WACKが仕掛ける“未知なる”アイドル ASP始動 | 処女作「ANAL SEX PENiS」

音楽事務所WACKが世に送り出す新たなるアイドルグループ・ASPが、5月26日に1stアルバム「ANAL SEX PENiS」でデビューを果たした。

ASPは今年3月に行われた「WACK合同オーディション2021」の最終日に覆面姿でお披露目された新グループ。素性のわからないメンバー構成や過激なTwitterハッシュタグ「#ANALSEXPENiS」など、ミステリアスな雰囲気で国内外の音楽ファンから注目を浴びていた。そしてTwitterフォロワー数が2万人を超え、デビューアルバム発売の情報出しと同時に、メンバーがユメカ・ナウカナ?(ex. CARRY LOOSE)、ナ前ナ以、モグ・ライアン、ナアユ(ex. WAgg)の4人であることが明かされた。

音楽ナタリーではASPのデビューを記念して、メンバーおよびWACK代表・渡辺淳之介にインタビュー。グループ結成やメンバー加入の経緯、楽曲の仕上がり、活動への意気込みを語ってもらった。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / 中野修也

帰ってきたユメカとナアユ〜ASP始動

──ASPはミステリアスな雰囲気がありますので、まずは自己紹介をお願いします。

ユメカ・ナウカナ?

ユメカ・ナウカナ? はい! ユメカ・ナウカナ?です! 私は2020年10月にCARRY LOOSEが解散してから、みんなの前に出る機会がありませんでした。今年1月からWACKツアー(WACK所属グループ全組参加のイベントツアー「TO BE CONTiNUED WACK TOUR」)があっても、Twitterを見ればグループさん同士が写真をアップしている中、私はもちろん参加できず、ずっと家にいました。CARRY LOOSEと同時期にデビューした3期BiSさんを見ると、キラキラしていて。解散後、もうダメかなと思うこともあったんですけど、そういうときに気持ちを高めてくれて、我慢する力をくれたのはWACKの音楽でした。CARRY LOOSE解散後は自分でどうにかしようとしても、みんなの前に出られないことがわかっていたので、とにかく渡辺さんを信じて、ひたすら待ち続けました。……そしたら春が来ました! 私は冬眠から目覚めて世に出ることができたんです! 私にとってASPは過去のキャリアを含めて3度目の正直になるので、何千年、何億年も続けるくらいの勢いでみんなと一緒にがんばりたいと思っています。

──ユメカさんが在籍していたCARRY LOOSEの解散は、ASP結成につながる部分だと思います。改めてASP結成の経緯についても聞かせてください。

渡辺淳之介(WACK代表) CARRY LOOSEが2020年10月に解散したところから、パン・ルナリーフィとYUiNA EMPiREはWAggでもう1回がんばろうかという話をしていました。僕自身、CARRY LOOSEに対して思うところがありまして。1度はツアーを回れたんですけど、コロナ禍の影響で次のツアーはできず、リリースもストップしてしまい……そんな状況でユメカとウルウ・ルに対して、自分なりの教育がしっかりできていなかったことがすごく心残りだったんです。なのでユメカとウルウ・ルには解散後すぐに「新グループを結成します」と伝えていたんです。伝えてたよね?

ユメカ はい! 伝えていただきました! ありがとうございます!

渡辺 そこが始まりですね。そんな中でウルウ・ルが体調を崩して退所するということがあって、紆余曲折ありながらユメカとはやりとりをしていて。それと平行してメンバーをどうしようかという点で難航していたこともあって、「新グループを始動させよう」という具体的な話になったのは1月に入ってからです。とは言いながら、もう12月には指針となる曲はできていて、それが今作のリードに当たる「A Song of Punk」になります。

──グループのコンセプトについては、メンバーの紹介後に聞かせてください。続いてナアユさんはWAggでの活動中に休養していましたが、休養明けにASPに加入しました。

ナアユ

ナアユ はい。私の名前はナアユと言います。2019年の「WACK合同オーディション」に合格してWAggに加入し、1年半くらい活動してきました。去年の10月末に活動を休止したのですが、ASPの始動とともに復帰することになりました。具体的に新グループの話をいただいたのは、2月になってからです。

渡辺 ナアユにはもう話したことなんですけど、もともと「PARADISESとWAggの素晴らしき未来」(2020年10〜12月に行われたWAggメンバー向けオーディション)のナアユの発言を聞いていて、PARADISESに入れるかは別として、どこかしらのグループに昇格させたいと思ってたんです。そんなタイミングで活動を休止したので、いつか戻してあげたいということを話して、ナアユがいけるのならば、ASPで行ってもらおうかなと。

晴れてWACK入りモグ・ライアン、謎の人物 ナ前ナ以

──モグ・ライアンさんは「WACK合同オーディション2020」の候補生“インポッシブル・マイカ”として参加。「Project WACKちん」にも“びすこ”として参加していました。WACKオーデでは惜しくも脱落しましたが、多くのWACKファンから注目されていました。

モグ・ライアン

渡辺 モグ・ライアンに関しては、合宿中から魅力を感じていて、ぜひ取りたいなという気持ちではいました。でも合宿のときは僕自身も賭けに出まして、彼女は敗者復活を賭けたオセロ対決をしてもらったところで負けたんです。変な言い方をすると、「よし、負けた」って思ったんですよ。オーディションに密着したドキュメンタリー映画「らいか ろりん すとん -IDOL AUDiTiON-」でも話したことなんですが、このまま合格しても辞めちゃうだろうなと。つまりあのときオセロに勝っていたら、今ここにいないかもしれないですね。オーディションは負けたら終わりで、WACKでの未来が一切なくなるんですよね。もちろん勝ってたらいろんな活動が始まるけど。負けた理由を考えてほしいなというところはありつつ、「次来たら、取ろう」と思ってました。

──もう応募してこない可能性もあったわけですよね?

