KEN LLOYD(Vo / OBLIVION DUST、FAKE?)、Shigeo(G, Programing / The SAMOS、ex. SBK)、ケイタイモ(B / WUJA BIN BIN、ikanimo、ex. BEAT CRUSADERS)、桜井誠(Dr / Dragon Ash)からなる4人組バンド・ATOM ON SPHEREが、4月16日にニューアルバム「The Secret Life Of Mine」をリリースする。
2011年12月発売の1stアルバム「ATOM ON SPHERE」以来、約7年4カ月ぶりのニューアルバム「The Secret Life Of Mine」は先行配信シングル「Secret Life Of Mine」「Doves」を含む10曲入り。エレクトロ、ニューロマンティック、ギターロックなど80'sテイストのサウンドを現代的なポップミュージックに昇華させた作品に仕上がった。音楽ナタリーではメンバー4人にインタビューし、アルバムの話題を中心に、バンドのコンセプト、メンバーの関係性などについて語ってもらった。また彼らは、AIを使用したWebサイト制作アプリ「ジンドゥーAIビルダー」のWeb CMに出演し、実際にアプリを体験。スマートフォンで作成することを前提に作られ、iTunesやSpotifyのリンクを貼るだけでサイト内に試聴できるプレイヤーを追加できるなど、ミュージシャンにとっても便利なこのアプリについても話を聞いた。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 斎藤大嗣
ニューアルバム発売まで7年4カ月かかった理由
──1stアルバム「ATOM ON SPHERE」以来、約7年4カ月ぶりとなるニューアルバム「The Secret Life Of Mine」がリリースされます。リリースまでかなりのブランクがありましたが、活動はずっと継続していたそうですね。
Shigeo(G, Programming) そうなんですよ。“ライブを1回やって、制作は数日だけ”という年もあったんですけど、全然動いていなかったわけではなくて。メンバーそれぞれのバンドの動きもあるので、なかなか4人そろわないこともありますからね。
ケイタイモ(B) 「The Secret Life Of Mine」の制作に着手したのも7年前くらいだから、「こんな曲、録ったっけ?」みたいなこともあって(笑)。レコーディング自体は一昨年くらいから?
KEN LLOYD(Vo) 去年かな。
Shigeo 歌録りはそうだね。
桜井誠(Dr) オケを録ったあと構成を変えることもあったし、歌詞や歌メロを乗せてからもさらに構成やアレンジを練ったよね。
Shigeo ガンズ(Guns N' Roses)みたいな感じですよ。曲はあるんだけど、アクセル・ローズがなかなか歌を録らなくて、何年もかかるみたいな。
KEN え、僕のせいなの?(笑)
すでに“2周目”に突入している曲も
──7年も制作を続けていると、バンドのコンセプトが微妙に変わったりしないんですか?
Shigeo どうだろう。レトロフューチャーというか、時代を感じさせない音楽をやりたいと思っていて。“古新しい”(ふるあたらしい)感じはうまくいったんじゃないかな。自分たちが好きな時代の音楽……主に1980年代なんですけど、その感じも共有されてるし。
ケイタイモ でもね、Shigeoは飽きっぽいところがあって、ちょっと前に作った曲を「これはダサい」と言い出したりするんですよ。
Shigeo そうだね(笑)。アルバムの中にも、自分ではもう“2周目”に入ってる曲があって。1回嫌になったんだけど、しばらくして「やっぱり好きだな」と思って収録したんです。で、「普遍的な曲ばかりです」と自分で言っちゃうパターンですね(笑)。
──確かに80'sの音楽がベースになっているんですけど、今聴いてもまったく古さは感じないですからね。音楽のトレンドが移り変わる中、確かに普遍的と言えるのかも。
Shigeo 時代の流れみたいなものをシカトしてるのは間違いないですね。うっかりここ最近のトレンドのトラップとかEDMの要素を入れてたら、それこそ周回遅れになってたと思うんですよ。ある種、我々はもう遅れがないところにいるというか。好きな音楽は体に染みついているし、それを普通にやってる感じですね。ただ、前回のアルバムとまったく同じことをしても意味がないので、アップデートできたらいいなとは思ってますけど。
ケイタイモ そういうことだよね。
桜井 それぞれのキャリアもけっこう長いし、スタイルもしっかりありますからね。ファッションでもそうだけど、若いときは攻めたいじゃないですか。
