音楽ナタリー Power Push - Azumi

盟友と築き上げたキャリア16年の1stオリジナルアルバム

「Only Holy Story」はかけがえのないもの

──「Crazy Days feat. ILMARI(RIP SLYME)」にゲスト参加したILMARIさんも、Azumiさんのターニングポイントの1つを共有した人ではないでしょうか。

そうですね。この曲は社長(SOIL & "PIMP" SESSIONS)がプロデュースしてくれたジャジーでアッパーな曲なんですけど、男女のずっとすれ違う平行線の恋愛劇みたいなことを表現したいと思って。そこでILMARIくんの色気のある声で歌ってほしいなと思ってお願いしました。

──ILMARIさん自身も「普段とは全然違うアプローチで作ってみました」とコメントされてましたが、RIP SLYMEのメンバーと絡むときとは少し違う、繊細な女性ボーカルとコラボするとき特有のアンニュイな彼のラップを聴くことができてうれしいです。

あ、うれしいそれー! そうそう(笑)。ILMARIくんもあんまりこういうジャズのトラックでやってないだろうから、面白い組み合わせだなと思って。

──この1、2曲目の並びはやっぱりSteady&Co.を思い出しますね。

なんでSHIGEO(スケボーキング)いないのーって(笑)。

──そんな機会に伺いたいんですが、Azumiさんは“Steady&Co.の「Only Holy Story」のボーカル”としても世に知られています。あの曲って今のAzumiさんの中でどんな存在なのでしょうか?

Azumi

Wyolicaと同等に大切ですね。あの曲で私の歌声を知ってくださった方もすごく多いし、かけがえのないもの。単純に声で支持してくれてるわけだから、それはボーカリストとしてたまらなくうれしいんですよ。先ほど言ったターニングポイントっていうのはもちろん「Only Holy Story」も1つです。昔を懐かしむみたいな感じにはなりたくないんですけど、どうしてもあれは私の歴史上なくすことは絶対にできないものですね。一緒にやった4人(降谷建志、BOTS、ILMARI、SHIGEO)とは今でも仲がいいし、同じ時代にずっと音楽をやっているかけがえのない仲間だなと思います。

──KjさんやILMARIさんとのレコーディング現場では思い出話が出たりも……。

しないしない!(笑) たまーに「あのときSHIGEOくん怖かったんだけど」とかはするけど、SHIGEOに(笑)。基本は今のバカ話しかしないですよ。このへんのメンツはみんな一貫してます。「あの頃はよかった」って思わない人たち。

2曲参加の韻シスト、松本圭司

──それから「I want it feat. 韻シスト」「もっともっと」に関わっている韻シストは、先ほどおっしゃったAzumiさんの原点である90年代後半のブラックミュージックを今カッコいい形で体現してるバンドだと思うんですが。

まさに。ミュージシャン界隈で韻シスト、韻シスト、韻シスト……ってザワザワしてるんですよ。これは今一緒にやりたいなと思って。リクエストも、90年代後半の頃のヒップホップ。「Speechがミニー・リパートンと一緒にやっちゃったみたいな曲作ってください」と言って上がってきた2曲ですね。

──Taku(G)さん作曲ナンバーとShyou(B)さん作曲ナンバーの2曲を入れるというのは、最初から想定していたんですか?

そうなんです。スイートでメロウなR&Bと、アコギを使ったちょっと昔のアーシーなヒップホップをやりたいっていう気持ちがあったので。韻シストはどっちにも振れるバンドだし、どっちか決められないから2曲っていう。

──韻シストは今作のリリース記念ライブに参加することも決定しているので、生で観られるんですね。

一緒にやるのが楽しみでしょうがないですね。昔はラッパーの人たちと絡むことも多かったんですけど、ソロになってからはないので。私のB-GIRLの血が騒ぎます(笑)。

──かと思えば、松本圭司さんと共同プロデュースした「一日の終わりは君と一緒に」「RED STAR」のようなピアノでシンプルにしっとりと聴かせる曲もあって。

圭司くんとの曲は、詞とメロディを私が作って、それに対するアレンジやコードの肉付けの部分を彼にやってもらいました。圭司くんはピアニストとして超絶テクニシャンなんですけど、今回の曲に関しては「Azumiちゃんの歌と詞とメロディを普遍的に残せるように僕はアレンジしたいと思ってます」って、弾きすぎてない、ちゃんと私の歌を主張する弾き方をしてくれてて素晴らしいんですよ。

──松本さんとは2011年発売のアルバム「ぴあのとあずみ」でも共演されてますが、彼の弾くピアノにはどういう魅力があると思いますか?

