ナタリー PowerPush - back number
「高校入試」主題歌と新作アルバムに3人が込めたまっすぐな思い
繊細なタッチで描かれる歌詞と耳に残る美しいメロディラインが人気のスリーピースバンド、back number。5thシングル「日曜日」、6thシングル「わたがし」が続けてスマッシュヒットを記録し知名度も上昇中の彼らが、長澤まさみ主演の連続テレビドラマ「高校入試」の主題歌「青い春」を7thシングルとしてリリースした。
またその2週間後には、待望の3rdオリジナルアルバム「blues」も発表。タイアップ曲も多い粒ぞろいの全12曲は、メンバー全員が自信を持って届けられると語る会心の出来。最新シングルとアルバムについて3人にじっくり話を訊いた。
取材・文 / 川倉由起子 インタビュー撮影 / 井出眞諭
ドラマの最終回で流れるのが「青い春」の一番いい状態
──ニューシングル「青い春」は、ドラマ「高校入試」の主題歌として書き下ろした楽曲なんですよね。
清水依与吏(Vo, G) はい。ドラマの制作の方からオファーをいただいて、まずは既に完成していた全話の脚本を読ませてもらいました。しかも3回くらい!
──おお、そこまで熱が入っていたってことですね。ストーリーを読んで、どんなことを感じましたか?
清水 高校入試ってほとんどの人が体験することだと思うけど、自分以外の場所で一体何が行われてるかは意外と知らないなって。受験する側、その親、採点する側……と、いろんな人間がいて、決して高校生だけのものではないんだなってことを思ったり、結局この世界は人間だらけというか、人間でできてるんだなっていうのは改めて思いましたね。で、その全ての登場人物の共通項ってなんだろう?と考えたときに浮かんだのが、「みんな自分なりの葛藤の中を生きてる」ってことだったんです。タイトルの「青い春」も、青春は若い世代のものだけじゃなく葛藤してること自体を指すなら、全ての人間に「青い春」という言葉も当てはまるんじゃないかって。
──なるほど。あとこの歌詞には「踊る」という言葉が多く出てきます。「人生」に対する述語が「踊る」って、なんだか運命に翻弄されてるイメージが湧きました。
清水 「踊る」って、いろんな意味があると思うんですよね。純粋にダンスをするという意味もあれば、「人に踊らされる」っていう表現もあるじゃないですか? ここで使った「踊る」と「踊らされてる」はつながっているもので、実は踊ってるつもりが踊らされてた……っていう感じですね。でも本人は気付いてなくて、それさえも人生というか。簡単に言ってしまうと、自分が思う「葛藤」とはこういうことなんじゃないかっていうのを歌詞に込めました。
──ドラマにはそこまで寄り添うわけでもなく?
清水 はい、そこまでは。もちろん世界観に合うものにはしてるんですけど。あとこの曲って、何話で聴くかによって全然聴こえ方が違うと思うんですよ。ドラマとリンクしてどんどん魅力的になっていく作品だと思うし、何回か聴いて「これってこういうことなんだ」って発見があるかもしれないし。でも多分、最終話のエンディングで流れるのが一番魅力的な状態だろうなっていうのは思っていて。それは自信を持って言えますね。
初日は必死にドアをバンバン叩いてるだけ
──メロディに関しては、一気に引き込まれるミステリアスなイントロ、そして全体のシリアスな空気感が印象的ですね。
清水 ありがとうございます。あのイントロは個人的にもすごくいいものができたなって。
──編曲は今回メンバー自身でやられたということで、シングルでは初のセルフプロデュースです。
清水 アレンジの時間は計3日間いただいて、スタジオに缶詰になろうってことで始めました。でもまず1日目、いろいろ考えたんですけど何も思い浮かばなくて「ダメだ、できない、帰る、寝る!」って言って俺は帰りました(笑)。
──あはははは(笑)。なんか前にもそういう話を聞いたような……。清水さんの調子が奮わなくて15分でスタジオを出たっていう。
清水 あー、ありましたね(笑)。俺、かなりのスロースターターみたいで、合宿とかに入っても大体1日目は「なんだこいつ、全然才能ねーな。終わったわ!」みたいに自分で思うんです(笑)。
──へえー。
清水 でも2日目くらいになると別人みたいに急に思い付くことがあって。だったら初日の前に何かウォーミングアップしとけよって話なんですけど(笑)、そうもいかないんですよね。初日はもう、必死にドアをバンバン叩いてるだけの状態です。
──ちなみに、それを他のメンバー2人はどう見ているんですか?
