音楽ナタリー Power Push - back number
15thシングルに詰め込んだ“らしさ”
「気持ち悪い」「ワロタ」「キモス」は覚悟してる
──なるほど。「僕の名前を」は歌詞においてもback numberらしい攻め方をしていますよね。特に「僕の全ては君のものだ」というフレーズは強烈だと思います。
清水 ちょっと気持ち悪い感じもありますけどね(笑)。この歌詞は映画(「オオカミ少女と黒王子」)の原作と脚本を読ませてもらってから書いたんですけど、まっすぐな気持ちを歌うだけだと、個人的に楽しめないかもなって思ったんです。だからヒネくれた表現ではなくて「まっすぐすぎて、受け取るのに困る」くらいの歌にしたいなって。「この言葉を言われてうれしいっていう女子、ホントにいるのかな?」と思いましたけど、そこは自分の中の「これを歌いたい」という気持ちを優先しました。
──“君のすべてがほしい”的な歌詞は多いですけど、男性から「僕の全ては君のものだ」と言い切る歌詞って聴いたことないですからね。
清水 自然に出てきたんですよ、これ。もしかしたらちょっと変態かもしれないし、ドMかもしれないし、ドSかもしれない……。ネットで「気持ち悪い」「ワロタ」「キモス」とか書かれるのもある程度は覚悟してますけどね(笑)。
小島 「wwwwww」ってヤツですか(笑)。“逆束縛”というか、このフレーズは清水依与吏にしか思い付かないですよね。「僕をすべてあげます」って言っても「いやいや、困ります」って言われるかもしれないし。でも映画を観させてもらったときにすごく納得しましたね。
栗原 素敵だと思いますよ、僕も。
清水 ありがとうございます(笑)。
栗原 これって「僕の人生を捧げます」ってことじゃないですか。「好きです」という告白よりも、「結婚してください」と言ってる感じというか。映画は中高生くらいの恋愛ですけど、僕らくらいの年齢の人にとってはプロポーズを思い浮かべるんじゃないかなって。
──自分のすべてを捧げる覚悟を歌っているというか。
清水 そうですね。この曲の主人公はすごく不器用だと思うんですよ。相手からもらったものが多すぎることに気付いて、「全部どうぞ」って言ってしまうっていう。僕らの曲を聴いてくれてる人たちは、自分の人生に置き換えてくれる人も多いから「好きな彼から、こんなこと言われたい」なんて思ってくれたらうれしいですね。
恥ずかしいことを恥ずかしげもなく歌うのは得意
──2曲目の「パレード」は「『あの子、俺のことが好きなのでは?』と思い込んでいた男が、その勘違いに気付く」という内容の歌詞が印象的でした。すごくback numberらしい曲ですよね。
清水 この曲はアルバム「シャンデリア」を作っていたときにレコーディングしていて、最初はそこに入れようと思ってたんです。そのあと「クリスマスソング」(フジテレビ系月9ドラマ「5→9 ~私に恋したお坊さん~」主題歌)の依頼があって、「片思いの曲がかさばるね」っていう話になり、外したんですよ。実際にけっこうあるんです、こういうこと。「あ、勘違いだったのね。了解でーす」みたいな(笑)。そういう恥ずかしいことを恥ずかしげもなく歌うのは得意なので。瞬間芸みたいな感じでスラスラ書けましたね。
小島 「高嶺の花子さん」とかもそうなんですけど、「妄想だけでどこまでイケるか」みたいな曲は確かに得意かもしれないですね。「パレード」は曲調が明るい感じなのに、歌詞の内容が暗いっていうギャップも面白いなって。最後は女の子に対して「(彼氏と)別れればいい」って呪ってますから(笑)。
栗原 僕この曲好きですね。「僕の名前を」はガッチリ作ってますけど、「パレード」はいい意味でラフなところがあって。歌詞にも僕たちらしさが詰まっていると思います。
──「さよなら両想い(仮) こんにちは片想い」という歌詞もback numberらしいですよね。ほかの人が書かなそうな歌詞というのは意識してますか?
清水 自分としては、面白くてやってるだけですけどね。上の世代の方々も素晴らしい曲をたくさん書いていらっしゃいしますし、ほかの人が書かない歌詞みたいなことを意識すると、何も書けなくなると思うんですよ。もちろんたくさんの曲を聴いてきてるし、好きな曲もいっぱいありますけど、それをある程度を忘れて書かないと……。あとはもう、自分が「いいな」と思えるものを作るということですよね。それを続けて、後ろを振り返ったときに「これが自分らしさなのかな」と思えればいいというか。
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- ニューシングル「僕の名前を」 / 2016年5月25日発売 / UNIVERSAL SIGMA
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / UMCK-9837
- 通常盤 [CD] 1080円 / UMCK-5599
CD収録曲
- 僕の名前を
- パレード
- ひとくいにんげん
- 僕の名前を(instrumental)
- パレード(instrumental)
- ひとくいにんげん(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- 「僕の名前を」music video
- 「僕の名前を」making of studio recording & music video & photo session
- 映画「オオカミ少女と黒王子」5月28日(土)より全国公開
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恋愛経験ゼロだが見栄っ張りの篠原エリカ(二階堂ふみ)は、友達に架空の彼氏との恋愛話を語って聞かせる“オオカミ少女”。ある日エリカは街で見かけたイケメンを盗撮し、自分の彼氏として友達に紹介する。ところがその彼は同じ学校に通う佐田恭也(山﨑賢人)だったことが発覚。事情を打ち明けると彼氏のふりをしてくれるという優しい恭也に、エリカは「王子様みたい……!」と大感激。しかし実はドSな面を持つ恭也は、彼氏のふりをする条件としてエリカに絶対服従を命じる。
スタッフ
原作:八田鮎子 / 監督:廣木隆一 / 脚本:まなべゆきこ / 音楽:世良裕子
キャスト
二階堂ふみ / 山﨑賢人 / 鈴木伸之 / 門脇麦 / 横浜流星 / 池田エライザ / 玉城ティナ / 吉沢亮 / 菜々緒
- ©八田鮎子 / 集英社 ©2016 映画「オオカミ少女と黒王子」製作委員会
back number(バックナンバー)
2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬県で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(Dr)を加えた現在の編成に。2009年に発売した初のミニアルバム「逃した魚」は大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというスタイルを確立。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビューした。2013年には東京・日本武道館でワンマンライブを成功させ、その後もコンスタントに作品を発表。2015年12月に5thアルバム「シャンデリア」をリリースしたのち、2016年1月からアリーナ公演を含む32カ所39公演という自身最大規模のツアーを実施中。2016年5月にはニューシングル「僕の名前を」を発売する。