音楽ナタリー PowerPush - back number

季節を彩る「ヒロイン」完成 小林武史との共作秘話とバンドのこれから

JR東日本「JR SKISKI」キャンペーンのテレビCMソングとしてオンエアされリリースが待たれていたback numberの「ヒロイン」が、ついに発売された。

この楽曲のプロデューサーはバンドと初タッグとなる小林武史(参照:back number、2015年第1弾シングルで小林武史とタッグ)。サザンオールスターズやMr.Childrenへのリスペクトを公言してきたback numberにとって、これらのアーティストのプロデューサーである小林との出会いは大きな刺激であり、また、バンドの新たな可能性を探る経験となったことだろう。メンバー3人にシングル「ヒロイン」の制作を振り返ってもらった。

取材・文 / 小貫信昭 撮影 / 佐藤類

シングルならこれがいい

──いよいよ「ヒロイン」がリリースされますが、曲が生まれ、JR東日本「JR SKISKI」のキャンペーンソング(参照:back number新曲が「JR SKISKI」CM曲に)となるまでの経緯を教えてください。

back number

清水依与吏(Vo, G) まず2014年の頭くらいに、自分でも不思議なくらいなんのストレスもなくふわっとできあがった曲があったんです。作ろうとして作った感じは一切なく、「こんなスムーズに曲ができあがっていいのかな?」と思うくらい自然にできて。それが「ヒロイン」です。

──小島さんと栗原さんは、この曲の第一印象はどんなものだったのでしょうか?

小島和也(B, Cho) 曲ができた少しあとに、次のシングルを何にするのかを決める会議があったんです。ほかにもデモを録っていた曲がいくつかあったんですけど、「シングルならこれがいい」とすぐに思ったのがこの曲でした。そのときはまだ漠然としていましたけど、僕だけじゃなく、全員一致でそう思ったんじゃないかな。

栗原寿(Dr) 僕も最初の段階のデモを聴いたときからすごくいいメロディだと思ったし、1回聴いただけで「いい曲だ」とわかりました。これをどう解釈しようかと考えたとき、頭に浮かんだのはシンプルかつ王道なビートで。ドラマーとして「この曲をどっしり支えたいな」と思いましたね。

清水 この曲の歌詞はキャンペーンのテーマに沿って“雪”をキーワードにしているんです。だから詞を書き始めたのはキャンペーンソングに採用されることが決まってからでした。メロディができた段階では特に歌詞の内容を意識していなかったわけですが、そもそも寒い時期にできた曲だし、「きっと“雪”というテーマにも合うんじゃないか」って思って。ただ曲はスムーズに書けましたけど、詞で苦労して。

──CMで印象的だったのは、まさにそのキーワードが出てくる「雪が綺麗と笑うのは」というサビの部分でした。タイアップ曲ということでクライアントとのやりとりもあったかと思うのですが。

清水 サビの部分に関しては、最初に先方にお渡したもののままなんです。もちろんさまざまなやりとりをしながら作業をしていきましたが、そのことで曲が大きく変わったりはしませんでしたし、サビについてはこちらの思いを貫かせてもらえました。

才能がないから何も言われないのかも

──小林武史さんにプロデュースをオファーしたのは?

清水 前々から「小林武史さんとやってみたい」という思いがあって、ダメ元でお願いしてみたんですよ。そうしたら、なんとまさかの……やっていただけることになりまして。

清水依与吏(Vo, G)

──曲を制作していく上で、小林プロデューサーからはどんなアドバイスがあったのでしょうか。

清水 まず小林さんが言っていたのは、ある意味“ホーリー(holly=聖なる)”というか教会音楽的な感じだったり、あるいはThe Beatlesの「Let It Be」のような感じがハマるんじゃないかということでした。結果としてそういったサウンドの世界観と僕らの“頑なさ”や“無骨さ”がいい感じで合わさったと思います。

──これまでも島田昌典さんや蔦谷好位置さんにプロデュ-スを頼んだことがありましたよね。

清水 そうですね。ただ、島田さんや蔦谷さんのときは、一旦お二人が曲を完成形に近いところまで作ってくださって、それを僕らが自分たちのものにしつつレコ-ディングして、それから「ここはこうしたいんですけど」と意図を伝えて……という作業だったので、今回はそのときとはずいぶん違いましたね。

──実際の作業はどんな感じで進めたのですか?

