ナタリー PowerPush - back number
「高校入試」主題歌と新作アルバムに3人が込めたまっすぐな思い
「いいアルバムができちゃったぜー」って(笑)
──「青い春」が出た2週間後には3rdアルバム「blues」もリリースされます。約1年ぶりのアルバムですが、2ndを出した後からずっと制作は続けてたんですか?
清水 そうですね。でもその期間、目の前のことをやるのにただただ一生懸命で「これはアルバムとしてまとまるのか?」っていう不安も結構あったんです。
──シングルも4枚コンスタントに出して、結構目まぐるしかったですもんね。
清水 はい。でも曲を全部作り終えて、最終マスタリングで頭から最後まで全部聴いたときに「ああ、いいアルバムができちゃったぜー」って感じがあって(笑)。2ndの「スーパースター」も自分らの周りではいろんな方に褒めていただいた記憶があるんですけど、それと比べないようにしようとは思いつつ、軽く飛び越えてくれるものになったなって。
──曲順もすんなり決まりましたか?
清水 それも本当にスムーズでした。前回は最後まで迷ったんですけど、今回は「この曲はここにあるべきじゃないか」っていう何かが導いてくれたというか。だから前回が「作った」っていう感じだとしたら今回は「できてた」みたいな(笑)。ハイ次、ハイ次……っていう怒涛のような1年だったんですけど、こんなにきれいなアルバムになるんだーっていうのは思いましたね。
──シングル4曲を含め、テレビ番組や映画のタイアップが付いた曲も多くて、全てがシングル級といった印象でした。これだけの曲たちを「blues」というタイトルにまとめた理由は?
清水 今までもそうなんですけど、アルバムタイトルはそのときの自分たちがどうあるべきかってことを伝えてる、バンドのサブタイトルのようなものでもあると思うんです。これまで出した「逃した魚」「あとのまつり」「スーパースター」は、こうならなきゃいけないっていう理想も示唆してたりして。今回の「blues」は簡潔に言うと「今までもこれからもこうして音楽をやっていく」っていう意思表示なんですけど、ブルースって元々昔の労働階級の人々が夜の酒場でやり場のない気持ちを歌ってたものらしいんですね。それを聞いたときに「あ、じゃあオレらのやってることはまさにブルースなんじゃないか」って思って。
──というのは?
清水 単なる憂さ晴らしとはまた違うんですけど、胸の内にある本当に言いたいこと、本当はこうしたいんだっていう思いを曲に乗せてるという意味で。ブルースという音楽自体はあまり聴いたことがないんですが、そういう意思表示の部分が通じるなって思ったので付けました。
「助演女優症」をアルバムに入れたのは今年一番の仕事
──アルバムの中で、個人的には「助演女優症」がすごく好きで。これは「青い春」のカップリング曲でもありますが、妖艶な世界観が斬新でした。
清水 お、お気付きですかー! 正直、これは今年の僕のハイライトソングです!
──そうなんですね。具体的には、どのあたりが気に入ってるんですか?
清水 かなりディープな世界観ではあるんですが、だからこそ作家としてのレベルアップができたのかなって思わせてくれた曲で。こういう曲をこの精度で書けたっていうのは自信にもなりましたね。タイアップがある曲は、ある程度その対象に憑依して書かなきゃいけない部分もあるんですけど、これはまた別の意味での憑依というか。僕は女ではないので(笑)、この内容に近しい男としての経験や想像も含めて作っていきました。「これは歌われたくないだろうなー」っていうのを歌ってやった感があります!(笑)
──それは、女性がってことですか?
清水 そうですね。多分これ、あまりにも自分とリンクして聴けない女性もいるだろうと思うんですよ。常にその……彼女や奥さんがいる男性を好きになったりする人っているじゃないですか?(笑) もちろんその「高い山ほど登りたい」みたいな気持ちはわかるんですが、そういう人たちはやっぱりどこか相手に都合がよくて頭が悪い女を演じてるだけっていう面もある気がして。
──なるほど。
清水 でも本当の気持ちを言えなくて、ずっと惑わされてるっていうのは……きっと演じてるんじゃなくて病気だよねっていう(笑)。それで「助演女優症」をあなたにあげますっていう、そんな歌なんです。
──その皮肉めいた感じも面白いですよね。これ、アルバムに入って本当によかったなって思いました。
清水 実は最初、チーム内であまり評判が良くなかったんです。でもそれを守り抜いてアルバムに入れたのは、僕の今年一番の仕事ですね(笑)。
- 3rdアルバム「blues」 / 2012年11月21日発売 / UNIVERSAL SIGMA
- 3rdアルバム「blues」 / 初回限定盤[CD+DVD] / 3990円 / UMCK-9565
- 3rdアルバム「blues」 /通常盤[CD] / 3059円 / UMCK-1434
CD収録曲
- 青い春
- 手の鳴る方へ
- わたがし
- エンディング
- 日曜日
- 平日のブルース
- 笑顔
- ささえる人の歌
- bird's sorrow
- 助演女優症
- 僕が今できることを
- 恋
初回限定盤DVD収録内容
- はなびら(MUSIC VIDEO)
- 花束(MUSIC VIDEO)
- 思い出せなくなるその日まで(MUSIC VIDEO)
- 恋(MUSIC VIDEO)
- 日曜日(MUSIC VIDEO)
- わたがし(MUSIC VIDEO)
- エンディング(MUSIC VIDEO)
- 青い春(MUSIC VIDEO)
収録曲
- 青い春
- 助演女優症
- 反省線急行自宅行き
- 青い春(instrumental)
- 助演女優症(instrumental)
- 反省線急行自宅行き(instrumental)
back number(ばっくなんばー)
2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(D)を加えた現在の編成となった。最初の音源は、2009年に発売されたミニアルバム「逃した魚」。大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にはフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというバンドのスタイルを確立した。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビュー。2012年は初のワンマンツアー「恋は盲目ツアー2012」を敢行し、全公演大盛況にて幕を閉じる。5月にリリースしたシングル「日曜日」はHBC・TBS系ドラマ「スープカレー」の主題歌に起用された。11月7日には長澤まさみ主演のフジテレビ系ドラマ「高校入試」主題歌となったシングル「青い春」を、11月21日には3rdアルバム「blues」をリリースする。