音楽ナタリー PowerPush - 剛力彩芽
いしわたり淳治による“大事な人三部作”で描かれた本心
剛力彩芽が4月8日に1stフルアルバム「剛力彩芽」をリリース。これを記念してナタリーでは剛力と作詞家 / プロデューサーのいしわたり淳治との対談を実施した。
いしわたりは剛力のシングル「友達より大事な人」「あなたの100の嫌いなところ」「くやしいけど大事な人」、さらにアルバムの収録曲「ワガママは大事な人」の作詞を担当。“大事な人に自分の気持ちを伝える歌”を届けようとするアーティスト・剛力彩芽のスタイル形成には彼の歌詞が大きく影響を与えている。対談では “大事な人三部作”の制作エピソードなどを通じて、剛力のアーティスト像やいしわたりの作詞に対するスタンスが明かされていった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 笹森健一
「友情」という揺るがないテーマ
──お2人が最初に会ったのはいつですか?
いしわたり淳治 雑誌の対談かな?
剛力彩芽 その前に「閃光ライオット」でお会いしてますね、一瞬だけ。
いしわたり あ、そうだ。剛力さんが「ジャーン」ってギターを弾いたところを見ました。
剛力 私は“応援ガール”として参加した回ですね。緊張しすぎて、ギターを弾いたら右手をケガしちゃったときの。会場でご挨拶もさせていただきましたよね。
いしわたり 「友達より大事な人」(2013年7月リリースの1stシングル)が出た直後でしたね。「その節はどうも」みたいな感じで。
──それまでは歌詞だけでつながっていた、と。「友達より大事な人」の歌詞はどのようなオーダーがきたんですか?
いしわたり 「友達、友情をテーマにした歌詞がいい」という話をもらって。「じゃあこういうのはどうですか?」ってやりとりしながら進めていった感じでしたね。
──最初から「友達」というテーマがあったんですね。
いしわたり そこだけは揺るがないテーマでした。
剛力 そうですね。友情を含めて、大切な人に感謝を伝えられる曲がいいなって。普段は恥ずかしくて、面と向かって“ありがとう”って言いづらいじゃないですか。
いしわたり 確かに。
剛力 だからこそ、ちゃんと大事な人に自分の気持ちを伝えられる曲にしたかったんですよね。聴いた人が大事な人を思い浮かべられるような曲になったらいいなって。
テレビの中の剛力彩芽
──「友達より大事な人」をリリースした時点ですでに剛力さんは女優として活躍されていたわけですが、そのイメージも含めた作詞だったんですか?
いしわたり もちろん。最終的に歌詞が口から出たときに、ちゃんと説得力があることが大事だと思うので。まず、剛力さんが出演しているテレビ番組をたくさん観ました(笑)。根がテレビっ子だから、全然苦じゃなかったですね。
──普段からよくテレビを観ているんですね。
いしわたり テレビって、わからないことは言わないんですよ。情報番組をはじめ、必ず視聴者全員が理解できるように伝えるのがテレビの仕事なので。その伝える技術はすごいと思うんですよね。
剛力 なるほど。視点が全然違いますねー。
いしわたり やっぱりテレビは時代を映すものだし、流行語もテレビから生まれるので。テレビを観ることが世の中の定点観測になるというか……。偉そうに言ってますけど、ただテレビを観てるだけです(笑)。
──テレビの中の剛力さんはどんなイメージでした?
いしわたり 表と裏がないのがありありとわかりました。友達にもまっすぐに「ありがとう」って言ってる感じがすごく伝わってきましたね。だからこそ、「友達より大事な人」では、あえて冒頭の「ねえ 君はもう 友達じゃない」の一行だけ剛力さんが絶対に言いそうにない言葉にしたんです。その違和感から入って、剛力さんらしいメッセージに着地するのが一番いいだろうな、と。
──その直後に「友達より 大切な人」というフレーズがあって。歌い出しの2行が最大のフックになっているわけですね。
剛力 最初に歌詞をいただいたときも、まず素直にびっくりしましたね。「もう友達じゃない」なんて言っていいの?って。で、続きを読んだら、「友達より 大事な人」という歌詞があって、「すごくわかる!」って。
──この部分のインパクトは、そのまま剛力さんの素直さを引き立たせる要素になったと感じました。
剛力 そうですね。アーティストとしてデビューすること自体もたくさんの方に喜んでいただけたし、曲のインパクトもすごくあって。さらにダンスも踊らせていただいて、自分が好きなダンスと歌を2つ同時にやらせてもらえた感じですね。すごくうれしかったです。
作詞家としてつかんだ達成感
──「友達より大事な人」が完成したときのいしわたりさんの印象は?