昔は純粋にテクニシャンだったんですけど、ここにきて色気を感じるピアノになってきて、1音の重みや深みが私には歌ってて伝わってきます。あと、私がわがまま言えるっていうのも大きいです(笑)。

ギタリストと一緒にやるのは私なりに緊張する

──そして、orange pekoeの藤本一馬さんがプロデュースした「ハートストリングス」でアルバムが締めくくられます。この曲は、穏やかで切ないAzumiさんの詞の魅力がよく表れてるなという印象を受けました。

私、「ハートストリングス」(琴線)という言葉をいつか使おうと思ってずーっと持っていたんです。それで一馬くんの曲が上がってきたとき、「君がいなければ 僕の胸の弦も鳴らない」っていうBメロの歌詞がすぐ浮かんだんですね。それを発端に、この曲にハートストリングスってタイトルを付けようと思って書いていきました。

──軽やかでピースフルなアコギのサウンドに関しては?

Wyolica解散以降ギターと絡んでいなかったので、ギタリストと一緒にやるっていうのは私なりにも緊張するんです。一馬くんはブラジル音楽のようなギターの鳴らし方をされる方なので、orange pekoeみたいなスウィング感も含めて、このアルバムに要素として欲しいなと思いました。

──この曲がお尻にあることで作品にまた新しい色が加わってますし、アルバムを通して1つの円を描いてきてキュッと閉じたような感覚もありました。

そうなんですよ。アルバムってループしてほしいので。私のアルバム作りの法則で、締めすぎて終わってしまったらダメっていうのはあります。Wyolicaの1stアルバム「who said "La La..."?」もたぶん最後の曲はそういうふうに作っていましたね。

1stオリジナルアルバム「CARNIVAL」2015年12月2日発売 / Warner Music Japan / 3024円 / WPCL-12246
「CARNIVAL」
収録曲
  1. Carnival(Produced by Kj[Dragon Ash])
  2. Crazy Days feat. ILMARI(RIP SLYME)(Produced by 社長[SOIL & "PIMP" SESSIONS])
  3. I want it feat. 韻シスト(Produced by 韻シスト)
  4. Rainy Days(Produced by DJ JIN[RHYMESTER])
  5. 一日の終わりは君と一緒に(Produced by Azumi & 松本圭司)
  6. 私という名の場所へ(Produced by 大江千里)
  7. もっともっと(Produced by 韻シスト)
  8. REPEAT 1%(Produced by 川口大輔)
  9. RED STAR(Produced by Azumi & 松本圭司)
  10. ハートストリングス(Produced by 藤本一馬[orange pekoe])
Azumi 1st Album Release Live「CARNIVAL!!」
  • 2016年2月13日(土)大阪府 Shangri-La
  • 2016年2月26日(金)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE

<一般販売チケット受付>
販売期間:2015年12月12日(土)10:00~2016年2月9日(火)18:00
料金:4320円(ドリンク別)

Azumi(アズミ)
Azumi

シンガーソングライター。1999年、Wyolicaのボーカルとして大沢伸一プロデュースでデビュー。優しく透明感のある歌声と穏やかで切ない歌詞、メロディを武器に、ソロとしてDragon Ash、Steady&Co.、スネオヘアー、SOFFet、MOOMINなど、さまざまなアーティストの楽曲のフィーチャリングボーカルとして起用される。2011年にソロ活動再開、DJ活動開始。9月には親交の深いピアニストを招き1stソロアルバム「ぴあのとあずみ」を、2013年4月にはカバーアルバム「NEW STANDARD」をリリースする。2013年5月、Wyolicaが解散。2015年12月にこれまでの集大成としてソロオリジナルアルバム「CARNIVAL」を発表した。また、2012年に設立したヘアアクセサリーブランド「Tuno by Azumi」のデザイナーを務め、映画「函館珈琲」にヒロイン役で出演を果たすなど、アーティスト活動のほかにも幅広く活躍中。