「クリスマスソング」と同じバンドの曲とは思えない
──では、アルバムの新曲について聞かせてください。制作の時期はいつくらいですか?
清水 それはいろいろですね。「最深部」は「大不正解」のタイミングで作っていた曲で、「あかるいよるに」は「オールドファッション」の制作のとき、「雨と僕の話」は「HAPPY BIRTHDAY」のときで。要はシングルとしては選ばれなかった曲なんですが、タイアップさせてもらう映画やドラマと合わなかったというだけで、あとは「これをバンドとして、どこまで大切にできるか」ということなので。それは完全にback numberの話だし、やっぱり燃えるんですよね、そういうときって。どの曲もすごくよくなったし、新曲にはわりと最近の俺たちが詰まっていると思います。
──1曲目に「最深部」を置いたことで、アルバム全体の印象を決定付けているところもあると思います。ギター、ベース、ドラム、歌で構成された、完全にバンドの曲なので。
清水 音数が少ないのにうるさいですよね(笑)。「クリスマスソング」と同じバンドの曲とは思えないかもしれないけど、「自分たちが好きだから、いいか」っていう。曲ができたときから「これが1曲目じゃね?」って話してたんですよ。途中で俺がブレて、「1曲目を『瞬き』、最後を『あかるいよるに』が美しいんじゃないか?」と思ったりしたんですけど、この2人が「いや、『最深部』が1曲目のほうがアガるでしょ」って高校生みたいこと言い出して。「嘘だろ、俺はティーンエイジャーとバンドやってんのかよ」って。
小島・栗原 (笑)。
清水 そういう感じもよかったんですよね。高校生くらいのときって、なんのフィルターもなく音楽を聴いていたし、判断基準もカッコいいかだけなので。その頃の自分が聴いて、一番ワクワクする曲順にしたかったというのかな。地元の群馬にある行きつけのCDショップは、試聴機がなくて、オススメのアルバムの最初の3曲を店内でかけてたんです。高校のとき、ELLEGARDENの「Fire Cracker」がかかった瞬間、「すぐ買います!」ってなったし(笑)、そういう衝動を感じてほしいというのもあって。自分たちもリセットしたかったというか、もう一度バンドをやるような気持ちもあったので。
──「最深部」は演奏の熱量もめちゃくちゃ高いですよね。
清水 そうですね。ギターのストロークも“気持ちのまま”という感じで。嫌なんですよ。長くやっていく中で、そういう部分がなくなっていくのが。歳を取るのはいいんだけど、ライブのときに生命エネルギーの8割は使いたいというか。「この人たち、6割くらいしか使ってないな。明日のライブのことを考えてるのかな」みたいなのって、カッコよくないと思うんですよ。どれだけいい曲を書いていても、表現がよくても、自分たちを削ってることが伝わってこないのはよくない。俺たちは常に削ってるバンドでありたいというか、それしかできないんだけど、ヒリヒリした自分たちを感じていたいのかもしれないですね。
自分らしさから解き放たれて
──「あかるいよるに」「雨と僕の話」はどちらもメロディが素晴らしくて。アルバムの中でも、ポップスとして優れた楽曲だと思います。
清水 「あかるいよるに」はギターを弾いて、つぶやくように歌いながら作って。「いい曲だ」と思ったし、今自分たちがやりたいことも乗っかっていて、「MAGIC」を象徴する曲の1つになったと思いますね。1曲目「最深部」と3曲目「瞬き」というシリアスな内容の曲が最初のほうになったから、ちょっと救いが欲しかったというか、4曲目あたりで、深いところで肯定できる曲を聴いてもらいたくて。「雨と僕の話」もシングルにしたかったと思うくらい気に入ってますね。すでにアルバムを聴いてくれた人から「この曲がいい」と言われることも多くて。3人だけでアレンジすると自分たちの枠を出ないし、地味な曲にしたくなかったから、亀田誠治さんにお願いしたんです。「エンディング」(2012年11月発売「blues」収録曲)以来だから、一緒にやるのはけっこうひさびさだったんですけど、さすがでしたね。アコギと歌だけの簡単なデモを送ったら、ほぼこの形のアレンジで返ってきて。それを聴いて「もっと泣ける歌詞でもいけるな」と思って、「ダセえ男の歌にします!」って伝えて。
──歌を引き立てるリズムのアレンジも素晴らしいですよね。
小島 亀田さんはベーシストとしても大好きなので。「雨と僕の話」のデモが送られてきたときも、その通りに弾きました。
清水 ほぼ完コピだよね。