いしわたり 「いい曲できた!」と思いました。
剛力 よかったー。
いしわたり すごくうれしいこともあったんですよ。リリース後しばらくした頃なんですけど、スタジオからの帰りに酔っぱらった2人組の女の人が前から歩いてきて。1人が「もう友達じゃない!」って早歩きして一緒にいた友人から離れ始めたんです。そしたらもう1人が楽しそうに「友達より大事な人」のサビを歌いながら追いかけていって。その光景を見たときは「やった!」と思いました。
剛力 すごい!
いしわたり そうやって友達同士でじゃれてる感じも、まさにこの曲の雰囲気で。「こういうふうに誰かの生活のBGMになるのは素晴らしいな」って思ったんですよね。人生で一番くらいにうれしかったかもしれないです。
剛力 この曲、ライブでも一番盛り上がるんですよ。ファンの方からの手紙にも「剛ちゃんは友達より大切な人だよ」って書いてくれてたり。
いしわたり 作家冥利に尽きますね。
剛力 「大事な人」というワードができたことで、スタッフの皆さんと「いろんな大事な人がいるよね」っていう話題にもなって。「友達より大事な人」は友達に向けて歌ってるけど、ほかの大事な人に向けた歌もやってみたいね、とか。
──それが“大事な人三部作”につながったと。
剛力 はい。
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- 1stアルバム「剛力彩芽」 / 2015年4月8日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤A [CD+DVD] / 3700円 / SRCL-8771~2
- 初回限定盤B [CD] / 3200円 / SRCL-8773
- 通常盤 [CD] / 3200円 / SRCL-8774
CD収録曲(共通仕様)
- 友達より大事な人
- くやしいけど大事な人
- ワガママは大事な人
- ナナイロ7days
- Tic-Tac
- ひとつだけ
- GO! GIRLS!! GO!
- キミイロ
- アサガオ
- Rainbow
- あなたの100の嫌いなところ
初回限定盤A DVD収録内容
- “友達より大事な人”Music Video
- “あなたの100の嫌いなところ”Music Video
- “くやしいけど大事な人”Music Video
- “ワガママは大事な人”Music Video
- “剛力彩芽”Off Shot Movie
剛力彩芽(ゴウリキアヤメ)
1992年8月27日生まれ、神奈川県出身の女優、歌手。多数のドラマ、映画、CMで活躍し、現在はフジテレビ系「奇跡体験!アンビリバボー」テレビ朝日系「GO!オスカル!X21」にMCとしてレギュラー出演中。2015年4月スタートのテレビ朝日系金曜ナイトドラマ「天使と悪魔~未解決匿名交渉課~」では主役を務める。アーティストとしては2013年7月にシングル「友達より大事な人」でデビュー。さらに2014年2月に主演ドラマ「私の嫌いな探偵」の主題歌「あなたの100の嫌いなところ」、10月に「くやしいけど大事な人」をシングルリリースし、2015年4月には1stアルバム「剛力彩芽」を発売する。
いしわたり淳治(イシワタリジュンジ)
1977年8月21日生まれ、青森県出身の作詞家 / プロデューサー。1997年にロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビューし、2005年のバンド解散までに5枚のオリジナルフルアルバムを発表。バンドの全楽曲で作詞とギターを担当した。SUPERCAR解散後以降に作詞家、音楽プロデューサーとしての活動を本格化させる。Superfly「愛をこめて花束を」、少女時代「PAPARAZZI」、SMAP「Mistake!」、剛力彩芽の“大事な人三部作”こと「友達より大事な人」「くやしいけど大事な人」「ワガママは大事な人」など多数の楽曲で作詞を手がける。プロデューサーとしてはチャットモンチー、9mm Parabellum Bullet、ねごとの楽曲のほか、2014年公開の映画「日々ロック」の音楽を監修。著書に小説「うれしい悲鳴をあげてくれ」がある。