メジャーデビューで迎えた分岐点、それぞれの覚悟
──5人はどのタイミングで2人の卒業報告を受けたんですか?
近藤 TDCのあとは、メンバー全員2週間くらいお休みをいただいていたんです。岸ちゃんは舞台の稽古があったり、みんな個人仕事はやりつつも、グループとしての活動はしばらくお休みしていて。その期間に、2人は運営さんと話し合ってたみたいです。私たちが聞いたのはその休み明けで。
宇咲 休み明けのミーティングで知りました。
水湊 私は普段から特にメルダと話す機会が多かったんですが、そもそも普段はあまり自分の意見を言う子じゃなくて。それなのに卒業について連絡をしてきたということは、きっと何か揺るがない思いがあって、メジャーデビューの前に抜けると決めたんだろうなという本人たちの意志を感じて。だったらメルダのこれからの道を応援するね、と伝えました。でもいつ頃辞めるという話は聞いていなかったから、ひさしぶりのミーティングのときに「5月24日が7人での最後のライブになる」と聞いて、初めて現実を受け止めたというか……。
──その点で考えると、やっぱりメジャーデビューというのは大きな節目ですよね。プロとして続けていくうえで相応の覚悟が必要だと思いますし。
水湊 7人でメジャーに行きたかったし、その先の夢や目標へもみんなで向かうんだと思ってた。だから当然引き止めたい気持ちはありましたけど、それぞれの人生がある。残った5人だって、アイドルとしても1人の人間としてもそれぞれ将来的に目標や夢があって、そしてそれを応援してくれる人たちの顔があって。そんなみんなのことを理解しているからこそ、「7人で続けたい」という気持ちだけで2人の将来を……邪魔するという言い方はあれですけど、こちらの気持ちだけで道を変えてもらうことはできないなと思った。それはもう中野サンプラザ公演の前に何度も何度も話し合ってたけど……たぶんまだ10代だったら違うと思うんですけどね(笑)。10代なら「またまた~。一緒にやろうよ!」って言えたと思うんですけど、うーん。
近藤 朱音ちゃんがアイドル大好きなのも知ってるし、メルダちゃんはメンバーと一緒に盛り上がるのが大好きで、たいていのことならなんでも「いいよいいよ」と聞いてくれるような優しい子だから、そんな2人が「辞めて次の道に進みたい」と言ったのは相当覚悟してのことだと思うんです。最初は全然受け止めきれなかったけど、本当に長く濃い時間を一緒に過ごしたからこそ、2人が本当に覚悟して決断したんだなとわかったから、寂しいけど2人の背中を押してあげることしか私たちにはできないのかなって。
“残された”5人と新メンバーオーディション
──グループを明るく支えていた2人が抜けた不安もあるでしょうし、進行中のオーディションで新メンバーが入ってくることには期待も不安もあるでしょうけど……。
岸 いやー、不安しかないです!
小鳥遊 不安しかないですね、今は。
岸 2人が自分の道を見つけて卒業することを選んだと考えると、私たち5人は「残された」とも言えるわけで。2人の卒業が発表されたあとすぐに宇咲の生誕ライブがあったんですけど、そのとき会いに来てくれたファンの皆さんも気持ちの整理がついてないかもしれないのに、普段通りに接してくれてるって思える場面がたくさんあって。そんなみんなに笑顔にしてもらえて助けられっぱなしでした。
近藤 もともと宇咲の生誕ライブの前に卒業発表される予定じゃなかったので……。
──5月24日のライブが2人の卒業公演になることが、チケット販売情報で漏洩するという珍しい事件がありました(笑)。宇咲さんの生誕ライブがその3日後というタイミングだっただけに、せっかくのお祝いの場がお通夜のようなことになるんじゃないかと心配していたのですが。
宇咲 私たちも「どんなテンションでライブに挑んだらいいんだろう」と不安でしたし、もちろんみんな思ってることや複雑な気持ちはあったと思うけど、私たちのためにみんないつも通りにライブを楽しんでくれたし、ライブのあとの特典会でも「バンビがどんな形になっても応援するよ」と声をかけてくださったりして。その言葉を聞いて、一部の人の言葉で残る私たちが責められてる気がしてたけど、すごく安心できたし、改めていつもありがとうという気持ちになりました。
──5人の結束が固まっているところに新メンバーを迎え入れるのは不安もあるでしょうけど、もともと5人だったバンビに宇咲さんと近藤さんが入ったことでグループがよりよい方向に変化したという“前例”があるわけで。
水湊 沙瑛と宇咲が入ってくるときも、初めはすごく反対してたんですよ。でも今となっては2人がいないのはあり得ないと思える存在になってる。それを考えると確かに。でも気持ちは半々ですね。このまま5人で#ババババンビだって気持ちもあるし……でも、沙瑛と宇咲のときみたいに、バンビを大切に思ってくれる人が入ってきてくれたら、また新しい道が開けるんじゃないかなとも思うし。5人から7人になったときのことを思うと、不安もあるけど期待も半分。
近藤 だから5人の中でも意見が違っていて。ここの2人(近藤と宇咲)は反対なんですよ(笑)。反対というか、受け入れられない。
宇咲 そうなんですよ。7人で作ってきたものが5人になって消えちゃうわけじゃないし、私たち5人だって1人ひとり強い思いがあるから、この5人でも絶対に突き進むし、がんばる姿を見ていてほしい。