清水 フラットですね。「怒ってんなー」とか思いつつ、すごい平和に見守ってくれてると思います。
小島和也(B, Cho) まあ、決定的な被害は特にないのでね(笑)。
清水 ひとりで「ダメだ! ダメだ!」って言ってるだけですから(笑)。で、今回は結局2日目にイントロが出てきてそこから作り込んで、3日目にはブラッシュアップの段階までいって。すごい充実した3日間だったなと思います。
──3日間の落差は激しくても、最終的にはいい結果に落ち着いたんですね。
清水 そういうことになりますね(笑)。
栗原寿(Dr) スタジオに3人でいないから何もやってないってわけでもなくて、例えば依与吏さんが帰った後に2人でリズム練習したり、僕らにできる試行錯誤も重ねたりしてたんで。振り返ると、僕ら2人のそういう作業もあって今のこの曲の完成形にたどり着けたんじゃないかっていうのは思いますね。結果的には僕ら2人も自信をもっておすすめできる楽曲になってよかったです。
小島 セルフプロデュースもそうだし、合宿の3日間以外にもみんなで話すことがあったりして。全員で作った感がすごくあるシングルになりました。
- 3rdアルバム「blues」 / 2012年11月21日発売 / UNIVERSAL SIGMA
- 3rdアルバム「blues」 / 初回限定盤[CD+DVD] / 3990円 / UMCK-9565
- 3rdアルバム「blues」 /通常盤[CD] / 3059円 / UMCK-1434
CD収録曲
- 青い春
- 手の鳴る方へ
- わたがし
- エンディング
- 日曜日
- 平日のブルース
- 笑顔
- ささえる人の歌
- bird's sorrow
- 助演女優症
- 僕が今できることを
- 恋
初回限定盤DVD収録内容
- はなびら(MUSIC VIDEO)
- 花束(MUSIC VIDEO)
- 思い出せなくなるその日まで(MUSIC VIDEO)
- 恋(MUSIC VIDEO)
- 日曜日(MUSIC VIDEO)
- わたがし(MUSIC VIDEO)
- エンディング(MUSIC VIDEO)
- 青い春(MUSIC VIDEO)
収録曲
- 青い春
- 助演女優症
- 反省線急行自宅行き
- 青い春(instrumental)
- 助演女優症(instrumental)
- 反省線急行自宅行き(instrumental)
back number(ばっくなんばー)
2004年に清水依与吏(Vo, G)を中心に群馬で結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年に小島和也(B, Cho)と栗原寿(D)を加えた現在の編成となった。最初の音源は、2009年に発売されたミニアルバム「逃した魚」。大手レコード店で絶賛され、全国的に話題となる。2010年にはフルアルバム「あとのまつり」を発表し、美しいメロディに切ない歌詞を乗せるというバンドのスタイルを確立した。2011年4月にシングル「はなびら」でメジャーデビュー。2012年は初のワンマンツアー「恋は盲目ツアー2012」を敢行し、全公演大盛況にて幕を閉じる。5月にリリースしたシングル「日曜日」はHBC・TBS系ドラマ「スープカレー」の主題歌に起用された。11月7日には長澤まさみ主演のフジテレビ系ドラマ「高校入試」主題歌となったシングル「青い春」を、11月21日には3rdアルバム「blues」をリリースする。