音楽ナタリー Power Push - back number
“アンコール”で振り返る7年
back numberが初のベストアルバム「アンコール」をリリースした。「花束」「高嶺の花子さん」「クリスマスソング」「ハッピーエンド」などのヒットシングルに加え、これまでに発表した5枚のオリジナルアルバムから厳選された楽曲、さらにインディーズ時代の楽曲も収められた本作は2009年から本格的に始まった彼らのキャリアを網羅できるベストに仕上がっている。
音楽ナタリーでは今回も清水依与吏(Vo, G)、小島和也(B, Cho)、栗原寿(Dr)の3人にインタビュー。「アンコール」の発売に至った経緯に加え、これまでのバンドの変遷、今後のビジョンなどについてもたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 須田卓馬
5枚のオリジナルアルバムが“本編”
──back numberにとって初のベストアルバム「アンコール」がリリースされます。ベストアルバムを出すという話があったときは、どんなふうに感じました?
清水依与吏(Vo, G) どうだったんだろう? ベストを出そうという話はけっこう前からしていたんですよ。自分たちとしても「そのうち出るんだろうな」という感じだったんですけど、タイミングとして今が一番よかったということだと思います。ベストアルバムというのは「back numberをより広めよう」とか、バンドの今後のことを考えて、スタッフが打つ一手というイメージなんですよね。メンバーが「ベストを出しましょう」って言い出すのを待っていたら、一生出ないだろうし(笑)。
小島和也(B, Cho) そうだね(笑)。
清水 ずっと「リリースするなら新曲でしょう!」というスタンスでやっているし、これからもそうだと思ってます。もちろんベストの制作に関しては自分たちもこだわっているし、積極的に関わっていて。back numberには「まだ知ってもらってないと思うけど、この曲もけっこういいんだよな」という曲がたくさんあって、それを紹介するいい機会だと思ったんです。だからシングル曲だけにしないで、アルバム曲やインディーズ時代の曲も入れて。
──曲もリリース順に並んでいるわけではないですからね。2枚組ですが、それぞれ新しいオリジナルアルバムを聴いているような感覚もありました。
清水 そうかもしれないですね。1枚1枚独立しているような感じもあるし、聴いてくれた人が「私はDISC 1がいい」「俺はDISC 2が好き」というふうに分かれてもいいだろうし。曲順に関しても、今までのアルバム制作の中で一番気を使ったかもしれないですね。同じ時期に作った曲だけではないので、飽きずに聴いてもらうために工夫が必要だったというか。オリジナルアルバムの場合は、1年か1年半くらいの間にできた曲をギュッとまとめる感じですけど、ベストはそうじゃないから。しかも1曲1曲がけっこうな暴れん坊なので(笑)。
──確かに歌詞、サウンドを含めて、キャラが濃い楽曲がそろってますからね。収録曲はメンバーが中心になって決めたんですか?
小島 僕たちだけじゃなくて、チームみんなで選びました。32曲では全然足りませんでしたけどね。曲がどんどんあふれちゃって、どれを削るべきかという話をずっとしていたので。「この曲はなんで入れないの?」「これを入れるのであれば、こっちも……」とか。
清水 こういうときって、スタッフもいい意味でエゴを出してきますからね。1人ひとりの思い出に根付いているところもあるし、スタッフそれぞれにお気に入りの曲があるので。
──皆さんにも「どうしても入れたい1曲」があったんですか?
栗原寿(Dr) ありましたね。僕は「アップルパイ」を推したんですよ。自分自身が好きな曲でもあるし、今年のツアー(「back number tour 2016“ミラーボールとシャンデリア”」)のアンコールでやったときに、タイトルを言うだけで会場が「ワーッ!」と盛り上がって。
小島 僕は「エンディング」ですね。もともとはシングルにしようと思っていた曲なんですけど、タイアップの関係で「青い春」がシングルになって。3rdアルバムの「blues」に収録されたんですが、もっと聴いてもらいたい曲だし、ライブでもやっていきたいので。ほかにも入れたい曲はたくさんあったんですけどね、もちろん。
清水 俺は「平日のブルース」とか「ネタンデルタール人」とかを入れたかったんですけど、入らなかったですね。厳しい戦いでしたね(笑)。シングル以外にも「入れなくちゃいけないよね」という曲があるじゃないですか。「世田谷ラブストーリー」とか「そのドレスちょっと待った」もそうだし。その2曲は収録されているんだけど「海岸通り」は漏れてたりね。
小島 「アンコール」の制作は、こういう話をずっとしていたってことですね(笑)。
清水 サウンド面の幅を見せるには32曲では全然足りなかったですね。「頬を濡らす雨のように」とか「こわいはなし」「ミスターパーフェクト」が入っていれば「back numberは(音楽的に)こんなこともできるんだぜ」ということが伝えられたかもしれないけど。
──いつの間にか“入れられなかった曲”の話になってますが(笑)。それくらい聴いてほしい曲がたくさんあったということですよね。
清水 そうですね。シングルは健気な主人公にした曲が多いですけど、それだけではない部分を見てもらいたかったので。もっと深いところを描いた曲も入れたかったというか。でもみんなと話し合う中で収録曲を決めて、「アンコール」というタイトルにたどり着いたときに「このタイトルなら入っていない曲も報われるな」と思ったんです。アンコールってステージから去って「もう1回やります」ということじゃないですか。演奏している時間は短いけど、そこだけ見てもback numberというものがわかって、さらに「その前はどうだったんだろう?」とか「次のライブはどうなるんだろう?」って気になるっていう。本編が今まで出してきたオリジナルアルバムで、その上で「じゃあ、アンコールやります」というのが今回のベストアルバムなんですよね。
小島 うん。ベストを聴いてくれた人が、ここに入っていない曲を思い出して「聴いてみよう」と思ってくれたらうれしいです。
キャリアを振り返って
──収録曲を決めるプロセスは、これまでのキャリアを振り返るきっかけでもあったと思います。そこで何か気付いたことはありますか?
