「アベンジャーズ/エンドゲーム」特集|谷口鮪(KANA-BOON)が語る「アベンジャーズ/エンドゲーム」 バンド界屈指のマーベル好きはどう観る?最後の“逆襲<アベンジ>”への期待

「アベンジャーズ」シリーズの“完結編”となるマーベル・スタジオ最新作「アベンジャーズ/エンドゲーム」が、いよいよ4月26日に公開される。アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルク、キャプテン・マーベルといったヒーローチーム“アベンジャーズ”が戦う本作。前作「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」のラストで、最凶最悪の敵サノスが全宇宙の生命の半分を消滅させてしまった世界を舞台に、ヒーローたちが失った仲間と35億の人々を取り戻すため最後の“アベンジ(逆襲)”に挑む。

ナタリーでは本作の公開を記念し、3つの特集を展開する。音楽ナタリーではマーベルキャラクターのフィギュアを多数所持するなど、マーベル好きで知られるKANA-BOONの谷口鮪(Vo, G)に「エンドゲーム」への期待やマーベル作品の魅力をたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 中野明子 撮影 / 佐藤早苗

サノスがいなくなってしまう未来も寂しい

──「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」はご覧になりましたか?

谷口鮪(KANA-BOON)

もちろん! 昨日も寝る前に観てました。実は今回こういった機会をいただいたので、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品を時系列順で観直してみようかなと思って、先日からほかの作品も観直していたんです。

──改めて過去作品を観ていかがでしたか?

単純に楽しいですよね。あの出来事があったから、このキャラクターはこうなったんだとか、こういう出会いがあってたくましくなったんだとか……公開順に作品を観るのとは違う面白さがありました。これはほかの映画作品にはあまりない楽しみ方だなと。

──「インフィニティ・ウォー」を観直して印象に残ったシーンはありますか?

「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」よりサノス。©︎2018 MARVEL
「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」より。©︎2018 MARVEL

アベンジャーズのメンバーが次々消えていく最後のシーンはつらくて仕方なかったです。初めて観たときのショックは何度観ても薄れないですね。アベンジャーズが大敗する場面はこれまでのMCUシリーズを通してもあまりなかったと思うんです。だから完全に負けてしまう流れが衝撃的だったし、同時に“ラスボス”であるサノスの圧倒的な存在感を感じたというか。呆然とスクリーンを眺めているうちにエンドロールが始まっちゃうし。

──確かにあのラストは呆然とするしかないですよね。

ラスト以外だと印象的だったのは、トニー・スターク(アイアンマン)とドクター・ストレンジの邂逅とか、ソーとガーディアンズのメンバーの絡みとか。ヒーロー同士の初対面ややり取りがコミカルで笑いました。スタークとストレンジはプライドの高い2人だから当然のように反発しあうようなあ……とか。

──(笑)。サノスはもちろん悪役ではありますが、自分の信念に基づいて生きているキャラクターですよね。

そうそう。飢餓や貧困をなくすための慈悲だと言って、全宇宙の生命の半分を滅亡させてしまうわけですから。もともと自分の故郷であるタイタンが貧困で滅んでしまったのがきっかけだと思いますが、サノスにとっての正義というのはいったいなんなのか……彼が頑なに自分の思想を貫くようになった理由がすごく気になります。MCU作品、マーベルコミックではヴィランたちがなぜ“悪役”になってしまったのかをしっかり描いてくれるので、「エンドゲーム」でサノスの過去が明かされるのを期待しています。サノスはアベンジャーズの敵ではあるんですが、「インフィニティ・ウォー」を観ると単なる悪役として見れないんですよね。養女であるガモーラを殺すシーンでは、愛情があるゆえに苦悩するわけですし。一番人間らしい悪役というか。最凶最悪のキャラクターですが、なぜか親近感が湧くんです。だからサノスがいなくなってしまう未来というのもちょっと寂しいかなと思ったり。

──ほかに「インフィニティ・ウォー」の中で感情移入できるキャラクターはいましたか?

スパイダーマンというか、ピーター・パーカーですね。アベンジャーズの中ではド新人だし、トニーに「地球に帰れ」と言われたのに宇宙まで付いていっちゃう無謀さとか。若さならではの前のめりさやパッションに共感しました。

──いよいよ「エンドゲーム」が公開されますが、谷口さんはどんな“終わり”を迎えると思いますか?

