ナタリー PowerPush - ASPARAGUS
4年ぶり新作「PARAGRAPH」をメンバー3人が語り尽くす
個々に忙しいことをやってても、意外とシンプルに聴こえる
──待たされてハラハラしてましたけど、アルバムを聴いて、待った甲斐がある傑作だなって思いました。
渡邊 おっ!
一瀬 やったあ!
原 超うれしい。
──1曲1曲がきちんと練られていることも伝わってきましたし。
原 そうですね。ノブくんが曲のイメージをわりとどすんと固まった状態で作ってくるので、そのニュアンスを出したいっていうのと、自分で聴いたときに「俺だったらこういくな」っていうところとの、うまいバランスを考えられたかな。
渡邊 結構みんなの色が出せたとは思いますね。それが、バランス良く入っている感じなんじゃないかな。1曲に展開がいっぱいある曲も、一般的に“練られた曲”と言われるじゃないですか。だけど今作は、曲自体にはそんなに展開があるわけじゃないんですよね。それでも練られている雰囲気があるのは、それぞれのパートが練られているからだと思うんですよね。それがまた練り合わさって、みたいな。そういう感じで曲に表情がついて聞こえるんだと思います。僕が最初にざっくり作ってくる感じと、みんながアレンジしてからは、深みが変わりましたし。
一瀬 でも、忍が持ってくる時点でしっかり曲として練られていたと思いますよ。そこからは、さっき直央が言ったように、自分がこうしたいっていうところを提示して、それが忍の曲を良くしているのかどうか、自分のプレイを出しているだけなのか考えながら、引き算もして。自分を出すばっかりだったら、曲を壊しちゃう危険もあるから。デモの段階でドラムのトラックがいいと思ったら、そのまま叩いたりもしたし。それに、いい意味でも悪い意味でも、自分が叩けば自分の色になりますから。そういうことは初めて感じたかも。
原 考えて練っていった末に、すっと一本、線がある感じに持っていけたのかな。
一瀬 うん。個々に忙しいことをやってても、意外とシンプルに聴こえるのはいいことだと思って。忙しく聴こえるって、忙しくなっちゃってるだけの場合もあるから。それが良く作用するときもあるので、アレンジって難しいんですけどね。あとは、やっぱり忍の作ってきたメロディが良かったから、「こういう展開でパンチ出そうよ」みたいな欲にもつながらなかったんですよね。
自分らしさをもっと出していこうという気持ち
──確かにメロディも素晴らしいと思いました。忍さんは昨年、木村カエラさんの最新アルバム「8EIGHT8」を全曲プロデュースされましたよね。ポップアーティストの作品に深く携わった経験が、ASPARAGUSにも生かされているのでは?
渡邊 それはめちゃくちゃありますね。カエラちゃんのアルバム制作で、リフレッシュできたところもあるんじゃないかな。なんでもそうだけど、曲を書けば書くほど、ライブもやればやるほど、成長するじゃないですか。それを感じました。無理しない成長というか、自分らしさをもっと出していこうという気持ちになるというか。新しいことをしようみたいな感じではなくなってきてますね。自分らしさでうまく……。
原 自分らしさの幅が広がっていっている感じ。
渡邊 それでした(笑)。
一瀬 それは忍の経験があったからこそ表現できるようになったんじゃないかな。当然苦労もしているだろうけれど、イメージしたことを直接曲にする能力が上がってきていると思うんですよね。ただ単に新しいことをやろうとしたら、意外とできちゃうかもしれない。でも、自分らしさの範囲でいろいろ表現するのは大変だと思う。それがうまくなっている。
渡邊 それです(笑)。
──2人がすごくわかってくれているんですね(笑)。
渡邊 曲を書いているときって必死だから、自分でもわからないというか(笑)。まずは、メンバーに聴かせたときに喜んでほしいっていう気持ちがあるんですよ。カッコいいって思ってくれれば、もっといい曲になるようにアレンジしてくれるに決まっているし、俺もうれしくなるし。そういう相乗効果ってあるから。ただ、お客さんにいいと思われたいってなると、曲の作り方って変わってくるかもしれない。時代を読まなきゃいけないとか、ヒップホップのニュアンスを入れてとか、邪念が入ってくる(笑)。だから、小さなコミューンの中で、まず2人を口説き落とす“口説き文句”のように曲を作るんですけど、プラス、やっぱり自分がいいと思わないと自信を持って聴かせられないから、自分も口説き落とさなきゃいけない。そういう作り方は昔から変わらないと思います。ただ、前よりは遠回りしなくなりましたね。今でも直行ではないですけど、曲って、人によって耳に入ってくる部分は違えど、要点はあるじゃないですか。そこに辿り着くまでの時間はかからなくなったと思いますね。かと言って、自分は弾数はないんですけどね。曲を作りためている人もいるけど、俺は無から始めるんで。その貯蓄のなさは、日雇いで働いて、その日にもらった給料で晩ごはんを買う感覚ですね(笑)。
「『チョコレート』みたいな曲を頼むよ」
──とは言え、楽曲のバリエーションも今まで以上に豊かですよね。ラストの「I WISH」なんて、こんなポップでさわやかな曲をアスパラがやるんだ!ってうれしい衝撃がありました。
渡邊 これはですね、直前の曲の「PLASTIC LIGHTER」からベースのリフがつながっていて。リンクする感じで始まる曲があるといいねって3人で話している中、まず「PLASTIC LIGHTER」が先にできて。そしたら曲が暗めだったんで、明るく切り替わるほうがいいなと思って書いた曲なんですよね。そうしたら、こんなん出ましたっていう(笑)。でも僕は、曲を書いているときに、目標どおりになったことはないんですよ。コンセプトを立てて曲を作ったって話しているアーティストって多いけど、本当だとしたらすごいなって。僕は今までそれができたことはないから。参考にする曲があったとしても、そのとおりになったことはないし。でも、いい曲だからいいか、みたいな。
──じゃあ例えば、アルバムのバランスを見て、明るい曲が足りないから作ろうと思っても……。
渡邊 今回そうやって作った曲が暗かったんですよ! うちの社長から「もうちょっと明るくておセンチな曲を」っていうオーダーがあったんですけど、暗くなっちゃったんです。
──それはどの曲ですか?
