アイドルはロックスターの夢を見る
──楽曲についても伺います。「拝啓 ロックスター様」はASP始動のアナウンスとともに渡辺さん歌唱による“FAKE”バージョンが無料公開されました。90年代ロックの雰囲気もあり、ロック好きに響くであろうメッセージ性とサウンドを兼ね備えたパンチのある楽曲です。
ユメカ この曲を初めて聴いたとき、「うわー!」って思わず叫びました。こんなにいい曲をいただけたことがうれしくて! メンバーも歌詞を提出するんですけど、渡辺さんの作詞スピードが早くて、この曲はすぐ取られました。渡辺さんの歌詞に勝てないなーと。楽曲と渡辺さんの歌詞が調合されたらメガ進化しちゃって! これは売れちゃうぞ!と思いました。ははははは(笑)。
渡辺 作詞をしてもらうにあたって、課題曲というか、聴いてほしい楽曲群をまとめて共有したんですよ。主に90年代のアーティストですね。BLANKEY JET CITY、THE HIGH-LOWS、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、フィッシュマンズ、小沢健二……と雑多に送ったんですけど、歌詞や歌の目安にしてほしいということで。メンバーには肩肘張らず、簡単な言葉でちゃんと伝わる音楽を目指したいということをまずは伝えて、僕もその意図に沿って「拝啓 ロックスター様」を作詞しました。90年代の人たち、それこそ甲本ヒロトさんとかは言葉こそ違うにしてもアナルセックスペニスみたいなことを生放送で言うような人でしたよね。そういうことを回顧するというか……改めて今、僕たちがやりたいなと。アルバムのリード曲ではないんですけど、ASPを始めるにあたって非常に思い入れの強い曲になりました。3期BiSで言う「STUPiD」(2019年8月発表のBiS 1stアルバム「Brand-new idol Society」収録曲)のような立ち位置の楽曲ですね。
モグ この曲の歌詞は本当によくて、私が書かなくてよかったと思いました(笑)。親に聞かせたら、「80〜90年代のロックっぽい」と言っていて、親父は「めちゃくちゃ好き。羨ましい」って。
精一杯、歌で伝えていく
──アルバムではメンバーの中だとユメカさん、ナアユさん、モグさんが作詞をしています。ユメカさんは以前より素直な言葉が出ているような。
ユメカ そうですね。私が作詞した「BE MY FRiEND」は、みんなお友達!っていう内容です。小学校のときに外国人の子が一緒のクラスで、めっちゃ強面だったんですよ! でもしゃべったら面白くて今でも仲良しなんです。いい意味で、「怖そうだけど超優しかった!」とか「強面の人が実は子犬を飼っていた」みたいなギャップを感じるタイミングが大好きで。だから誰でもみんなお友達になろう!と歌ってます。
──ナアユさんの歌詞はネガティブな部分がありつつも、その思いを昇華させようとしている感じがします。
ナアユ 私は「被害者ぶるな」「DiVE」の2曲を作詞させていただいて、最初にできたのが「被害者ぶるな」です。ほかの曲の作詞は採用されなかったんですが、採用されたこの曲の歌詞は悩まずに言葉が出てきました。歌詞のテーマは「過去の自分」で、自分のことを好きになれなかったWACKに入る前の自分に対して、「バカバカ! もっとちゃんとしてよ!」と今の自分が怒っています。昔の自分と見つめ合う曲でもあるので、歌うたびに気が引き締まりますね。過去の自分を思って書いた歌詞だけど、気が緩んでいると感じた瞬間にも響く内容で、「動け! 生きろ!」という気持ちになります。
──モグさんは「NOW or NEVER」「GO STRAiGHT」「TRUST MYSELF」の3曲で作詞を担当しています。「WACK合同オーディション2020」での体験がテーマになっている歌詞もあるそうですね。
モグ 作詞は初めてだったので、過去の自分に対して言葉をぶつけることしかできなかったんです。なんでも私はできないと決めつけるクセがあるので、そういうのはもうやめようと思って素直に書きました。
──モグさんはWACKと関わるようになってから、いろいろと価値観が変わってきたのかなと。
モグ そうですね。特に2020年の合宿を経験してから生活のすべてが変わりました。日頃からWACKのことばかり考えていて、学校にいてもそう。「WACKちん」にも参加していたので、次はどんなことをアピールしようか考えてたり、渡辺さんがどうしたいのかも、既存グループの動かし方を見て分析したりしてました(笑)。歌詞の全部が合宿からというわけではないんですけど、最初は全然書けなくて、渡辺さんに相談しました。そしたら「やり切るしかないんだよ」「ダサくてもいいんだよ」と言われたので、改めて「やるしかないや」と。なので、歌詞がうまく書けない気持ちも歌詞にしてしまいました(笑)。
──「やり切るしかない」と言われたあと、煮詰まらなくてよかったですね。
モグ 全然書けないという状況でも、ここで耐えられなかったらダメだと思って必死になっていたので、3曲も採用していただいて驚きました。ちょっと恥ずかしい感じも正直あるんですけど、選ばれたからには自信を持って歌っていきたいです。
──今作のリード曲「A Song of Punk」とアルバム全体についても聞かせてください。
ナ前ナ以 私たちはまだ何者でもなくて、不安なこともたくさんあるけれど、やらなくてはいけない。行かなくちゃ。私たちには歌で伝えられる思いがあるから。精一杯、歌で伝えていく。悩んでいる人、つらい人に私たちの歌を届けて、勇気を与えたい。「A Song of Punk」はそんな私たちの始まりの歌です。アルバムには13曲収録されてるんですけど、皆さんに聴いていただいたら、自分の境遇に当てはまる曲がきっとあると思います。松隈(ケンタ / WACKグループの楽曲を数多く手がける音楽プロデューサー)さんと渡辺さんが作ってくださった楽曲は力強くて美しくて。メンバーが作詞した曲も、メンバーそれぞれのカラーが出ているので、聴いていて楽しくなれて、元気になれるアルバムです。
ASPは未知なる存在
──では最後に、ASPとしての意気込みを聞かせてください。
ユメカ はい! みんなで言おう。せーの!
一同 「未知」です!
──知られざる存在ということですか? ダークホースというか。
ユメカ これは始動してからしばらく顔を出してこなかったという状況に由来します。私たちはまだまだ未知です。未知とは果てしないものですよね。未知であればどこまでも行けます。未知を糧にどこまでも突き進めたらと思い、私たちは今、未知をグループのテーマにしています。私たちは未知なりに突き進みます! これから活動を重ねていきながら、新たな未知を生み出し続けられたら面白いと思っています。私たちから未知な部分がなくなることはきっとありません! ずっと続けていたら、永遠に未知! 未知を突き進んでいきます。それを面白くずっと見ていただいて、未知な部分がなくなるくらい追いかけてもらえたらうれしいです!
モグ ASPは始まりからミステリアスでした。グループ名の意味もすごいし、新しい情報が出るたびに私自身ワクワクしています。先々がどうなるかわからないまま楽しめているので、いろんな人を巻き込んで一緒にワクワクできたらいいなって。この4人、いいメンバーだと思っています。始まったばっかりだから、BiSHとかBiSを知っている方がいてもすぐにASPまではたどり着かないと思うんです。でもいつかは「WACKと言えばASP」と言われるようなグループにしたいです。
ライブ情報
- ASP「これはASPのワンマンです。」
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- 2021年5月30日(日) 東京都 中野Heavysick Zero OPEN 16:30 / START 17:00
2021年5月27日更新