「アベンジャーズ/エンドゲーム」よりスコット・ラング。

アベンジャーズに関わることで、トニーにどんどん自己犠牲の精神が芽生えているので、個人的にはサノスを倒す代わりに彼が何かを背負っていなくなっちゃう予感がしているんです。

──その見解は興味深いですね。

あとはキャプテン・マーベルが登場するみたいですし、「エンドゲーム」の予告編ではアントマンの姿もあったので、その2人の活躍も楽しみです。「アントマン」と言えば量子世界なので、その世界がサノスを倒すのに関連してくるのかなと想像したり。

──いろいろ布石が打たれていますから、それがどう回収されていくのか気になりますよね。

はい。今回はMCU作品としては初めて上映時間が3時間を超えるんですよね。でも、MCU作品はストーリーの緩急の付け方がいいし、笑いどころ、アクションシーン、グラフィックで見せるシーン……いろんなシーンでバランスよく構成されているので、「エンドゲーム」もあっという間に終わっちゃうでしょうね。

昔遊んでいたゲームのキャラだ!

──谷口さんが初めてマーベル作品に触れたのはいつでしたか?

谷口鮪(KANA-BOON)

小学生のときかな? 「MARVEL VS. CAPCOM」というアーケードゲームが初めてだった気がします。マーベルのキャラクターはゲームの中でもデザインがカッコいいし、いろんな技を持っているので使うのが楽しかったですね。例えばアイアンマンだったら手から光線を出すし、空も飛ぶし、ほかのゲームキャラクターとは違うのが魅力的でした。そのあとトビー・マグワイア主演の「スパイダーマン」で初めてマーベル映画に触れた気がします。

──谷口さんの世代だとトビー・マグワイアの「スパイダーマン」を観ている方が多そうですね。

はい。「スパイダーマン」は設定自体にすごく胸が躍るんです。ナードなキャラクターが力を得てたくましくなる一方で、力の大きさに戸惑うところとか。憧れのメリー・ジェーン・ワトソンとの関係にも踏み込めないうじうじした姿とかリアリティがあったし。あとはニューヨークという実際にある街が舞台になっていて、そこをヒーローたちが動き回っているという設定が新鮮でした。それまで僕が触れていた日本のマンガや映画は、架空の世界が舞台になったものが多かったので。人の生活がある場所にヒーローが現れるというのが楽しかったな。

──MCUは2008年にスタートしましたが、初めて観たシリーズは覚えていますか?

はい。最初は「アイアンマン」でした。そこで、「これ、小学生のときに遊んでいたゲームのキャラだ」って記憶が結び付いたんです。以降も公開順にしっかり追ってます。ただなかなか劇場に行く機会がなくて……「インフィニティ・ウォー」を観れたのも公開後しばらく経ってからだったんです。もう、ネタバレを避けるために公開直後の僕のピリつき具合はハンパなかったですね(笑)。どうもアベンジャーズに大変なことが起きてるっていう情報は耳に入ってくるけど、それ以上は知りたくない!と思ってネットでネタバレや感想を見るのを必死で避けてました。もうあんな思いはしたくないので、「エンドゲーム」は公開されたらすぐ劇場に足を運びます!

同性から見てもカッコいいトニー・スタークという男

──アベンジャーズにはいろんなヒーローが出てきますが、一番好きなヒーローは誰ですか?

「アベンジャーズ/エンドゲーム」よりトニー・スターク(アイアンマン)。

トニーかなあ。同性から見てもカッコいいんですよね。自信に満ちあふれていてリーダーシップを取っていける感じとか。大人の男としてカッコいい一面がある一方で、めちゃくちゃ子供っぽいところもあるし。婚約者のペッパー・ポッツに対して意地を張ったりして、そこがかわいいし少年っぽい。大人になっても子供のままでいる感覚が宿ってるキャラクターだから好きですね。あとは「アベンジャーズ」シリーズには出てきませんが、「ガーディアンズ」シリーズに出てくるヨンドゥも大好きで。

──彼は宇宙人ですが、どこか人間臭いキャラクターですよね。

谷口鮪(KANA-BOON)

一応悪い奴ではあるんですけど、一本筋が通っているから愛される。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」でヨンドゥが死んだあと、みんなが彼を弔うじゃないですか。僕もああいう最期を迎えられたらと思いながら、ヨンドゥの部下になった気持ちで観てました。

──MCUといえば作品ごとに使われる音楽にもこだわりがあります。「ガーディアンズ」シリーズなら1970年代から80年代のヒット曲群、「キャプテン・マーベル」なら映画の舞台になっている90年代のロックやR&Bが使われていて、「ブラックパンサー」はケンドリック・ラマーが劇伴を手がけ、主題歌の「All the Stars」はアカデミー賞にノミネートされました。

どの作品も音楽の使い方が本当にいいですよね。ストーリーがリンクしているだけじゃなくてしっかり劇中で流れるし、音楽に“還元”される使われ方をしてる気がします。自分がリアルタイムで知らない音楽に触れる機会も生まれるし。僕らもアニメや映画の主題歌を作る機会があるんですが、理想的な形だなと思います。