渡邊 「We'd better」です。「カエラちゃんに書いた『チョコレート』みたいな曲を頼むよ」って言われて。
一瀬 そんなこと言ってたの!? クソジジイだなー(笑)。
渡邊 がんばります!って言って作ったら“まっくろくろすけ”みたいな曲になっちゃった(笑)。この話、2人には言ってなかったんですけど。思ったとおりにはいかないものですよね。
一瀬 それが楽しいんじゃないの? 違うの?
渡邊 うーん、結果良し、みたいな。自分でも楽しんで作ってますよね。ただ、オーダーどおりにはできないなって。
──例えば、カエラさんの曲を書く場合、オーダーがあったりはしないんですか?
渡邊 人のためだと書けるのかもしれないです。でも、カエラちゃんに作った曲も変な方向に行ってましたけどね。自由な曲がアルバム全体の3分の1で、オーダーどおりに作れた曲が3分の2くらい。
──そういう意味でいうと、ASPARAGUSは全部が自由な曲ですもんね。
渡邊 そうなんですよ。タイアップの話が来なかったんで、全部自由な曲になっちゃいました。あははは!(笑) オーダーが来たのは社長からだけで。
一瀬 ぜひ、「チョコレート」と「We'd better」を並べて聴いてほしいですね(笑)。
渡邊 一応ベクトルは一緒だと(笑)。
CD収録曲
- Analog Signal Processing
- BEAT UP
- MEND OUR MINDS
- I'm off now
- DIDDY-BOP
- THE FUTURE IS IN ONE SECOND
- LIVING HELL
- CLOSED LOVE
- HUMDRUM
- We'd better
- ABYSS
- Volt-Ampere
- PLASTIC LIGHTER
- I WISH
ASPARAGUS
“PARAGRAPH TOUR”
- 2012年3月10日(土)
神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2012年3月11日(日)
東京都 下北沢SHELTER
OPEN 18:30 / START 19:00 - 2012年3月18日(日)
福岡県 福岡DRUM Be-1
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2012年3月24日(土)
栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2012年3月25日(日)
宮城県 仙台CLUB JUNK BOX
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2012年3月31日(土)
長野県 長野CLUB JUNK BOX
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2012年4月1日(日)
新潟県 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2012年4月7日(土)
北海道 札幌cube garden
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2012年4月14日(土)
愛知県 名古屋APOLLO THEATER
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2012年4月15日(日)
大阪府 梅田Shangri-La
OPEN 18:00 / START 18:30 - 2012年4月22日(日)
東京都 Shibuya O-EAST
OPEN 18:00 / START 19:00 - 料金:前売3000円 / 当日3500円
ASPARAGUS(あすぱらがす)
2002年2月結成のスリーピースバンド。2002年10月、ディズニー楽曲のトリビュートアルバム「DIVE INTO DISNEY」に「いつまでもずっと」(くまのプーさん)のカバーで参加し、好評を博す。同年11月には1stアルバム「Tiger Style」を発表。2004年には2枚のアルバム「KAPPA I」「KAPPA II」を、それぞれ別のレーベルから同時発売し、話題を集める。2006年末のメンバーチェンジを経て、現在は渡邊忍(Vo, G)、一瀬正和(Dr)、原直央(B)の3人で活躍中。2012年2月、約4年ぶりのフルアルバム「PARAGRAPH」をリリースした。なお、渡邊は木村カエラのバックバンドや彼女への楽曲提供&プロデュースでも知られている。