「アベンジャーズ/エンドゲーム」特集|谷口鮪(KANA-BOON)が語る「アベンジャーズ/エンドゲーム」 バンド界屈指のマーベル好きはどう観る?最後の“逆襲<アベンジ>”への期待

マーベル作品を観ると悔しくなる

──谷口さんが感じるMCU作品の魅力はどんなところでしょうか?

どのシリーズもハリウッド映画ならではの派手さに引き込まれますよね。それだけで映画館に足を運ぶ価値があると思います。それとシリーズが重なっていく中で、それぞれの作品の中に散りばめられた伏線がつながっていくのが面白くて。いろいろ調べることでさらに興味が増すし、自分の頭で考える部分も出てくるんです。鑑賞するだけの映画じゃない、一歩踏み込んだ楽しみ方ができるところですね。

──ただMCUが始まって10年が経ち作品数も多いので、初心者はどこから観ればいいのか迷ってしまうところもあると思うんです。

谷口鮪(KANA-BOON)

そうですよね。最初に観るなら「アベンジャーズ」の第1弾か「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」がオススメかな。主要キャラクターがたくさん登場する作品なので、誰かしらお気に入りのキャラクターを見つけられると思います。「アベンジャーズ」って日本で例えると、鉄腕アトム、デビルマン、ドラえもん、ウルトラマン、仮面ライダー、孫悟空、大空翼みたいな主役キャラが一挙に登場するような作品なんですよ。

──その例えは非常にわかりやすいです(笑)。

もちろん子供でも大人でも楽しめるというのもポイントですね。子供にとっては少し背伸びして観る感じなのかもしれないのですが、大人のキャラクターたちの会話には憧れる部分があるだろうし、アクションシーンとかCGのシーンとか興奮できる要素もあるし……逆に大人の僕が観ていて童心に返るときもあるんです。忘れてしまった少年の心が自分の中に生きてるんやなと実感することがありますね。

──マーベル作品を観て受け取ったものがご自身の音楽活動に反映されることはありますか?

あります。これほど愛情と情熱が注がれているシリーズもないと思うんです。何よりエンタテインメントとして純度の高い作品ばかりなので正直、観たあとはいつも悔しくなります。自分はこんな作品を作れているのかということを考えさせられる。僕、Blu-rayやDVDの特典映像で制作の舞台裏やインタビューを観るのが好きなんです。2時間くらいの映画を作り上げるのに、本当にすごい労力が費やされていることがわかるから。それを観ると自分も熱量を持って音楽を作らなきゃと思うんです。

──マーベルには多彩なヒーローが集結していますが、谷口さんにとって理想のヒーロー像はありますか?

悩み、失敗し、打ち砕かれ、そしてちゃんと立ち上がることですね。逆に完全無欠のヒーローには憧れないし、自分もなることはできない……なりたくもないです。

──なぜですか?

自分が本当に心を動かしたい人のことは、完全無欠の人間では動かせないから。僕は自分のように何かに悩んだり、寂しさや孤独を感じる人たちに向けて音楽を作ってるので。完全無欠のヒーローでは、そういう人たちの共感を得ることはできないと思うんです。マーベル作品のヒーローたちは、恋や仕事、生活の中で悩みながらも戦っているからファンがいると思うんです。

ホークアイを目指し、最期はヨンドゥのように

──KANA-BOONメンバーを「アベンジャーズ」に登場するキャラクターに例えるとしたらどのキャラクターになりますか?

こいちゃん(小泉貴裕 / Dr)はグルートですね。ときどき話が通じない瞬間があるので(笑)。話がわかる瞬間もあるし、頼りになるときもあるんですけど、グルートみたいにどういう生態系なのかどういう生活をしてるのかもわからない。飯田(祐馬 / B, Cho)はアントマンというかスコット・ラングかな。ちょっととぼけた感じとか、いろいろ物事がうまくいかないところとか。でもがんばり屋でもある。

「アベンジャーズ/エンドゲーム」よりキャプテン・アメリカ。
「アベンジャーズ/エンドゲーム」よりホークアイ。

──古賀さんは?

古賀は……世界観的には「マイティ・ソー」にいそうな感じだな。あの世界の衣装が似合いそう。でも、性格的にはスティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカ)感があります。まあ良くも悪くも頑固なんで。今はけっこう柔らかくなったんですけど、古賀は昔、尋常じゃないくらい頑固な時期があったんです。自分の正義を誰がなんと言おうと貫き通す的な。当時は「シビル・ウォー」でのロジャースみたいな感じだったな。

──そして谷口さんご自身は?

うーん……似ているというよりは、ホークアイみたいになりたい。ホークアイって主張は強くないけど、全体を把握してる人なんですよね。みんなにとってのよき理解者というか。アベンジャーズメンバーのメンタルをフォローしたり、洞察力が一番優れてるキャラクターだと思うので、バンドのリーダーとしてはああいう感じになりたい。で、ヨンドゥみたいな最期を迎えたい。

──谷口さんは本当にヨンドゥがお好きなんですね(笑)。

はい(笑)。

マーベル初心者を引き込む座談会をしたい

──MCU作品を初期から観ていた谷口さんから見て、この10年のマーベルに対する世間の変化というのは感じますか?

谷口鮪(KANA-BOON)

とにかくファンがすごく増えましたよね。「MARVEL」ロゴを街中で目にする機会も増えたし、いちファンとしてうれしいです。マーベルの話ができる人も増えたし。「アベンジャーズ」シリーズが始まってから日本でも大きな流れができた気がします。

──ミュージシャンでマーベル仲間はいますか?

Saucy Dogのしんちゃん(石原慎也 / Vo, G)が「MCU作品を観たいんですけど、何から観ればいいかわからないんです」って相談してきたので一通り僕のオススメを紹介しました。個人的には夜の本気ダンスのマイケル(B)さんと、マーベルの話をしたいんですよね。この前、「キャプテン・マーベル」の特集(参照:マイケル(夜の本気ダンス)が語る「キャプテン・マーベル」)に登場されていたし、すごく詳しそうなのでいろいろ教わりたい。探したらマーベル好きのミュージシャンっていっぱいいると思うんです。だから、マーベルマニアとまあまあ知ってる人を集めて、初心者を引き込む座談会とか飲み会とかやりたいですね。

──「エンドゲーム」公開直後にぜひ。最後に読者に向けてひと言お願いします。

今までの「アベンジャーズ」シリーズを観てきた人にとって、「エンドゲーム」は間違いなく観なきゃいけない作品だと思います。初めてMCU作品に触れる人はいきなり“最後”を観るような感覚だと思うんですが、MCU作品は終わりから観てもさかのぼれる面白さがあると思うのでぜひ観てほしいです。何よりMCUを支えてる要素のすべてが「エンドゲーム」に集約されていると思うので、もとからのファンも初心者も劇場で映画を体感してほしいですね。

谷口鮪(KANA-BOON)