2023年4月8日、#ババババンビは結成以来最大規模のワンマンライブとなった東京・TOKYO DOME CITY HALLのステージ上で、キングレコードからのメジャーデビューが決定したことを満員の観客に向けて報告した(参照:#ババババンビ、東京初の声出しライブは満員のTDCホール!メジャーデビュー決定に贈られた大歓声)。グループ始動と同時に世界を襲った新型コロナウイルス感染拡大の影響をモロに受けながら、地道にアイドルシーンでの存在感を高めてきた彼女たち。結成4年目を迎えた晴れの舞台でメジャー行きを発表し、すべてが順風満帆と思われた彼女たちだったが、オリジナルメンバーであった池田メルダ、吉沢朱音の2人が突然グループ卒業を発表。メジャーデビューを前に、大きな変化の季節が訪れた。
岸みゆ、水湊みお、小鳥遊るい、宇咲、近藤沙瑛子の5人は、この変化をどう捉えているのか。6月上旬、これからの活動に向けて準備を進める彼女たちに話を聞いた。約90分、1万5000字超え。たっぷりと語られた5人の言葉を余すところなくお届けする。
取材・文・撮影 / 臼杵成晃
準備万端で挑んだTDCホール
──少し時間が経ってしまいましたが、4月8日のTOKYO DOME CITY HALL公演から振り返らせてください。結成3周年を迎えたタイミング、結成以来初めて観客の発声が可能になったツアーの千秋楽というライブでしたが、何より、これまで観たバンビのライブの中でも頭抜けていいステージだったなと。
#ババババンビ ありがとうございます!
──今までだと「きっとこのへんは反省点だろうな」と感じる部分が見えたり、あとになってメンバーから悔やむような声が出てきたりしましたが、今回は皆さんの自己採点も高いライブだったのではないでしょうか。
岸みゆ 実際に私たちもそう感じています。あのライブは「まずは自分たちが楽しむのが第一」と構成を考えたし、初めての東京での声出し解禁のワンマンということもあって、私たちの「楽しい!」という気持ちが前面に出ていて、みんなにもそれが伝わったのかなって。
小鳥遊るい TDCホールは私たちにとって過去最大の会場ということもあって、このライブに向けて7人でしっかり話し合って……私たちは月に平均10本以上ライブに出させていただいているんですけど、TDC前の1カ月はイベント出演を少し抑えたんです。ワンマンはいろんな人に来てほしいから、アピールするのに大事なイベントに出ないのは正直不安だったんですけど、それよりも来てくださる方に最高のバンビを見せるためにレッスンに時間を割きたかったので。しっかり準備ができていた分、過去の大きなライブよりも心の余裕があったのはよかったです。
宇咲 TDCの次に大きかった中野サンプラザのときと比べると(2022年10月21日の公演「バンビの野望」。参照:#ババババンビ、満員の中野サンプラザで過去最大のバカ騒ぎ!初のホール公演を笑顔で完走)、心に余裕があったから「もっとこうしたい」「こうしたほうが喜んでもらえるかも」というアイデアも出てきたし、本番もみんなの顔を見ながらしっかり楽しんでライブができました。
水湊みお ステージの演出をしてくださった日下このみ先生(ex. NMB48。現在はダンサー・振付師として活動し、現役アイドルの振付やステージングに携わっている)は、私たちの今のレベルに合わせて「できる範囲で」と試行錯誤してくださって。次にもっと大きいライブをやるときは、もっともっとレベルアップして、できることを増やして臨みたいなと思いました。
近藤沙瑛子 うん。ステージがどんどん大きくなっているのを実感すると同時に、それに見合ったスキルもこれから上げていかないといけない。「バンビは大きいステージも似合うね」と言ってもらえるように、技術やパワーの部分でもっともっとレベルアップしていかなきゃいけないな、と感じました。とは言っても、ライブは本当に楽しかったし、みんなとも一体になれた気がして、いいワンマンができたなという実感はあります。やっぱり時間をたっぷりかけて準備できたのが大きかったと思う。
──逆に言うと、今までの大勝負では時間の余裕がなさすぎたということですよね(笑)。
近藤 なかったです(笑)。私たちが慣れてきたというのも少しはあると思うけど……。
水湊 バンビは運営さんも何もかもわからないところから始めたから、そういうペースも全然わからなかったんです。だから中野サンプラザが終わったときは謝られました(笑)。ホントはもっとしっかり時間を取らなくちゃいけないところがあったのを「自分たちもわからなかった」って。「それなのにこんなにいいステージにしてくれてありがとう」って逆に感謝されました。
岸 キャハハハハ!
