出てるやん！」みたいな。まあ、ぶっちゃけミスりましたね。

全員　あはは！（笑）

斉本　ただ言い訳になっちゃいますけど、ライブ感は出たかなって（笑）。荒々しさとかバンドっぽさと言う意味ではこれでよかったかなと思います。