Ayumu Imazu「Pixel」インタビュー|1stアルバムに詰め込んだニューヨークでの経験とクールな音

Ayumu Imazuが1stアルバム「Pixel」を8月10日にリリースした。

6歳でダンスを始め、14歳より約3年半、ダンスやボーカルなどを学ぶためにアメリカ・ニューヨークに留学したAyumu Imazu。作詞作曲に加えて、ダンスのコレオグラフまで自ら行う彼は、2021年に「東京2020オリンピック・パラリンピック」の成功を目指す「チーム コカ・コーラ」の公式ソングプロジェクトに参加し、同年8月にデジタルシングル「Juice」でメジャーデビュー。2022年3月リリースの配信シングル「破片」は、全国26のラジオ局でパワープレイに決定した。さらに同年5月リリースの配信シングル「Tangerine」は、Spotify内で13のプレイリストに使用されており、TikTokにはこの曲の音源を使用したダンス動画が多く投稿されている。

1stアルバムには「Juice」「破片」「Tangerine」といった既発曲に、リード曲「Over You」や「薔薇色の夜」などの新曲6曲を加えた全11曲を収録。ダンスミュージック、R&B、バラードなど多岐にわたるテイストの楽曲それぞれが、Ayumu Imazuの才能を表す“ピクセル”として結集したような作品になっている。

音楽ナタリーではアルバム発売に際してAyumu Imazuにインタビュー。これまでの歩みを振り返ってもらいながら、1stアルバムに注いだこだわりについて聞いた。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 山口真由子

アーティストを志したきっかけはブルーノ・マーズ

──Ayumuさんは6歳からダンスを始められたそうですね。

はい。お母さんに地元のダンススタジオに連れて行かれたのがきっかけです。ほかにもサッカーの体験レッスンを受けたこともあったんですけど、ダンスだけが得意だったというか。自分としてナチュラルに向き合えたので、そのまま続けたんです。発表会で大人数で踊ることもあったんですけど、そういうときは自分の負けず嫌いな部分が思い切り出ていまして(笑)。がんばってセンターを勝ち取ることに楽しさを感じたりしていました。

──その時点でダンサーになりたいという将来の夢があったんですか?

始めた当初はなかったです。でも、徐々にダンスが上達するにつれてダンサーを目指したいと思い、そこからだんだんアーティストになりたいという夢に変化していった感じでした。

Ayumu Imazu

──ダンサーからアーティストを目指すようになったきっかけはあったんですか?

ダンスと並行して歌のレッスンも受け始めたんです。そこからいろいろなアーティストの楽曲を聴くようになって。決定打になったのは13歳のときに観たブルーノ・マーズのパフォーマンスでした。「スーパーボウル」(2014年にアメリカで開催されたアメリカンフットボールの大会「第48回スーパーボウル」)のハーフタイムショーのパフォーマンスを観て、「こういう人になりたい!」と強く思うようになりました。

──どんなところに惹かれたんでしょう?

ブルーノの音楽を楽しんでる姿にめちゃくちゃ惹かれたんです。ドラムを演奏しながら登場して、ソロで歌も歌い、途中にはダンスブレイクもあったりして。自分が目指したいのはこういうアーティストだなと思いました。

──子供時代はどんな音楽を聴いていましたか?

ダンスをやっていたこともあって、洋楽のダンスミュージックばかり聴いていました。特にニュージャックスウィングの曲を。踊りやすさがあったからよく聴いていたんですけど、後々それが昔流行ったスタイルだということを知って。僕にとっては新鮮さもあったし、純粋にカッコいいなと思っていました。邦楽ではRADWIMPSさんが好きです。あと留学中にはコブクロさん、back numberさんとか、いわゆるJ-POPを代表する曲もたくさん聴いていました。

Ayumu Imazu

ニューヨークで学んだ自分自身との向き合い方

──今おっしゃったように、14歳からニューヨークに留学もされていたんですよね。その年齢で海外に行くことに怖さはなかったですか?

振り返ると14歳という若さだったからできたんだろうなと思います。いい意味で何も考えてなかったので、怖さよりは楽しみしかなかったです。英語力もほぼゼロの状態でしたが、思い切りました。

──向こうではどんな生活をされていたんですか?

