アニメ専門チャンネル・AT-Xが、新たな動画配信サービス「AT-DX」を3月23日にスタート。このサービスにて、GLAYのHISASHI(G)がナビゲーターを務めるアニメ紹介番組「STUDIO HISASHI with Anime」が毎月1回配信される。
アニメをはじめとしたサブカルチャーに造詣が深いことで知られているHISASHI。ネット上に「らき☆すた」のオープニングテーマ「もってけ!セーラーふく」や「おそ松さん」のオープニングテーマ「はなまるぴっぴはよいこだけ」といったアニソンの“弾いてみた”動画をアップし、声優の遠藤ゆりか、三森すずこ、緒方恵美に楽曲も提供している。
「STUDIO HISASHI with Anime」はそんなHISASHIが、新たなアニメ作品との出会いを視聴者に提供する番組。HISASHIはアニメに携わったことのあるアーティストやクリエイターをゲストに迎え、アニメについて深く語り合う。記念すべき初回のゲストは、GLAYのメンバーとして長年同じ時間を過ごしてきたTERU。彼らは番組でアニメトークに花を咲かせ、2人だけのセッションも行っている。
音楽ナタリーでは番組初回の収録現場に潜入。HISASHIとTERUに収録の感想やアニメ作品への思い入れについて話を聞いた。
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取材・文 / 中川麻梨花撮影 / 森好弘
「STUDIO HISASHI with Anime」はAT-DXにて配信中。
1月末、都内のとあるスタジオを舞台に「STUDIO HISASHI with Anime」初回の収録がスタートした。初めてアニメ紹介番組のナビゲーターを務めるHISASHIは「期待しないでくださいよ! あんまり詳しくないですから」と謙遜しつつ、収録早々にギアを上げ、宮崎駿、押井守、庵野秀明といったアニメクリエイターへの思いを「影響を受けたというより、トラウマです! 呪縛です!」と爆発させる。そんなアニメ愛あふれるスタジオに「初回、身内でいいんですか?」と笑いながら登場したのは、初回ゲストに呼ばれたTERUだ。HISASHIのアニメ好きは広く知れ渡っているが、実はTERUもアニメやマンガが大好き。「GLAYのメンバーの中でも、アニメ・ゲーム班みたいな感じだよね」とHISASHIは話す。
「STUDIO HISASHI with Anime」ではアニメに関連したエピソードはもちろん、ゲストのキャリアにもフィーチャーし、深いトークが展開される。今回はHISASHIとTERUが今年デビュー30周年を迎えるGLAYの歴史やエピソードを回顧。「4人が集まると笑いしか起こらない」という言葉がTERUから飛び出すと、HISASHIも「ツアーのリハーサルでも、ひたすら話していたり」と笑う。デビューから30年が経っても、GLAYの4人の関係性や明るい雰囲気は一切変わることがない。収録の合間に「30年ずっと仲がいいんですか?」とスタッフから声をかけられたTERUは、「ずっとですね!」とごく当たり前のように返す。しかし、そんなGLAYにもかつて解散の危機があった。“バンドが楽しくなかった時期”だったという1999年のことを2人は懐かしそうに振り返る。
「30年の中で『このアーティストには勝てない』と思った人は?」というトークテーマでは、2021年に結成30周年を迎え、GLAYと時代をともにしてきたとあるバンドのボーカリストによる仰天エピソードがTERUから飛び出す。さらに番組では、ゲストが大切にしている物を紹介するコーナー「思い出ライナーノーツ」も。TERUがスタジオに持ち込んだのは、GLAYの歴史を語るうえでは欠かせないプロデューサーとの思い出の品。メディア初公開の品に、HISASHIも「これは貴重ですよ!」と大興奮する。
これまでGLAYは数々のアニメ主題歌を担当しており、その中でも「ダイヤのA」には「疾走れ!ミライ」「HEROES」「空が青空であるために」「はじまりのうた」「流星のHOWL」の5曲を提供している。5曲すべての制作を手がけたTERUは、番組内で「ダイヤのA」との歩みを思い入れたっぷりに語る。GLAYのアニメ主題歌の中でHISASHIが書き下ろしたのは、「クロムクロ」のオープニングテーマ「デストピア」「超音速デスティニー」。HISASHIは作品の雰囲気をどのように楽曲に落とし込んだのか、当時の制作エピソードを明かす。
ゲストがHISASHIにオススメのアニメをプレゼンするコーナー「HISASHIに知ってHoshi★ ワタシの推しアニメ」では、少年時代に出会った、ボクシングを題材にしたアニメをTERUが紹介する。「HISASHIは通ってないだろうと思った」という理由で選出されたこの作品だが、「このアニメはエンディングが素晴らしい!」と逆にTERUがHISASHIに熱弁されてしまう事態に。「こんなに詳しいとは思わなかった……」とTERUも思わず笑ってしまう。
HISASHIとゲストの貴重なセッションコーナーも、「STUDIO HISASHI with Anime」の見どころのひとつ。今回はGLAYが提供したアニメ主題歌より、「空が青空であるために」「デストピア」の2曲が披露された。阿吽の呼吸による2人のセッションの模様を番組でチェックしてみよう。
もっとアニメのことを知ってみたい
──たった今収録が終わったばかりですが、いかがでしたか?