小島 自然と自分っぽくなってるところもあると思うけど、基本は完コピですね。フレーズ、音の鳴り方、演奏のタイミングもそうだけど、とにかく勉強になるので。
清水 スタジオでも和也が亀田さんに質問してたんですよ。「あのフレーズはちょっと遅れて弾いてますけど、あれはどういうことなんですか?」「え、別に意味ないよ」とか(笑)。それが若手の心意気じゃないですか。島田昌典さんと初めてご一緒したときも、どうにか島田さんのデモを超えられるようにがんばったし。それができるのは、自分たちの強味だと思うんです。“自分っぽさ”とかにこだわらないで、プロデューサーの方が提示してくれたものを含めて、全部抱きしめて飛べるバンドになればいいだけの話なんで。
小島 自分らしさを意識してた時期もあったけど、それだけだと自分の限界を超えられないですからね。
栗原 うん。
人生で重要なことは
──「monaural fantasy」はコード感、リズムのアレンジを含めて、かなり斬新なイメージの楽曲だなと。
清水 ロンドンでフォトブックの撮影をしたんですけど、そのときに作った曲なんですよね。川辺に座ってギターを弾いてたら、高揚感なのか時差ボケのせいなのか、似合うコードがいつもと違っていて。もちろん目にしている景色も関係してると思うけど、ストレートなコードではなくて、少し音を変えたらしっくりきて。それをもとにして、音楽そのものを楽しみながらアレンジを組み立てた曲ですね。
栗原 生ドラムと打ち込みがずっと一緒に鳴ってるんですよ。打ち込みのビートを感じながら、すぐ横で叩いているイメージですね。
清水 歌詞については、“自分の周りの居心地のいい場所がなくなる”ということを歌っていて。生きてると、そういう瞬間ってありますよね。恋人がいなくなるだけではなくて、行きつけの店が撤退したり、ずっと着てたブランドが日本から撤退したり。
──「こんなに負け越している中で ぼやいても 夜の奥に溶けてゆくばかり」という歌詞も印象的でした。この歌詞をバンドに重ねるとしたら、back numberはずっと勝ってるじゃないですか。
清水 まあ、そうですね(笑)。勝ち越しもいいところだと思いますよ。
──それでも、心の中には“負け越している”という気持ちもある?
清水 もちろん、でも自分たちは幸せ者だと思いますよ。自分たちが心からいいと思う曲を出して、「いいぞ!」と言ってくれる人がたくさんいて、ドームツアーをやれるところまで来たので。だけど、誰かに褒めてもらうことが人生で一番重要かと言えば、それは違うと思っていて。全部なくなって、「1つだけ持っていくとしたら、なんだろう?」ということだったり、「だけど、褒められるとか売れるということから逃げるのは違うよな」とか。そういうことを考えて書いた歌詞ですね。
キレイな包装紙の中に生々しい曲たち
──それもさっきの価値の話に結びつきそうですね。価値を考えるところから始まって、アルバムのタイトルが「MAGIC」になったのはどうしてですか?
清水 まず、「価値」ってタイトルじゃ地味じゃないですか(笑)。あと、清水依与吏という人間が濃く出すぎると思うんです、「価値」だと。back numberの曲は自分が作詞作曲してますけど、仮にこれがソロプロジェクトだったら、ここまでたくさんの人に聴いてもらえなかったと思うんですよ。
──つまりback numberということに価値がある、と。
清水 それを変換したら、「MAGIC」になるのかなと。「あかるいよるに」でも「かかった人にだけ価値が生まれる魔法」と歌ってるんですが、誰かに魔法をかけることはできなくても、自分から魔法にかかることはできると思うんですよね。何かに魅力を感じることもそうですけど、魔法って自分自身の中に生まれるものなので。このアルバムをキラキラしたもので包んであげたいという気持ちもありましたね。歌ってることはすごく生々しいので、包装紙くらいはキレイにしたいなと。
──“バンドマジック”という言葉を体現しているんでしょうね、back numberは。
清水 間違いないですね、それは。だって、俺はいい加減ですから。根は真面目なんだけど、上に乗っかってるものがいい加減っていう(笑)。ちゃんと作品を作り続けられるのは、2人の真面目さ、誠実さがあるからなんだなと。それに自分だけが恥をかくよりも、自分と一緒にやってる人が恥をかくほうが嫌なんですよ。
──アルバムのリリース後は、全国アリーナツアーがスタートします。ドームツアーの後のビジョンも見えてきましたか?
