ASP「BOLLOCKS」インタビュー|客席が埋まらない現実を受け止め、彼女たちは次なるステージへ

BiSH、豆柴の大群らが在籍する音楽事務所WACKのアイドルグループ・ASPは、3月に結成1周年を迎えた。精力的な活動を続け、2月には始動から1年を待たずに東京・Zepp DiverCity(TOKYO)でのワンマンライブにチャレンジ。熱量たっぷりのパフォーマンスを展開したが、チケットの売り上げはキャパシティの半分にとどまった。

音楽ナタリーではASPの2ndシングル「BOLLOCKS」のリリースを記念して、メンバー5人にインタビュー。1月発表の2ndアルバム「PLACEBO」リリースから数カ月の間に彼女たちは何を感じ、何を思って活動を続けてきたのか。インタビューでは悔しさをにじませながらも、現実を受け止めて前に進む彼女たちの決意、そして成長ぶりを感じ取れるだろう。シングルの話題はもちろんのこと、今回は特典会でのエピソードや、メンバーそれぞれが今ハマっていることについても話を聞いた。

取材・文 / 田中和宏撮影 / 塚原孝顕

活動1周年を迎えて

──ASPの結成1周年おめでとうございます。

一同 ありがとうございます!

──2年目に向けて、まずASPとして1年目にできたこと、できなかったことを聞かせてください。

ユメカ・ナウカナ? コロナ禍の影響でライブが全然できなかったときと比べたら、単純にライブができている現状がよかったと心から思います。ツアーで各地を回れたし、いろんな場所でASPの音楽を届けられてうれしかったです。あとはメンバーそれぞれの仲が深められたのもよかったです。

ナ前ナ以 できなかったことは、公演によっては客席を埋められなかったこと。しかもそれがけっこうあったのが悔しかったことかな。曲だったり衣装だったり、素敵なものを私たちはたくさんいただいてるんですけど、自分たちがそれにまだ追い付けてなかったのかなとか、もっとこういうことできただろうなって。渡辺(淳之介 / WACK代表)さんはよく「後悔するな」と言うんですけど、この1年は後悔することがいっぱいありました。そのときは全力だったとしても、もっとできたなって今は思います。

モグ・ライアン 私も同じことを言おうと思ってた。初めてのZepp(DiverCity[TOKYO])ワンマンが埋まらなかったのがすごく悔しかったので、次は全部のライブを満員にしたいと強く思いました。どんなに全力でやってても、発信の仕方や見せ方もちゃんと考えないと伝わらないこともわかりました。

ASP

ASP

──改善したいポイントがそれぞれ見えていると。ツインズのお二人はどうですか?

マチルダー・ツインズ SNSの使い方にもいろいろな方向があるんじゃないかと思ってて。もうちょっと頭を柔らかくして発信していきたいと思いました。

ウォンカー・ツインズ 今、うまく言葉が出てこない感じが悔しいです。ついつい食べた物が戻ってきちゃうんです。

──素直に思ったことを言えないと疲れますよね。

ウォンカー 素直に嘘をつかず、自己否定をしない、人と比べないをモットーに生きます! そうやって生きるといいですよって言われましたから。

ユメカ え、誰に?(笑)

ウォンカー 数年前に会った占い師に。でもまだまだなんで。

──ASPはデビューから1年ですが、曲のテイストに関しては新作を含め、少しずつ変わってきてるような印象です。

ナ前ナ以 そうですね。でも変わるというより広がってるイメージです。

──90年代パンク / ロックなどのいろんな部分を取り込み、攻めた楽曲を発表し続けているのはASPの魅力の1つですよね。「懐かしい感じがする」と言ってくれる人もいるんじゃないですか?