近藤 今回は初めて、前日のゲネリハのために千葉県のホールを貸し切っていただいて。普段は大きめのスタジオで可能な範囲で、という感じだったので、本番でうまく距離感がつかめなかったりしたんですけど、今回はしっかり本番をイメージした状態でリハーサルできました。
──#ババババンビというグループについて考えるとき、この話はすごく重要だと思っていて。#ババババンビの成長物語は、音楽に関するノウハウを持っていなかったゼロイチファミリアの運営陣の成長物語でもあると思うんですね。
水湊 確かに(笑)。
──ももいろクローバーを立ち上げたかつてのスターダストプロモーションも似たような感じでしたけど、ノウハウがないまま突き進んでいるような面白さもある。音楽レーベルやアーティストを多く抱える事務所と比べれば不利な立場にあるとは思いますけど、ノウハウを持たないがゆえの面白さ、コク深さが#ババババンビの魅力になっていると思います。なので、TDCホールで行われたキングレコードからのメジャーデビュー発表には大きな驚きがありました。
水湊 メジャーデビューは本当にうれしいです。ただ、メジャーデビューしてしまったら「今までのバンビとは変わってしまうんじゃないか?」と心配させてしまうかもしれないなと思ったり。発表するときは、この変化をみんながどう捉えるんだろう?という不安もありました。でも、発表後のみんなの第一声が「おめでとう!」だったのがうれしくて……とにかくただ私たちと一緒に喜んでくれたのが本当にうれしかった。みんなそれで泣いてたよね(笑)。
小鳥遊 うん(笑)。みんなの声がうれしかったし、ホッとした気持ちもありました。ただ実際にスケジュールが埋まり始めると、今までしたことのないリリイベで全国を回れたり、むしろ今までより気軽に会えたりライブを観てもらえる機会が増えるってことに気付きました。
岸 そうそう(笑)。知らないことだらけだから私たちも勘違いしてた。
メジャーデビューのサプライズ
宇咲 最初に運営さんからメジャーデビューを聞かされたときもうれしかったんですけど、いざみんなの前で私たちの口から伝えたことで、より強くメジャーデビューを実感して、涙が出てきちゃいました。発表後、会う人会う人に「メジャーデビューおめでとう!」と言ってもらえるし、みんながこんなにお祝いしてくれることなんだなと改めて実感しました。
小鳥遊 もともと「#ババババンビはメジャーに行かず、ずっと#HASHTAG RECORD(ゼロイチファミリアの自社レーベル)で育てていくグループとして考えている」と運営さんには言われていたんです。私たちとしてはメジャーにちょっと憧れもあったし、話題に挙がることはあったんですよ。今はインディーズで大規模な活動をされているアーティストもたくさんいらっしゃるし、私たちもインディーズのままかなと思っていたので、最初にメジャーデビューすると聞いたときは「まさか!」という気持ちが強かったですね。
水湊 最初にキングレコードさんにご挨拶に行ったとき、本当にたくさんのスタッフさんに「これからよろしくお願いします」と言っていただいて。うれしさと同時に気が引き締まりました。「もっとがんばらなきゃ」という責任感もより強く芽生えましたね。「僕はCD制作の担当です」とか「私はSNS担当です」とか……今までは全部マネージャーさんが1人でやってくれてたことを、こんなにたくさんの人が!?って(笑)。
岸 初めて聞いた言葉もいっぱい出てきた(笑)。
宇咲 「リリースイベントのときは僕が担当します」とか……。
近藤 「えっ、いつも違うんですか?」みたいな(笑)。
小鳥遊 「やったー!」というよりは「わ、こんなにたくさん関わってくださるんだからちゃんとしないと……」ってちょっとビビっちゃいました(笑)。
岸 あの日、何があるのか知らずに連れて行かれて、私たちはサプライズで知ったんですよ。ロケか何かがあるのかと思ったら、着いたところがキングレコードさんで。
小鳥遊 映像で観たら私たち、ちょっと緊張しとったもんなあ(笑)。
──あのTDCホールで流れたメジャーデビュー発表の映像ですね。
水湊 私と岸みゆはその日別でレッスンがあって、行き先の住所だけ渡されてたんですよ。
近藤 大荷物抱えて来たよね(笑)。
池田メルダ、吉沢朱音の卒業……波乱の4年目
──大一番を終え、メジャーデビューも決まり、素晴らしい4年目の始まり……と思った矢先、新メンバーオーディションの開催が発表され(参照:メジャー決定の#ババババンビ、さらなる飛躍に向けて新メンバー募集)、さらにはその翌日に池田メルダさんと吉沢朱音さんの卒業が発表されました。いろいろ思うところはありますが、今日の5人を見てまず思ったのが「平均身長がグッと下がったな」という。
水湊 そうなんですよ!
宇咲 宣材写真の撮影をしたとき、急にガン!と下がったなって。
水湊 私だけめっちゃデカい(笑)。
小鳥遊 みおちもそんなめちゃめちゃ高いわけじゃないのにね(笑)。
宇咲 (岸、小鳥遊、近藤を指して)ちっちゃいのが3人、(自分を指して)普通めのちっちゃいのが1人で、(水湊を指して)おっきい!みたいな(笑)。
──人数以上にパッと見の印象が変わりました(笑)。2人の卒業について話すのは難しいと思いますが……。
岸 今日はとっても難しいなと思いながら来ました(笑)。
──メジャーデビュー発表のときも一緒に喜んでいたのに、という。
水湊 私たちが卒業の話を聞いたのも、TDCのあとなんですよ。
──では2人から事前に相談されることもなく?
水湊 うーん、相談というか本人が決めたあとの報告というか。
小鳥遊 メンバー間で「卒業」という話が出てきたことは今までにもあって。中野サンプラザのライブで流したムービーにもちょっとそういう場面があったし、あのときはお客さんにも衝撃を与えてしまったかなと思うんですけど……最終的に「やっぱり7人がいいよね」という話に落ち着いて。中野サンプラザはむしろ「もう一生、この7人で生きていこうね」と決意を固めるようなライブになったし、そう思ったからこそああやってドキュメンタリーとして「辞めるかもしれない」という事実があった。だけど「ここからも7人で行くよ」ってメンバーも事務所も意思を固められたからこそ表に出したんです。
岸 グラついたままだったら出せない映像でした(笑)。決意は固かったよね。
近藤 だからこそ、本当に2人が辞めるとは思わんかった。
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メジャーデビューで迎えた分岐点、それぞれの覚悟