小島 どうでしょうね。今まで通り、制作とツアーをやっていきたいですけど。
清水 終わりはないんだなって思いますね。どこかで「ずっと戦っていけばいい」と思っちゃってるんですよ、自分たちは。のほほんと、和気あいあいとやってる時間も必要だけど、締め切りに追われたり、映画やドラマやCMのタイアップをもらって、「この歌詞だけ変えてほしい」みたいなやりとりしたり、結局は「どう戦うか?」なんですよ。今まではそれが結果的にいい方向に行ったし、どんな状況であっても、いい作品を作れないとプロじゃない、一流じゃないとも思ってるので。
──どんなに売れても、バンドが受け入れられても、楽にはならない。
清水 それはもう性格の問題でしょうね(笑)。最初からポジティブでほんわかしてる人は、売れてもそのままだと思うんです。俺みたいなヤツは、売れても売れなくても、楽できないんだろうなと。だからと言って、投げ出すわけにはいかないし……自分との付き合い方が一番難しいし、やりがいもあるんでしょうね。
ツアー情報
- back number「NO MAGIC TOUR 2019」
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- 2019年4月20日(土)静岡県 エコパアリーナ
- 2019年4月21日(日)静岡県 エコパアリーナ
- 2019年4月27日(土)岩手県 盛岡市総合アリーナ
- 2019年4月28日(日)岩手県 盛岡市総合アリーナ
- 2019年5月3日(金・祝)長野県 ビッグハット
- 2019年5月4日(土・祝)長野県 ビッグハット
- 2019年5月18日(土)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
- 2019年5月19日(日)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
- 2019年5月25日(土)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
- 2019年5月26日(日)北海道 北海道立総合体育センター 北海きたえーる
- 2019年6月1日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
- 2019年6月2日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
- 2019年6月8日(土)大分県 別府国際コンベンションセンター ビーコンプラザ
- 2019年6月9日(日)大分県 別府国際コンベンションセンター ビーコンプラザ
- 2019年6月22日(土)広島県 広島グリーンアリーナ
- 2019年6月23日(日)広島県 広島グリーンアリーナ
- 2019年6月29日(土)愛媛県 愛媛県武道館
- 2019年6月30日(日)愛媛県 愛媛県武道館
- 2019年7月6日(土)神奈川県 横浜アリーナ
- 2019年7月7日(日)神奈川県 横浜アリーナ
- 2019年7月20日(土)三重県 三重県営サンアリーナ
- 2019年7月21日(日)三重県 三重県営サンアリーナ
- 2019年7月25日(木)東京都 日本武道館
- 2019年7月26日(金)東京都 日本武道館
- 2019年8月3日(土)和歌山県 和歌山ビッグホエール
- 2019年8月4日(日)和歌山県 和歌山ビッグホエール
- 2019年8月10日(土)福井県 サンドーム福井
- 2019年8月11日(日・祝)福井県 サンドーム福井
- 2019年8月17日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
- 2019年8月18日(日)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
- 2019年8月23日(金)大阪府 大阪城ホール
- 2019年8月24日(土)大阪府 大阪城ホール
- 2019年8月31日(土)福岡県 マリンメッセ福岡
- 2019年9月1日(日)福岡県 マリンメッセ福岡
- 2019年9月20日(金)沖縄県 沖縄コンベンションセンター展示棟
- 2019年9月21日(土)沖縄県 沖縄コンベンションセンター展示棟
- back number「MAGIC」
- 2019年3月27日発売 / UNIVERSAL SIGMA
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初回限定盤A
[CD+Blu-ray+フォトブック]
8424円 / UMCK-9991 -
初回限定盤B
[CD+Blu-ray+フォトブック]
7344円 / UMCK-9993 -
通常盤 [CD]
3240円 / UMCK-1616 -
初回限定盤A
[CD+2DVD+フォトブック]
7344円 / UMCK-9990 -
初回限定盤B [CD+DVD+フォトブック]
6264円 / UMCK-9992
- CD収録曲
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- 最深部
- サマーワンダーランド
- 瞬き
- あかるいよるに
- ARTIST
- オールドファッション
- ロンリネス
- 雨と僕の話
- エキシビジョンデスマッチ
- monaural fantasy
- HAPPY BIRTHDAY
- 大不正解
- 初回限定盤A付属Blu-ray / DVD収録内容
back number dome tour 2018 "stay with you" at TOKYO DOME 2018.8.11
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- 瞬き
- SISTER
- ARTIST
- 青い春
- チェックのワンピース
- エンディング
- ハッピーエンド
- ゆめなのであれば
- 半透明人間
- 海岸通り
- 西藤公園
- 重なり
- クリスマスソング
- ヒロイン
- stay with me
- 大不正解
- MOTTO
- スーパースターになったら
- <アンコール>
- ネタンデルタール人
- ささえる人の歌
- 高嶺の花子さん
making of back number dome tour 2018 "stay with you"
- 初回限定盤B付属Blu-ray / DVD収録内容
ミュージックビデオクリップ
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- ARTIST
- 瞬き
- 大不正解
- オールドファッション
- HAPPY BIRTHDAY
Making of SPECIAL PHOTO BOOK for NO MAGIC TOUR 2019
- back number(バックナンバー)
- 2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬県で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(Dr)を迎え現在の編成に。2009年に発売した初のミニアルバム「逃した魚」は大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというスタイルを確立。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビューした。2013年には東京・日本武道館でワンマンライブを成功させ、その後もコンスタントに作品を発表。2016年12月にキャリア初のベストアルバム「アンコール」をリリースした。3月に通算6枚目となるニューアルバム「MAGIC」を発売し、4月より全国アリーナツアー「NO MAGIC TOUR 2019」を行う。
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