BiSH、BiSらが所属する音楽事務所WACKの新たなアイドルグループ・ASP。5月に衝撃的なタイトルの1stアルバム「ANAL SEX PENiS」でデビューした彼女たちは、これまでに2回のツアーを行ってきた。ツアー各公演のチケットはソールドアウトし、躍進を続けている。
そんなASPが9月22日に1stシングル「the MAN CALLiNG」をリリースする。音楽ナタリーではメンバーのユメカ・ナウカナ?、ナ前ナ以、モグ・ライアン、ナアユにインタビュー。この4カ月での経験を振り返りつつ、自分自身、そしてメンバーそれぞれについて思っていることを中心に話を聞いた。
取材・文 / 田中和宏撮影 / 塚原孝顕
デビューからの4カ月「すべてのことが衝撃的」
──ASPは5月にデビューアルバム「ANAL SEX PENiS」を発表してから、初ワンマンに初ツアー、初特典会と初めて尽くしの日々を過ごしてきたと思います。改めてデビューからの4カ月を振り返って、印象的だった出来事はありますか?
ユメカ・ナウカナ? 私はすべてのことが衝撃的でした。ASPで活動する前から、自分は常に本気でやってたと思っていたんですけど、ASPとして2本のツアー(「ASP's on FiRE TOUR」「TOUR STARFUCKERS」)を回って、自分の知る本気をさらに超えるような本気を出していると実感しました。初めてのワンマンライブや、ツアーでの1公演1公演、すべて自分の中に刻まれている感覚です。
ナ前ナ似 ナアユちゃんがいなくなっちゃった時期があったのは大きかったです(※ナアユは7月26日に新型コロナウイルスの濃厚接触者に認定され、8月9日まで自宅待機となった)。「TOUR STARFUCKERS」の初日と2公演目は3人体制でやることになって、どうしたらいいかわからなかった。でも私たちはいつだって“行かなくちゃ”だから。そういう状況でナアユちゃんの大切さに改めて気が付きました。
モグ・ライアン 1人いないだけですごく寂しくて。ずっと4人でいたし、ナアユちゃんの存在は大きかった。いない期間、ステージには3人しかいないので、私はいつも以上に大きく踊ろうとか、来てくれた人に「3人でもASPはすごい」と思ってもらえるようにずっとやってました。なんとかやりきった感じですけど、ナアユちゃんが戻って来たあともそういう気持ちが残っていたので、成長につながったと思います。
──そんなナアユさんはどうですか?
ナアユ ツアーの一部に参加できなかったことは自分にとってもASPにとっても大きい出来事でした。ツアーでは初めて行く場所もあったし、全部の場所で初めて会える人もいたはずですし。とにかくASPはこの夏の全国ツアーに向けて気合いが入っていたから、一瞬でもお客さんに会えなくなったのは悲しかったです。このツアーを通して、“全部の感情”になりました。
──喜怒哀楽?
ナアユ はい。今の状況でライブができていることも改めて奇跡だと改めて思ったし、実際に参加できない状況に自分がならないと気付けなかったこともいっぱいありました。ツアーでは毎回「拝啓 ロックスター様」を3連発してるんですけど、ツアーファイナルでは「キツイけどもう1回やりたい!」って、3回目が終わってほしくないと思うくらい、ツアーが終わるのが悲しく感じるくらい幸せでした。
ユメカ ナアユちゃんがいない日のライブで、ふと「いないんだ……」って寂しくなったんですよ(笑)。だけど、ナアユちゃんが帰ってきて、ふと横を見たらナアユちゃんの顔があって、笑っていて。当たり前のことが当たり前じゃない、ASPとして全員そろった状態でパフォーマンスができている今を大事にしようと改めて思いました。
──ASPは始動発表時にはマスクをしていて、「ANAL SEX PENiS」という激しいタイトルのアルバムを出して、ミステリアスで過激なイメージでの露出が続いていました。そういう中でのグループへの期待がファンの中で膨らめば膨らむほど、メンバーはプレッシャーや不安を感じることもあったんじゃないかなと。
ナアユ プレッシャーはありましたよ。ASPはWACKのグループが好きな人でも突然出てきたように感じたはずだし、私はWAggからASPに入ったこともあって、メンバーのバックグランドや経験値もバラバラ。それぞれ不安がなかったわけじゃないけど、すべてに打ち勝つ気持ちのほうが強かったです。
ナ前ナ以とモグ・ライアンの活躍
──ここから1人ずつにフォーカスして話を聞きます。まずナ前ナ似さんはエモーショナルなASPの中でも一際エモーショナルな歌声で。アーティスト活動はASPが初めてということですが、右も左もわからないところからここまで活動してきて、感動したことは?