普通に学校へ通いながら、放課後にダンスやボーカルのトレーニングを受けていました。ダンスに関しては、音楽と一緒に踊る楽しさを改めて教えてもらった気がします。ボーカル面では、スキルを上げる大事さに加えて、感情をどう声色にリンクさせるかをしっかり教えてもらいました。技術面だけじゃなく、いかに自分自身と向き合うかという部分まで学ばせてくれたのはニューヨークならではかなと思います。そういうレッスンを重ねる中で、もっと自分なりの表現がしたいと思うようになり、そこから作詞作曲を始めるようにもなったんです。

──シンガーソングライターとしても動き始めたわけですね。

まずアコギを、そのあとに電子ピアノを買って作曲を始めました。ピアノはほぼ触ったことがなかったので、すべて独学。試行錯誤しながらがんばりました。

──そこでも負けず嫌いな性格が発動して。

あははは、そうですね(笑)。幼い頃から自分の中に“努力”という言葉が大事なものとしてずっとあるんです。だから楽器を練習するにしても、自然と集中して向き合うことができて。結果、アコギもピアノもわりとすぐ弾けるようにはなりました。ただ、作詞作曲はかなり難しくて、大きな壁にぶち当たった感じがありました。ダンスや歌は技術さえ磨けばある程度形にはなるんですけど、曲作りだとそうはいかないんですよ。自分の感情をきちんと理解し、それを発信できるようになるまでにけっこう時間がかかりました。自分と向き合うというのは、曲を作るうえで今も大事にしている部分です。

Ayumu Imazu

──ニューヨークでは路上ライブをされたり、アポロシアターで歌ったこともあるそうですね。

路上ライブは1人でよくやってました。エド・シーランとかブルーノ・マーズ、マイケル・ジャクソンのカバーをやったりして。基本はギターの弾き語り。ワーッと人が集まって、みたいなことはなかったですけど(笑)、人前でパフォーマンスするという意味では鍛えられたと思います。アポロシアターに関しては、留学して1年が経った頃に、それまでに学んだことを何か形として示したいなと思って挑戦しました。12時間くらい並んで、アカペラでブルーノ・マーズの「When I Was Your Man」を歌ったら30秒で合格して(笑)。日本人でも知っているアポロシアターという場所で、向こうの人たちを相手にパフォーマンスできたことは、自分にとってすごく大きな自信につながったと思います。

──ニューヨークには3年半滞在したそうですが、その間にオリジナル曲も作っていたんですか?

いや、全然ですよ。できたとしても今じゃ聴きたくないようなクオリティのものばかりでした(笑)。基本はずっとギターの弾き語りで曲を作っていたんですけど、留学が終わるくらいのタイミングで打ち込みでの曲作りも始めるようになって。そこらへんからはダンスミュージックのトラックを作るようになったという変化はありました。

──楽曲制作の手法が変われば、生まれる曲にも変化が表れそうですよね。

そうですね。ニューヨークに行ってからは意識的にR&Bを聴くようにしていたし、その流れでヒップホップにも触れていたんです。そのあたりが自分が作る楽曲に影響を与えたところもあったと思います。

Ayumu Imazu

Ayumu Imazuはダンスだけじゃないんだぞ

──留学を終え、日本に戻ってからはソロ活動を本格的に始動させた感じですよね。

日本に帰ってきてからはレッスンを受けながら、意外とゆっくり生活していたんですけど、「このままじゃダメだ!」と思い、1年後くらいから本格的に動き始めた感じでしたね。自分で曲作りもどんどんしたし、いろいろな縁でつながったプロデューサーの方たちとセッションやコライトをするという初めての経験もしました。そうしてできたのが最初に出したEP「Epiphany」です。

──ソロとして動き始めた段階で、ご自身のやっていくべき音楽性に関して見定めていたものはありましたか?

最初の頃は超試行錯誤しながらの活動だったので、どういったサウンドでやっていきたいか考えられていなくて。とにかく自分がカッコいいと思う、自分が好きな曲を作ることに集中していた感じですね。ただ、例えば初期から一緒に制作をしてくれている今井(了介)さんとの作業をはじめ、制作はとにかく楽しくて。その中で、今まで自分が経験してきたものを改めて引き出してもらえているなと思います。

──Ayumuさんの音楽性はものすごく広いですよね。ガッツリ踊るダンスミュージックを大きな強みとしながらも、そこに縛られることなく、歌をしっかり聴かせるJ-POP的なバラードがあったりもする。そこはご自身が吸収してきたさまざまな音楽のエッセンスが影響しているんでしょうね。

そうですね。僕の作詞作曲のスタートは弾き語りなので、今回のアルバムで言えば「破片」や「薔薇色の夜」のような歌を聴かせる曲を作るのも好きなんです。Ayumu Imazuはダンスだけじゃないんだぞというところは、今後も見せてきたいところではあります。

──2021年にはデジタルシングル「Juice」でメジャーデビューを果たしました。そこから約1年が経ちましたが、その間を振り返るといかがですか?

この1年は本当にいろんな方向性かつ、狙いを持った曲を制作することができていて。そのうえで、今年5月にリリースした「Tangerine」にたどり着けたのが自分としてはすごく大きなことです。「Tangerine」では歌詞やメロディ、ダンスに至るまで自分がカッコいいと思うことを妥協なく詰め込み、ある意味、自分のルーツを改めて見せることができたと思っています。で、それが今までで一番評判がよかったりもするのが自分としてはすごくうれしくて。