Awesome City Club|慎重かつ大胆に、新体制で迎える5周年

その場しのぎで書いた言葉では絶対に納得してくれない

──歌詞はどのように書きましたか?

atagi 僕は今、音楽に対しても情報に対しても、世の中にめっちゃリテラシーの高い人が多いと思っていて。エンタテインメントの構造を理解したうえで、それに乗っかって楽しんでいるような俯瞰した視点を持っているというか。精神構造も若くして成熟している人がすごく多いから、その場しのぎで書いた言葉では絶対に納得してくれないだろうと常日頃考えているんですよ。

──リテラシーが高く、成熟したリスナーが増えているのはどうしてだと思いますか?

PORIN(Vo, Syn)

atagi うーん……もう、情報が入りすぎなんじゃないのかな。情報が入りすぎると、思想や理念ってどんどん平均化されていくと思うんですよ。なので、突飛な人は昔に比べて減っていると思うんですけど、その分リテラシーのある人が増えている。行儀いい人が多いし、こっちの苦労をそこまでわかってくれなくてもいいのに……って思うときもあるし(笑)。

PORIN SNSが普及したのも大きいのかもしれないですよね。いい意味でも悪い意味でも、評論家気質の人も増えた気がする。

atagi だから嘘はつけない。毒気だけ撒き散らしても白々しいニセモノになっちゃうけど、当たり障りのないことだけ書いても刺さらない。そこのバランスが自分の中ですごくもどかしくて。正論の中にある大きな矛盾だったり、逆に理路整然としてない気持ちの中にある嘘偽りないパッションだったり、そういうまったく違う要素が自分の中で混在していることを、無理に調和を取ったり天秤にかけたりせずそのまま吐き出すほうが自分自身にとってもリアルだし、今の自分たちにも焦点を当てた歌詞が書けるんじゃないかと思ったんですよね。

デビュー5周年イヤーは慎重かつ大胆に

──先ほどatagiさんがおっしゃったように、今年オーサムはデビュー5周年を迎えます。年齢も30代に突入し、歌いたい内容なども変わってきましたか?

atagi キラキラした歌詞はもう書けないかもしれない(笑)。「きっと夢は叶うよ!」みたいなことは、1周回らないと言えないですね。そういうのがこっ恥ずかしくなっちゃった年齢なりの誤魔化し方というか。誤魔化すというのは悪い意味じゃなくて、照れ隠しみたいなことなんですけど、きっとみんなにはわかってもらえる照れ隠しの伝え方はあると思うし。結局言いたいことは純粋でピュアなことで、最終的には「夢は叶うよ」でもいいじゃん!って思う(笑)。だって僕は、それに恋い焦がれてこの世界に入ったわけですし、それを歌う使命感は持ち続けていたい。

──最終的に「夢は叶うよ」へ行き着くとしても、そのたどり方や過程が変わってくるのかもしれないですね。

ユキエ(Dr)

atagi そうなんです。同じものを見ていても、年齢を重ねると切り取り方も変わってきますし。ただ、そのロジックを頭で考え出すとワケわからなくなるから(笑)、そこは自然体でいながら出てくる言葉を紡いでいきたいですね。慎重かつ大胆にやっていきたいです。

PORIN 私自身に関していえば、言いたいことや伝えたいことはずっと変わっていない気がしていて。さっきおっしゃったみたいに言葉のチョイスが変わっているだけなのかなって気がします。

ユキエ 私は今回リリースする「アンビバレンス」が、atagiくんの今までの歌詞の中で一番色っぽいと思いました。それも切り取り方が変わってきているからなのかな。

atagi えー、どうなんだろう(笑)。

3カ月連続リリースのテーマは“すれ違い”

──「アンビバレンツ」がテーマなのも、色気を生んでいる気がしますね。以前、クレイジーケンバンドの横山剣さんにインタビューしたときに「ミスマッチでアンバランスなものにこそ色気は宿る」とおっしゃっていて。そのことを思い出しました。

atagi なるほど。それでいうと今回のジャケット、これヤバくないですか?(笑)これも相反するものを挙げまくったんですけど、口紅にスタッズってエロいですよね。

モリシー(G, Syn)

モリシー 桃にスタッズか、口紅にスタッズかで迷ったんだよね(笑)。

──桃にスタッズもヤバそうですね(笑)。さて今後、3カ月連続で新曲をリリースするそうですが、どんな内容になりそうですか?

atagi 共通したテーマは、“すれ違い”です。「アンビバレンス」は自分の中のすれ違いがテーマで、今後もさまざまな“すれ違い”を曲にしたら面白いかなと。単純な行き違いもあれば、同じ方向を向いていると思っていたのに、すれ違っていることもある。アンジャッシュさんのコントみたいなすれ違いもあるかもしれないですしね(笑)。

──楽しみにしています。では新しい年に向けての意気込みを最後に聞かせてください。

atagi 僕ら5周年のアニバーサリーなので、ド派手にいろいろやりたいですね。作戦を練っているところです。

PORIN 今春にも大きなリリースがありますし、その後はツアーも回る予定です。あとやりたいのはカルチャーフェスティバル。オーサムにゆかりのあるカルチャーを紹介するフェスを、秋冬くらいにやりたいなと思っています。この活動の集大成をそこで見せられたらいいなと思っていますね。

ユキエ 次の世代の人たちに「オーサムみたいなかっこいいバンドになりたい」と思われるようなバンドになりたいし、私たちならなれるはずだし、そのくらいの気持ちで活動や制作をしていきたいと思っています。

PORIN 最近、まだ世間に発見されていない若手アーティストをフックアップするのが超楽しくなってきてるんです。今回のツーマンツアーも、先輩たちとやれたのも勉強になったけど、まだ東京でのライブが3回目というシンガーさんと一緒にやったり、若手のバンドを呼べたりしたのは自分たちにとってもいい経験になったと思いますね。デビュー5周年を迎えた中堅バンドならではの役割もできるようになってきたのかなと。

モリシー ……俺、今の発言でめっちゃPORINの成長を感じたわ。

PORIN あははは!(笑)

公演情報

Awesome Talks Acoustic Show 2020 ~New Year Special~ 仙台
  • 2020年1月19日(日) 宮城県 retro Back Page
Awesome Talks Acoustic Show 2020 ~New Year Special~ 東京
  • 2020年1月23日(木) 東京都 Billboard Live TOKYO [1st STAGE]OPEN 17:30 / START 18:30
    [2nd STAGE]OPEN 20:30 / START 21:30
Awesome Talks Acoustic Show 2020 ~New Year Special~ 大阪
  • 2020年1月28日(火) 大阪府 Billboard Live OSAKA [1st STAGE]OPEN 17:30 / START 18:30
    [2nd STAGE]OPEN 20:30 / START 21:30
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