清水 小林さんが「初めてだから一緒に作りたい」って言ってくださって。それでアコースティックギターを1本持って小林さんのところへ行って、「リズムどうしよう?」とか、そういうところからやりとりさせていただきました。小林さんはワンコーラス作りつつ「全体像はこうなればいいよね」って話をしてくださったんですけど、そのあとほかの用事があったのか出て行ってしまって。ずっとスタジオにいるわけじゃなかったので……あんまりいないから最初はそれで焦ったんですよ(笑)。でも集中することができたので、それがよかったような気がします。「思えばどんな映画を観たって」のところとかは僕が自分でコ-ドの展開を考えつつ、横にいたエンジニアさんに「こういう感じにしてもらっていいですか?」とお願いしながら作っていって。小林さんは戻ってきたら僕が考えて作った部分を聴いて「こんな感じになってるんだ」って言いながらすぐにその場でピアノを付けてくれました。

──つまり一緒に考えていった部分と自主性に任せてもらった部分があったわけですね。

清水 最初はメロディやコードのことで「もっとこうしようよ」と言われるのかと思っていたんですが、逆に言われなさすぎてちょっと不安になりましたね(笑)。ダメ出しが全然なかったので、「もしかして、俺に才能がないから何も言われないのかも」って。

──それは確かに不安になりますね。

清水 Mr.Childrenの桜井(和寿)さん、つまり日本のトップの人と同じ状況を経験させていただいていたわけですけど、そこで小林さんが何も言わないから「やっぱダメなのかな」って……。勝手にコンプレックスを感じてしまったんです。しまいには小林さんに、「ホントにこれでいいんですかね? けっこう俺が1人で作っちゃってるし……」とか聞いてしまって。でも小林さんは「俺、ダメだったら言うから」って。そのとき「ちゃんと認めてくれていたんだ!」ってわかったんです。それでずいぶん救われましたね。終わってみればすごくいろいろなものを引き出していただいた感じです。放任といえば放任なんでしょうけど、結果的に「こんないいものができるんだなあ」と思いました。

ニューシングル「ヒロイン」 / 2015年1月21日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / UMCK-9718
通常盤 [CD] 1080円 / UMCK-5556
CD収録曲
  1. ヒロイン
  2. アーバンライフ
  3. アップルパイ
  4. ヒロイン(instrumental)
  5. アーバンライフ(instrumental)
  6. アップルパイ(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「ヒロイン」Music Video
  • love stories tour 2014~横浜ラブストーリー2~ダイジェスト
ライブDVD「“love stories tour 2014 ~横浜ラブストーリー2~”」 / 2015年2月25日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤 [DVD2枚組] 6264円 / UMBK-9287
通常盤 [DVD] 4860円 / UMBK-1218
back number「アーバンライブツアー2015 supported by uP!!!」
  • 2015年3月25日(水)新潟県 新潟LOTS
  • 2015年3月26日(木)新潟県 新潟LOTS
  • 2015年3月31日(火)宮城県 Rensa
  • 2015年4月1日(水)宮城県 Rensa
  • 2015年4月3日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2015年4月8日(水)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2015年4月9日(木)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2015年4月13日(月)大阪府 Zepp Namba
  • 2015年4月14日(火)大阪府 Zepp Namba
  • 2015年4月17日(金)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2015年4月19日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2015年4月23日(木)東京都 Zepp Tokyo
  • 2015年4月24日(金)東京都 Zepp Tokyo
  • 2015年4月29日(水・祝)沖縄県 桜坂セントラル
back number(バックナンバー)
back number

2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(Dr)を加えた現在の編成に。2009年に発売した初のミニアルバム「逃した魚」は大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというスタイルを確立。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビューした。2013年には日本武道館でワンマンライブを成功させ、その後もコンスタントに作品をリリース。2015年1月には小林武史をプロデューサーに迎えたシングル「ヒロイン」を発表した。