栗原 インディーズ時代の楽曲って、レコーディングしたのは7年くらい前なんですよ。だから今の自分たちの最新の楽曲と聴き比べると、いろいろとツッコミたいところがあったりしました。「この曲を録るのにどうしてこの機材を使ったんだろう?」とか。今だったら違う方法を選ぶと思いますけど、ただそのときにしかできなかったこともありますからね。それを改めて感じられたのはよかったと思います。
小島 僕は7年前の曲も意外と身近に感じられたんですよね。「あの曲を入れたい」と思い浮かんだ曲が1stミニアルバムの「逃した魚」に入ってたりして「そんなに年数が経っている感じはしないな」って思ったり。けっこう昔の曲を聴き直して「またライブでやりたい」と思うことも多かったですね。
──作詞作曲を手がけている清水さんはどうですか?
清水 歌詞に関しては昔の曲と今の曲と比べると、同じようなテーマであっても、書き方が全然違っていたりするんですよね。違いは感じたけれど、自分の成長としてちゃんと飲み込めたし、「昔のほうがよかった」とも思わなかった。そのときにできなかったことを最近の曲でやれている実感もあるし……それはたぶん「ハッピーエンド」を書けたからだと思うんです。失恋をテーマにした曲をシングルとして出せてなかったら、今回のベストに対する気持ちも少し違っていたのかなって。最新シングルの「ハッピーエンド」が入っていることで、新譜感もありますしね。
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- ベストアルバム「アンコール」2016年12月28日発売 / UNIVERSAL SIGMA
- 初回限定盤A
- 「アンコール」初回限定盤A
- [2CD+Blu-ray+フォトブック]8424円 / UMCK-9885
- [2CD+2DVD+フォトブック]7344円 / UMCK-9886
- 初回限定盤B
- 「アンコール」初回限定盤B
- [2CD+Blu-ray]7020円 / UMCK-9887
- [2CD+DVD]5940円 / UMCK-9888
- 通常盤
- 「アンコール」通常盤
- [2CD]3780円 / UMCK-1560~1
CD収録曲
DISC 1
- 高嶺の花子さん
- 花束
- ハッピーエンド
- クリスマスソング
- はなびら
- 黒い猫の歌
- fish
- 君がドアを閉めた後
- 青い春
- 光の街
- stay with me
- MOTTO
- 恋
- 世田谷ラブストーリー
- 半透明人間
- 日曜日
DISC 2
- 春を歌にして
- 僕の名前を
- SISTER
- 助演女優症
- 繋いだ手から
- エンディング
- そのドレスちょっと待った
- わたがし
- 電車の窓から
- ヒロイン
- 幸せ
- アップルパイ
- 003
- 手紙
- 思い出せなくなるその日まで
- スーパースターになったら
初回限定盤A DVD / Blu-ray収録内容
MIRRORBALL and CHANDELIER@幕張メッセ国際展示場9.10.11ホール(2016.6.19)
- Liar
- 泡と羊
- 青い春
- SISTER
- わたがし
- 僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい
- いつか忘れてしまっても
- 思い出せなくなるその日まで
- 君がドアを閉めた後
- サイレン
- ミラーボールとシンデレラ
- MOTTO
- 半透明人間
- 助演女優症2
- 東京の夕焼け
- ヒロイン
- クリスマスソング
- 僕の名前を
- Hey!Brother!
- 高嶺の花子さん
- スーパースターになったら
- アップルパイ
- 手紙
- そのドレスちょっと待った
- making of back number tour 2016 MIRRORBALL and CHANDELIER
初回限定盤B DVD / Blu-ray収録内容
music video clip
- 春を歌にして
- 西藤公園
- stay with me
- はなびら
- 花束
- 思い出せなくなるその日まで
- 恋
- 日曜日
- わたがし
- 青い春
- エンディング
- 高嶺の花子さん
- fish
- 繋いだ手から
- ヒロイン
- SISTER
- 手紙
- クリスマスソング
- サイレン
- 僕の名前を
- 黒い猫の歌
- ハッピーエンド
bonus video track
- 「花束 studio live ver.」produced & rearranged by 島田昌典
- 「クリスマスソングstudio live ver.」produced & rearranged by 小林武史
- back numberと秦 基博と小林武史「reunion」short film
back number(バックナンバー)
2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬県で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(Dr)を加えた現在の編成に。2009年に発売した初のミニアルバム「逃した魚」は大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというスタイルを確立。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビューした。2013年には東京・日本武道館でワンマンライブを成功させ、その後もコンスタントに作品を発表。2015年12月に5thアルバム「シャンデリア」をリリースしたのち、2016年1月からはアリーナ公演を含む32カ所39公演のツアーを実施。11月にシングル「ハッピーエンド」を、12月にキャリア初のベストアルバム「アンコール」をリリースした。2017年2月から自身最大規模の全国ツアー「back number "All Our Yesterdays Tour 2017"」を開催する。