小鳥遊 私個人の意見としては、5人から7人になる前も「今の5人がベストメンバーだ」と思っていたんですよ。「バランスがいいね」というのは元の5人のときから言われていたことで。そう言ってくださる方がたくさんいるのも知っていたので、沙瑛と宇咲が加入するという話だけ聞いたときは「どうして!?」みたいな気持ちがすごく強かった。でも「2人はもともとアイドル活動をしていた子で、なおかつ#ババババンビに入りたいという強い意志を持ってくれている。入ったらきっといい化学反応が起きて、すぐに5人と同じ熱量でやっていけると思うよ?」と説得されたんです。で、実際に入ってきたらホントに数日で馴染んで(笑)。
宇咲・近藤 あはははは。
小鳥遊 最初から7人だったかのように自然に新しい体制になれたんですけど……「今の7人がベストメンバーだ」と胸を張れるほどいいバランスだと思っていたので、あかねん(吉沢)とメルダが抜けると聞いたときは「崩れてしまう」と思いました。そしてそれならこのまま5人でがんばりたい気持ちもある。でも、オーディションをするということは「#ババババンビに入りたい!」と思う子の中からメンバーを選ばせていただけるわけじゃないですか。それは沙瑛と宇咲が入ってきたときと同じ状況でもあって。だから、いい期待を込めてオーディション開催には賛成しましたけど、かと言って新メンバーを絶対入れたいというわけではない。あかねんとメルダの代わりが欲しいわけではないんです。
水湊 そうね。運営さんの高いハードルを見てたら、オーディションをやったうえでね、もしかしたら全員落ちるかもしれない。私が今オーディションを受けても受かる気がしない(笑)。
近藤 該当者なし(笑)。
岸 うん。結果的に「5人がいいね」ってなるかもしれない。
小鳥遊 でも、前に5人から7人になったときのことは振り返れば本当にいい選択だったと思う。
水湊 ホントだよ。5人のバランスもよくて「今が最強なのに?」と思ってたのに。
小鳥遊 全然そんなことなかった……というとあれですけど(笑)、2人が入ってきてくれたことで得たものが本当に多い。
宇咲 今そう言ってもらえてすごくうれしいです……。
小鳥遊 オーディションをやった結果、もし「やっぱりこの5人だけでやっていこう」という結論になったら、そのときは「7人グループから取り残された5人」じゃなくて「今の5人こそがベスト」と思って活動できると思う。そう考えたからオーディションの開催には賛成しました。それに……今回のオーディションの前に、運営さんには「5人で120点の#ババババンビだと思えない限りは新メンバーは入れない」と言われていて。あべこべに聞こえるかもしれないですが、私たちもそれはなんだか納得してるんです。まずは私たちが5人で120%にならないと。
情報漏洩事件の裏側で
──そもそもオーディション開催についてはスタッフの一存ではなく、メンバーの意思確認もあったんですね。
水湊 はい。「やろうと思うんだけど、どう?」と言われて。ただ、やるとなったら本当に決まっていることも多くて時間がないのですぐに募集をかけないといけないんだけど、っていう話でした。そうじゃないと、7人で予定していたメジャーデビューやその他の活動もどんどん遅れていってしまうので。もし卒業後に新メンバーが入ることを考えるならその時間も必要だった。
小鳥遊 もちろんホントは2人が卒業して、オーディションを開催して……という手順を踏みたかったんですけど、そもそも卒業自体が時間の経過も含めとてもイレギュラーなものだったので。
──なるほど。2人の卒業が控えているのなら、なんで卒業公演を終えてからオーディションの発表をしなかったんだろう?と思っていたのですが、そういう事情が。その卒業発表も……。
近藤 思いもよらぬハプニングで発表されてしまって(笑)。
岸 いろんなことが重なりすぎちゃった(笑)。
──改めて説明すると、吉沢さんと池田さんの卒業が情報解禁される前にチケット販売サイトには「吉沢朱音・池田メルダ卒業公演」と記載があり、それにファンが先に気付いてしまい騒ぎになったことで、事務所サイドが急遽2人の卒業を発表することになった……というのが4月24日夜の顛末ですね。
宇咲 ちょうどあの日、集まってミーティングをしていたんですよ。どのタイミングで卒業を発表するかって。そしたら急にマネージャーさんが会議室を飛び出していって……。
近藤 隣の部屋で急に大人の人たちがバタバタし始めて(笑)。そこから私たちも大変で……あの日私、終電逃しました(笑)。
水湊 明け方まで事務所にいたよね(笑)。卒業がイレギュラーに決まったにもかかわらず、急遽卒業公演を組んだり、運営さんは精一杯いろんなことを対応してくださっていて。もちろん落ち度はあったと思うんですけど、世間では運営側のミスとして叩かれるじゃないですか。
──「チケット会社のせいにするな」「もっとしっかり管理できたはずだ」みたいな意見も多かったですね。
近藤 朱音ちゃんとメルダの気持ちを考えたら私もあり得ないなとは思うし、ホントにごめんなさい!って感じでしたけど……。
岸 ホントにごめんなさいとしか言えないですね。
水湊 イレギュラーや無理難題を一手に引き受けて#ババババンビを運営しながら、卒業する2人の希望する時期とか、続いていく私たち5人のためにも裏で運営さんたちが駆け回っている姿を私たちは見ているので、本当に心が痛くて。できるなら個人的にマッサージ券とかあげたい(笑)。