HISASHI 普段の僕らのままでした(笑)。
TERU 台本ほとんど無視しちゃってたもんね。
──HISASHIさんはアニメに造詣の深いミュージシャンとして有名ですが、実はTERUさんもなかなかのアニメ好きですよね。
TERU そうなんですよ。「ダイヤのA」の声優さんたちと一緒に取材を受けたときに、いろいろと昔のアニメの話が出てきて「意外と詳しいですね」と言われて。でも僕らの世代って、アニメに詳しいというより、昔は娯楽がそれしかなかったんですよ。ただただ楽しくて、ずっと観てたんです。
HISASHI 俺らが住んでた函館は田舎だったから、テレビのチャンネルも少なかったし。
TERU ね。青森放送が偶然入って、朝6時に「仮面ライダー」がやってたり。
HISASHI 「本州はすげえな!」って(笑)。
──HISASHIさんはアニメ紹介番組のMCのお話が来たとき、率直にどういうご心境でしたか?
HISASHI 僕は自分がまだ知らないことに触れるのが好きなんですよね。アニメの中でも知らないジャンルに近付いてみたいし、「どうやってこういう作品ができたんだろう?」ということが気になる。もっとアニメのことを知ってみたいなと思ったので、「俺でよければ!」とすぐにお受けしました。
TERU また新しいことをするんだなってびっくりしたよ。最近、テレビがHISASHIの活動の拠点の1つになっているなと思っていて。バラエティ番組にHISASHIが出ているのを観ると、本当にすごいなと思う。
──TERUさんから見て、HISASHIさんって本当にアニメが好きなんだなと感じる瞬間はありますか?
TERU 昔からたくさんあります。ツアー中にバスで移動しているとき、マンガ全巻をドサっと足元に置いて読んでるのをよく見ていましたし。
HISASHI あったね。今はKindleで買ってるけど、タブレットがない頃は「漫画全巻ドットコム」というサイトで「NARUTO -ナルト-」を全巻買ったりしてました。当時は「野望の王国」にメンバーみんなでハマってたよね。
TERU あー!
HISASHI あれは素晴らしい! ギタリストのDAITAくんに「面白いよ」って紹介してもらって。特にTAKUROが大ハマりしてたな。
“GLAYアニメ・ゲーム班”の担当ジャンルは……
──番組収録中に“GLAYアニメ・ゲーム班”というワードが出ていました。「2人のジャンルがまったく別」と話していましたが、“GLAYアニメ・ゲーム班”の中でのそれぞれの担当ジャンルは?
TERU ゲームだと俺は「FF」(「FINAL FANTASY」)だったり、MMO(多人数が同時に参加できるオンラインゲーム)をやってることが多いけど、HISASHIは楽屋でずっと「原神」をやっていて。そういうところでジャンルは違うよね。
HISASHI そうだね。
TERU アニメ・マンガだと、僕は「週刊少年ジャンプ」系の作品が大好きすぎて。
HISASHI TERUは「ジャンプ」、俺は「ヤングサンデー」みたいな感じ(笑)。
TERU あははは。わかりやすいね。
HISASHI でも、俺も「ジャンプ」を読んでいたし、「FF」もやってたんですよ。ただ、そこから趣味、嗜好がどんどんディープなほうにいってしまった(笑)。
TERU (笑)。僕は「ジャンプ」系の中でも、スポ根アニメが好きなんですよ。
──スポ根好きとしての原点となったアニメはありますか?
TERU 「巨人の星」ですね。あれは毎日観ていました。
HISASHI 俺も観てたな。やっぱり娯楽がないと、アニメばっかり観ちゃうのよ(笑)。でも、「巨人の星」はスポ根アニメというよりは、ヒューマンドラマだよね。
TERU 確かにそうだね。
HISASHI TERUの好きなアニメジャンルが“スポ根”なら、俺はやっぱり“中二病”じゃないかな。俺自身、どこか患っている、そしてそれがまだ治ってないみたいなところがあります(笑)。
TERU はははは。
HISASHI さっき収録で庵野秀明さんのことを語ったけども、庵野さんの作品の感じがすごくわかるんですよ。庵野さんがずっと持っているもの、父親との関係性とか……宮崎駿さんもそうなんですけど、自分そのものがアニメになっていく、表現されていく、みたいな。彼らの作品を観ているとシンパシーをすごく感じるんです。アニメ作品は、作り手の方の人生だなと思いますね。
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宮崎駿さん、ありがとう