ナ前ナ似 MVです。不思議な感覚になるんです。今までリスナーとして聴いてきたCD、観てきたミュージックビデオというものに自分の声とか姿が入っていて、私がWACKに入りたかったのは、WACKには芸術的な作品とか、まるで美術品を見ているような作品が多かったからで。私もこんなことができたらいいなという思いでWACKに入ったので、それに参加できていること、自分もその作品の一部になれていることにすごく感動しています。
──メンバーから見て、ナ前ナ似さんはがんばってますか?
ユメカ はい! 本当にすごいです。ナイナイの姿を見て、私自身まだまだ足りないなと思いました。自分のほうが先にいろいろ経験しているから、パフォーマンスにしてもなんにしても圧倒させたいと思っていつもやっているんです。だけどナイナイは本当に勢いがすごすぎて、ちょっとでも油断したら絶対に抜かされてしまうと思うのでがんばらなきゃって。もっと急ぎます、私(笑)。
──経験者に追随する勢いで実力を身につけていると。
ユメカ そうなんです! やばやばやばいぞ!みたいな(笑)。身が引き締まる思いです。ナイナイのライブ写真を見ても「これはできないな……」って思ってしまうくらい表情が豊かで、憧れを感じるくらい。今の自分にないものがナイナイにあるので、正直に言えば悔しいですよ(笑)。でも本当にがんばっているし、カッコいいって思います。
ナ前ナ似 (首を横に振る)
──モグ・ライアンさんはナ前ナ以さんについてどう思います?
モグ ライブ中の表現力がすごいと思います。いろいろ相談できる人で、アイデアもたくさんくれるんですよ。振り付けを作るのも上手で、頭の中が面白そう。私の固い頭では思い付かないような発想が出てくるので、グループとしてすごく助かっています。あとは毎日カッコいいです。
ナ前ナ似 (首を横に振る)
──謙遜してますが、普段4人でいるときはどういう感じなんですか?
モグ ふわふわしているときもあれば、すごくバチバチしているときもあります。とにかくライブ中はカッコいいです。
──まだまだミステリアスな印象なので今後にも注目したいと思います。続いてモグ・ライアンさんについて聞きたいんですけど、前回のインタビューでは、かなりの分析家であり野心家という印象でした(参照:ASP「ANAL SEX PENiS」インタビュー)。
モグ そんなことないです(笑)。
──論理的に考えるほうですか? それとも感情の赴くままに動くタイプですか?
モグ まだまだ中途半端ですね。そこまで論理的にうまく考えられているわけでもなければ、感情的に動くのも怖くてうまくできない感じ。でもそんなにクヨクヨ考えても始まらないと思っているので、感情の赴くままにって今は考えています(笑)。
ナ前ナ似 モグちゃんはとても活躍してます。ASPにいなくちゃいけない存在だし、私が言うのはおこがましいんですけど、初めて会ったときの練習と最近のライブでは全然違うんです。表現の仕方とか力の入れ具合とかを見ても成長がすごい。すごくがんばったんだなって。元から持っているものもすごいなって、モグちゃんの歌詞からも思いましたし、私もいろいろ負けてらんないなって。入った時期も一緒だからこそ、私ももっとがんばらなきゃって鼓舞してくれる存在です。
ナアユ モグちゃんに限らず、私はみんなを尊敬しています。自分が持ってないものを3人が持っていて、パズルのピースみたいにパチッとハマっていて。その中でモグちゃんは頭がいいんです。MV撮影で衣装が濡れるときがあって、みんなパンツを忘れたんですよ。でもモグちゃんだけはそれを覚えてて、着替えをしっかり持ってきた。すっごく頭がいいなって。
モグ それ、頭いいって言う?(笑)
ナアユ (笑)。ナナシちゃんも言ってたように、私も言える立場ではないですけど、モグちゃんのダンスが以前よりも増して激しく踊るようになってるので、私ももっと大きく動かなきゃって思うときがあります。
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不安におびえていたナアユも今は昔