渡辺 そうですね。もちろん応募してこない可能性もあるけど、それはその人次第ですから。「応募してきてくれないかなあ」と去年の合宿が終わった時点で思ってましたけど、当時は「入るグループがないな」というのもあったので、どうしようかなとも考えてました。そして去年の6月に「Project WACKちん」というオーディションが始まり、モグ・ライアンはびすこという名前で参加してくれました。僕がいいなと思ったのは、客に媚びたり、なびいたりしなかったところですね。「ああ、こいついろいろ変わったな」と思いました。あとは僕が何を好きかとかけっこう分析してるんですよね。タイミングが合えば連絡しようかなと思ってました。

──光るものを感じたわけですね。

渡辺 実はもっと遡るとWAggの1期生オーディション(2018年)で合格してるんですよ。でもそのときは最終的にお断りされたんです。

モグ・ライアン 私が断ったわけではないです。いろいろな都合で……。

渡辺 いろいろ事情があったとは言え、もともと気になる存在ではあったんです。

──モグさんはなぜWACKのオーディションを受け続けたんでしょう?

モグ オーディションを受けてから、自分に未来があると感じて。WACKに入りたい気持ちがあれば、学校だってなんだってがんばれるんだって思ったので、WACKのことをいっぱい調べて、絶対に入ってやるぞと。でも最初は親をどうしても説得できなかったので、「アイドルなら乃木坂46とかAKB48だったらよかったのに」と言われたことにすごく腹が立って。「だったら合宿(WACKオーデ)に行ってやる」という気持ちでいたので、ほかのオーディションは受けませんでした。選考を終えて合宿に行くと決まってからは、親をなんとかして説得しましたし、合宿に向けて体育の授業で20分間走とかを急にがんばるようになってました(笑)。

──強い意志が伺えますね。昨年3月の合宿で脱落したあと、6月に始まった「WACKちん」に応募した理由は?

モグ 「WACKちん」はいつものオーディションとは違うので、「これは私を獲るオーディションじゃない」と思ってました。男女混合だし、世界の人が対象ですし。でもやらなかったら、「入る気がないのかな」と思われると思って、受けました。

渡辺 読みが深くてびっくりだ。その通りだわ。

モグ よかったです、間違えないで。新グループについて話をいただいたときは大喜びでした。これまでたくさんWACK所属グループのライブにはお客さんとして足を運んでいたけど、これからはステージに立つ側なのでまだ全然想像ができていません。やってみるまでは分析が通用しない部分というか。でも自分がお客さんだったときの気持ちはこれからも大切にして活動していきたいです。

──最後にナ前ナ以さん。ASPで唯一、加入の経緯がわからないメンバーです。

ナ前ナ以

ナ前ナ以 ナ前ナ以と申します。私は……(渡辺のほうを見ながら)言っていいですか?

渡辺 え、いいよ。

ナ前ナ以 今回の「WACK合格オーディション2021」に応募しまして、合宿に行く前に……合格をいただきました。

──そうなんですか?

渡辺 「WACK合同オーディション2021」に応募してきて、面接もしたんです。でも彼女が合宿に参加すると確実に落ちるので、僕のほうで先にキープしたという。あとASPに関しては合宿の参加者から加入させるつもりがなくて、始動タイミングで誰がメンバーかわからないというミステリアスな状態にしたかったんです。そんな中で、ナ前ナ以を合宿には参加させず、先に取ったと。だって合宿を見ててわかったと思うけどさ、自分だったら落ちると思ったでしょ?

ナ前ナ以 ……はい。私はモグちゃんみたいに前からWACKを知っているわけじゃなくて、最近知ったんです。WACKの楽曲とかプロモーションって、美術品を見ているみたいな、芸術的なもののように感じました。私がここでこれを歌いたいとかアイドルになりたいとかそういうことじゃなくて、本当になんとなく生きている人生を変えたいなと思って、なんとなくオーディションを受けてしまいました。

──「なんとなく」ということですが……歌うことは好きだった?

ナ前ナ以 ……好きじゃないです。

渡辺 そうなの?

ナ前ナ以 好きです。

渡辺 どっちだ。そう言いながらさ、すごいワガママなこと言ってたよね? 「ぶっちゃけ新グループとか興味ないし、BiSに入りたいだけなんだ」みたいな。

ユメカ おうおうおう! どういうことだ! 聞いてる話と違うんですけど!

渡辺 え、違うの?

ユメカ 「『SCHOOL OF WACK』(2020年8月以降に開催されたWACKの展覧会)のユメカちゃんは、ミロのヴィーナスみたいだった」って!

ナ前ナ以 あ……。BiSHさんも好きなんです。WACKを知ったきっかけはBiSHさんで、一番好きなのはBiSさんなんです……。

──BiSのどこに惹かれたんですか?

ナ前ナ以 BiSさんは力強くて、パフォーマンスも熱量が伝わりやすくて、歌詞を読むと涙が出てくるし、聴くと元気が出るような感動があるなって。WACKのどのグループも好きなんですけど、中でも一番、心に響くグループです。

渡辺 そうなんだ。でもBiS以外興味ないって言ってたよね?

ナ前ナ以 ……(無言でICレコーダーを手で覆う)。


2021年5月27日更新