バンドハラスメントが10月4日にニューシングル「解剖傑作」をリリースした。
彼らにとって通算2枚目となるシングルの表題曲は、“歪んだ愛情”を描いたヘヴィなロックナンバー。作詞作曲を手がける斉本佳朗(Dr)が書いたある手紙が、今作の制作のきっかけになったという。音楽ナタリーでは今回、メンバー全員にインタビューを実施。楽曲に込めた思いやバンドの現状について話を聞いた。
取材・文 / 大橋千夏 撮影 / moco.(kilioffice)
アートかアートじゃないかは受け手が決める
──楽曲について伺う前に、まずは今作のジャケットについて話を聞かせてください。9月にフォトグラファーハルさんが手がけたジャケットが公開されてからさまざまな反響があったと思いますが、最終的にはデザイン変更という結果になりました(参照:バンドハラスメント新作シングルのジャケット急遽変更、白地に「傑作」)。
斉本佳朗(Dr) これは僕の持論なんですけど、どんな作品であろうと、それがアートかアートじゃないかは作り手ではなく受け手側が判断するものだと思うんです。僕らは今回ハルさんの作品をアートとして世に発信したわけですけど、結局は僕らを間に挟んだことで、その芸術性をうまく伝えることができなかったのかなって。
──発信する側の思いが、受け手に正しく届かなかった。
斉本 例えば、僕らがハルさんのアイデアを盗んで個人的にやったことだったら叩かれる理由もわかるんです。でもご本人に依頼して一緒に作っていったものなので、やっぱり悔しさはあります。うまく伝えられなかったんだなって……ただ、ハルさんの作品の被写体っていつもは本物のカップルなんですけど、今回はモデルさんへお願いしての撮影だったので。そういう意味では本当の愛とは言えなかったし、そこで芸術性が欠けてしまったのかなとも思います。バンドの表現について考えるきっかけにはなったし、今はもう誰1人として今回のことをマイナスに捉えていなくて。
──批判的な意見が多くあった中で、最終的には真っ白な面に小さく「傑作」と書かれた新デザインを発表されました。
斉本 発信の仕方が違うだけで、そこに込めた思いは新デザインも旧デザインも変わっていないんです。新ジャケットだって、見る人が見たら「尖ってる」と言うだろうし。
──「解剖傑作」のミュージックビデオには女性の真っ白な服に色を付けていくシーンがありましたが、今作では「白」も1つのテーマになっている?
斉本 男って、どこかで嘘でもいいと思いつつ女性に処女性を求める部分があって。そういう部分を白で表現しました。ジャケットに関しては、旧デザインがあったからこそ白が大きな意味を持つと思っているんです。真っ白な絵にも、作者がその絵を真っ白にした理由があるわけで。そういう見えない部分、白の裏側にあるものこそ大切なのかなと……まあそうやって自分を納得させてる部分もあるんですけど(笑)。でも人間も同じだと思うんです。いくら着飾ったって内臓に服は着させられないけど、そういう隠れた部分に本性があると言うか。
9月4日に音楽で手紙を出したかった
──ここからは楽曲について聞かせてください。表題曲「解剖傑作」制作のきっかけは斉本さんがある女性に向けて書いた手紙とのことですが、そもそも手紙を曲にしようという発想はいつ生まれたんですか?
斉本 「エンドロール」(2017年5月発売のミニアルバム)をリリースしたときにはすでに構想がありました。もともと、今年の9月4日に曲を発表しようとは以前からずっと考えていたんです。
──「解剖傑作」のMVが公開されたのはまさしく9月4日でした。9月4日は「エンドロール」のラストナンバーのタイトルでもありますが、この楽曲は斉本さんに多大な影響を与えた彼女について歌ったものだとか(参照:バンドハラスメント「エンドロール」インタビュー)。
斉本 今年の9月4日って、その彼女が20歳の誕生日を迎える日だったんですよ。だからこのタイミングで、改めて今までのことを振り返って手紙を書きたいなと思って。ただ、実際には本人に手紙を届けてないんです。寂しくなりたくないから。
──寂しくなる?
斉本 返事がなかったら寂しいじゃないですか。1人で病むのは嫌だったので(笑)。それに、今の僕だったら単純に手紙を書くより、曲にしたほうがメッセージを届けられるかなって。バンドが好きな子だったので、そのほうが彼女に伝わるかなという思いもありました。
──後半にかけて手紙を書く主人公の感情が溢れ出していく描写がリアルで、歌詞として成立するギリギリのバランスを保っているなと思いました。
斉本 あえて矛盾するような表現だったり相手を突き放す言葉を使ったのは、恋愛における支配欲や独占欲ってこういうものだよなと思って。でもこの曲で本当に言いたかったのはそれよりも、無理に何かになろうとしなくても、そのままの姿の中にあなたらしさってあるんだよということなんです。彼女は「あなたの言うことがすべて」「私は何もできないから」みたいなことを言う女の子だったので。だけど僕からすれば彼女を尊敬できる部分はたくさんあったし、「そんなことはないよ」って伝えてあげたかったんですよね。
次のページ »
いちリスナーとしてワクワクした(井深)
- バンドハラスメント「解剖傑作」
- 2017年10月4日発売 / SANTA IS PAPA
-
[CD]
1080円 / SANPA-0002
- 収録曲
-
- 解剖傑作
- 一人隠れんぼ
ツアー情報
- バンドハラスメント「僕と少女の解剖ツアー」
-
- 2017年10月13日(金)鹿児島県 SR HALL
- 2017年10月14日(土)大分県 club SPOT
- 2017年10月17日(火)福岡県 Queblick
- 2017年11月5日(日)兵庫県 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
- 2017年11月15日(水)東京都 Shibuya Milkyway
- 2017年12月4日(月)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- 2017年12月16日(土)愛知県 名古屋市内
- バンドハラスメント
- 井深(Vo)、ワタさん(G)、はっこー(B)、斉本佳朗(Dr)からなるロックバンド。2015年11月に現在のメンバーが集まり、名古屋を拠点に精力的なライブ活動をスタートさせる。2016年には「SUMMER SONIC」、「METROCK ZERO」と大型ライブイベントに相次いで出演。10月に1stシングル「君がいて」を名古屋地区限定でリリースし、初の全国ツアーを敢行した。2017年5月に初の全国流通盤となるミニアルバム「エンドロール」を発表。10月には2ndシングル「解剖傑作」をリリースし、本作を携えた全国ツアー「僕と少女の解剖ツアー」を開催する。