モグ うちの親父がそう言ってました。「この曲は〇〇のオマージュだよね」みたいにいろいろ言いたいおじさんなんです(笑)。別に親父とあんま話したくないんで、私からは聞かないですけど(笑)。

ライブは「毎日が命日」くらいの気持ちで

──2月に行われたZepp DiverCityでのワンマンライブ「ANTi SOCiAL PAiNS」では、開演前に渡辺さんが挨拶して、「チケットが半分くらいしか売れなかった。逆に火が付いた」と話していました。実際フロアに空席がありましたが、ステージでのパフォーマンスはすごく気合いが入っていて、目の前にいるファンを大切にしていることが伝わってきました。メンバーはMCで特に悔しいといった発言はせずに駆け抜けていましたが、実際はどんな気持ちだったんでしょうか。

ユメカ 新メンバーのマチルダーとウォンカーが入って、オリジナルメンバーのナアユが抜けたのが去年の11月。そこから一気にZeppって感じだったので、実際のところ私はよくわからずにいたんですよ。ASPが本当にZeppに立つのかすらも頭の中で整理できてなくて。だから満員になってないことをいつの間にか考えないようにしてました。でもライブ前日に渡辺さんから電話をもらって「悔しいんじゃないの?」と聞かれたときに、めっちゃ涙が出てきて、悔しかったことに気が付きました。ASPに自信があるのに、Zeppが埋まらなかったことを考えないようにしてる状況も悔しかったから、そんな気持ちを全部ライブでぶつけました。悔しさを強さに変えて、目の前にいる人たちを楽しませたい。その気持ちでやり抜こうと決めて、とにかく全力でぶつかりにいきました。

ユメカ・ナウカナ?

ユメカ・ナウカナ?

──メンバー全員、気合いが入ってましたし、ツインズのパフォーマンスも気合いが入ってるように感じました。

ユメカ 確かにライブ写真を見ても2人の表情が変わってると思いました(参照:WACK所属グループASP、初Zeppワンマンで半分埋まらずも28曲を全力披露「諦め悪くいく!」)。

ウォンカー うれしいです! 変わりました!

マチルダー おったまげですね! 加入当初はよくわからないままというところもあったけど、Zeppでは「私はASPのメンバーだ!」と思って立てました。

ウォンカー 必死でしたから、「記憶にございません」という感じで、一瞬のことでした。

ナ前ナ以 政治家みたいだ(笑)。

──Zeppワンマン後には女性限定ツアーも行われました。はじめましてのお客さんもいたんじゃないですか?

ナ前ナ以 確かにはじめましての人が多かったですね。「友達と来たよ」って子も多くてうれしかったよね。

モグ うん。Zeppのあとにいつもやっている規模のライブハウスに立ったら、お客さんの顔が近いし、表情がよく見えました。目が合ったときに喜んでくれているとこっちもうれしくなります。女限は改めてお客さんがいてくれるから活動できていることを実感できたし、私はこの人たちのためにやっていくんだと強く思えました。

モグ・ライアン

モグ・ライアン

ユメカ 女の子限定ってだけで、いつものライブハウス以上に距離感が近い感じがしたよね。

ウォンカー アンコールのMCでフリートークを初めてやってみたら、下ネタですごく笑ってくださって。男の人の前でやるよりも女の子のほうがウケがよくて安心。

ナ前ナ以 男の人がいたら言えないようなこと言ったもんね(笑)。

ユメカ そうそう。とんでもないことを(笑)。

──ASPを観たことがない人にその魅力を伝えるとしたら、それはどこにあると思いますか?

ナ前ナ以 自画自賛になりますけど、曲がめちゃくちゃカッコいいです。90年代のパンクとか音がガビガビしてる感じというか。それを女の子がやるのはギャップがあると思ってて、面白いと思ってもらえたらうれしいですね。

ユメカ 「死ぬ気で」と言ったら簡単すぎるんですけど、いつもその日が命日って気持ちでやってます。

モグ そう。「毎日が命日」なんですよ。

ユメカ それをテーマにステージでパフォーマンスしているので、その気持ちが伝わるライブができていたらいいな。音源ももちろんいいですが、でもライブのほうがさらによさを感じてもらいやすいグループだと思うので、ぜひとも足を運んでほしい所存でございますよ!

ウォンカー 来てほしいでございます!

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