Shigeo とがった格好してるヤツを見ると、「かわいいヤツじゃ」と思うけど、同じような服を自分が着るかというと……(笑)。
桜井誠 「そういうのはいいかな」って。
──音楽に関しても、すぐにトレンドに飛びついたりはせず基本的にはルーツミュージックに根差していると。
ケイタイモ そうですね。なんかもう遺伝子に組み込まれているというか。「ベストヒットUSA」(小林克也がMCを務めた伝説的音楽番組)世代なので。
Shigeo 俺は「ベストヒットUSA」世代では最後のほうで、そのあと放送された「BEAT UK」(1990年から2004年にかけて放送された音楽情報番組)のほうがリアルタイムだったかな。
──バンドで言うと、Inspiral CarpetsとかHappy Mondays、808 Stateとか。
Shigeo そうそう。かと思えば、いきなりRage Against the MachineとかSaint Etienneがかかったり。「BEAT UK」はそんな番組でしたね。
KEN でも僕らは、80年代や90年代だけではなくて、新しい音楽に対するアンテナもちゃんと立ててるんですよ。制作してると「あのバンドのこういう曲の感じで」という話になるんだけど、その中に今トレンドのアーティストの名前が入ってきたり。みんなそれぞれアンテナを立ててる場所が違うから、一緒にやってると新しい発見が多いんですよね。とにかくみんな音楽が好きだからやりやすいし、作りやすい。7年かかったけど(笑)。
桜井 (笑)。それぞれの軸になってる部分は変わってないですからね。音像やミックスのバランスは変化してるけど、1stアルバムのときと全然違うバンドになってるのかと言えばそうじゃない。
KEN メンバー同士の関係もいいんですよ。ATOMはShigeoがリーダーだけど、ときどきブッ飛び過ぎちゃうから、ほかの3人が引っ張り戻すっていう。例えばShigeoが曲のアレンジを大きく変えようとしてるときに、ほかの3人が「前のほうがいいよ」と言ったりね。そしてちゃんと素直に話を聞いてくれますから。
Shigeo ……今聞いてて思ったけど、俺、音楽始めてからずっとそういう感じだったかも。全然変わってないんだな(笑)。
ライブのアンセムになっている曲を越えなくちゃいけない
──楽曲の制作は、Shigeoさんのデモ音源がもとになってるんですか?
Shigeo そうですね。俺が叩き台になる音源を作って、みんなで手を加えていく感じで。1stのときは制作のウェイトがもっと自分にかかっていて、できたものをみんなに演奏してもらったり、歌を入れてもらったりしていたんですけど、そのプロセスを変えたくて今回はアレンジを誰かに振ったり、サクちゃん(桜井)と構成を考えたり、KENと一緒に作った曲もあって。そのやりとりで少し時間がかかったのかもしれないですね。
ケイタイモ 1stはShigeoが中心になって、一気に作ったからね。
Shigeo うん。あと今回は、1stアルバムの中で俺らのライブのアンセムになっている曲を越えなくちゃいけないというジレンマもあったかな。
──新たなアンセムとして提示したのが、先行配信シングルとしてリリースされた「Secret Life Of Mine」と「Doves」なんですか?
Shigeo いや、どうだろう? その答えは聴いてくれた人に任せたいです。
桜井 先行配信シングルを決めるときもいろんな候補があったからね。
KEN しかもみんなバラバラ。
Shigeo ちなみに俺が推した曲は選ばれませんでした(笑)。
ケイタイモ 結局みんなで投票して選んだんですよ。「Secret Life Of Mine」を最初のシングルにしたのは、ミュージックビデオのイメージも関係していて。The Strokesのある曲のMVを見て「こういうテイストの映像いいよね」という話になって、こういうMVを作るなら「Secret Life Of Mine」かなと思って先にリリースしたんです。
──「Secret Life Of Mine」はエレクトロとインディーロックの要素が両方あるし、すごくポップな曲ですよね。
ケイタイモ そうですね。The Cureっぽい感じもあって。
Shigeo ボーカルのテイストもそういう感じだからね。意識してた?
KEN してないよ。
Shigeo そう言うと思った(笑)。
KEN もともとこのバンドを立ち上げたきっかけの1つに、Shigeoが「KENの声はNew Orderのボーカルに似てる」と言ったことがあって。僕は嫌いなんですけどね、New Order(笑)。
Shigeo そうなんだよね(笑)。
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Shigeoは音に詳しいし勉強家、でも発想は普通じゃない
2019年4月5日更新