ナタリー PowerPush - AYABIE

1stアルバムに込められた4人の“ANSWER”

「LOVE SONG」は妥協したくなかった

──もちろんミックスでのバランスの妙もあるとは思いますが、シンセや同期モノがふんだんに入っている中で、個人のプレイの存在感がすごくありますね。

インタビュー写真

インテツ ウチは元々シンセとか同期モノを使うことに対して、ライブで表現する上でも幅が広がるので良しとするスタイルでやってきたんですね。バンドの生音以外はアレンジャーさんに入ってもらうんですけど、そのアレンジャーさんとのやり取りの時間も大事でしたね。

──あらかじめシンセや同期モノが入ることを踏まえてプレイを考えてるんですか?

インテツ 楽器の録りに入る前にはシンセのほとんどが出来上がってるんですけど、最終的にそれぞれのプレイを優先するようにしてますね。夢人くん作曲の「SICs」は特別で、打ち込みメインのサウンドなので、そこにタケヒトのギターが乗る形でしたけど。基本は生音のものを選んだ上で、ほかのアレンジをいじる感じですね。

夢人 だから、いいピアノのフレーズも一瞬で消されるもんね。

インテツ 時間かけて作り込んだものでも、より歌が活きるほうを選ぶっていう。

夢人 「LOVE SONG」に関しては、一度完パケたものを全部消しましたからね。

──そうなんですか!?

インテツ 一番ひっくり返った曲ですね。

夢人 オシャレなムードのある曲なんですけど。僕は、インテツが作ってきたデモの感じがすごい好きで。実際に収録されている音源と似た雰囲気なんですけど。一度完パケたものを聴いたときに、僕が「なんか違う気がする」ってボソッと言ったら、みんなも「そんな気がしてきた」ってなって……。

インテツ そう、僕がアレンジャーさんと一緒に作業して完成したものをみんなに聴いてもらったときに、場の空気から「違ったな」って感じて。モヤモヤしたままアルバムを作るのはダメだなって思って、アレンジャーさんに電話して「昨日遅くまで作業してもらって本当に申し訳ないんですが、もう一度最初からやりたいんです」ってね。

──「このままでいいか」って妥協はしたくなかったと。

夢人 アルバム完成後、スタッフさんたちとみんなで打ち上げをしたんですけど。そのときにアレンジャーさんが酔っ払って、その「LOVE SONG」でいろんなアレンジをした思い出を語ってました。「めちゃくちゃいいんだよー!」って言ってくれてたから、良かったなって。

インテツ うん、結果やり直して良かったよね。

──その「LOVE SONG」はタケヒトさんのワウギターも艶っぽい雰囲気を出してて、間奏の変拍子のドラムソロも聴きどころですね。すごくスリリングで、KENZOさんってこういうドラミングもするんだなっていう新しい発見がありました。

インテツ どの曲にもメンバーらしさが欲しいと思ってるんですけど。「LOVE SONG」の構成を考えてるときに、普通ならそこでギターソロにいくんですけど、今回は違う流れがいいなって。KENZOくんはドラムがうまいし、それがフィーチャーされるプレイがあると、きっとライブでもメリハリが付く気がして。それで尺だけ決めて、あとはKENZOくんにフリースタイルで叩いてもらったんですよ。

KENZO 「ドラムは暴れてくれ」みたいなことを言われて。完成形が見えてるものじゃないから、そこは何度も録り直しましたね。そう考えると「LOVE SONG」は特にこだわってるね。それもパッと聴いて難しそうなフレーズがあるっていうよりも、ここでキック入れて……みたいな細かいこだわりが多いね。

メンバーのアイデアが詰まったアレンジ

──細かいこだわりと言えば、夢人さん作曲の「SICs」は激しいサウンドの中に、ヒーリングミュージックや民謡のような音を織り交ぜた面白い楽曲になっていますね。

インテツ 「SICs」は、元々ライブでやってる「FIVE」っていう曲の進化版のようなイメージで。音源化するにあたって、突然アレンジがひらめいて。作曲者の夢人くんに電話して「明日デモ持っていくから聴いてもらっていい?」って聞いてからアレンジしたんですよ。個人的に好きなメタルとかハードコアの衝動的でゴリゴリなサウンドに、和のフレーズを足してAYABIEらしく華やかにしました。アレンジにかなり携わったのが僕的に面白かったですね。

──ライブでも盛り上がりそうですね。

夢人 「SICs」は僕が一番アレンジャーさんにやりたいイメージを伝えた曲なんですよ。入れたい音とかフレーズとかを全部言ったんです。僕、AYABIEでボーカリストになってからサウンドに関してはお任せモードだったんですけど。「メリーゴーランド」もそうでしたけど、「SICs」と「Paradise Paradox」は妥協なく言いました。「SICs」のあの民謡みたいな音も“ヴィジュアル系”っていう感じがして面白いなって(笑)。

インテツ もはやカルトだよね、おどろおどろしい感じの(笑)。あと「SICs」に「カーン!」っていう金属音が入ってるんですけど、あれドラムじゃなくてスコップを木槌で叩いた音なんですよ。最初「ドラム缶をバットで叩くような音が欲しい」っていう話をエンジニアさんとしてて。そしたらエンジニアさんがスタジオの中にある自販機とかをコツコツし始めたから、スタジオ壊す気!?と思って(笑)。最後はディレクターが近所の金物屋でスコップを買ってきて。

KENZO そういう素材あるでしょ(笑)。

インテツ サンプリング音源とかじゃあダメなんだよ! そこも生にこだわりました。スコップを強く握るとミュートしてしまうので弱く握るとか、かなりこだわってますね。それが伝わり切らないのが残念で(笑)。

CD収録曲
  1. prelude
  2. RISE
  3. Reflector
  4. 覚醒シュプレヒコール
  5. LOVE SONG
  6. Paradise Paradox
  7. メリーゴーランド
  8. 独楽
  9. SICs
  10. HERO
  11. Season
  12. 流星
AYABIE(あやびえ)

元「彩冷える」の夢人(Vo, G)、タケヒト(G)、インテツ(B)、KENZO(Dr)によって2010年9月に結成されたロックバンド。同年10月に東京・Shibuya O-EASTで初ライブを行い、12月には初音源となるアルバム「Virgin Snow Color -2nd Season-」をインディーズから発表した。2011年に入るとシングル「Melody」、DVD「Virgin snow color -2nd season- 2011.01.06 Tour Final at AKASAKA BLITZ」、サウンドトラックアルバム「縁-enishi- SOUND COLLECTION」を立て続けに発表し、同年8月にシングル「流星」でメジャーデビュー。2012年1月に2ndシングル「メリーゴーランド」、5月に3rdシングル「覚醒シュプレヒコール」をリリースしたのち、2012年8月にメジャー1stアルバム「ANSWER」を発表した。