asmi「earth meal」インタビュー|TikTokで「ヨワネハキ」が総再生数26億回超え、Z世代の共感を呼ぶシンガーソングライター・asmiの素顔に迫る

大阪出身の21歳のシンガソングライター・asmiが、TikTokで楽曲が流行したことをきっかけに注目を浴びている。2020年12月に発表された楽曲「memory」の「会いたいの電話許されますか?」という歌詞がキラーフレーズとしてTikTokで話題に。また、2021年5月にアーティストコラボプロジェクト・MAISONdesから生まれた楽曲「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」はTikTokの総動画投稿数220万、総再生数26億回超えのブームとなっている。

そんなasmiが7月6日に配信シングル「earth meal」をリリースした。この曲は2020年に参加したRin音の楽曲「earth meal feat. asmi」のasmiバージョンとなっている。音楽ナタリーでは楽曲の配信を記念して、asmiのこれまでやTikTokを中心に注目を浴びている現状、楽曲について話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 梁瀬玉実

自分の恋愛観についてひたすら書いていました

──asmiさんが音楽に興味を持ったのはいつ頃だったか、覚えていますか?

小学校高学年ぐらいのときからかな。4つ上の姉がいるんですけど、姉は歌うことが大好きで、弾き語りとかもしていたので、私も自然と歌うことが好きやったし、姉が聴いていたアーティストも一緒に聴いたりしていたので、音楽はちっちゃいときから好きです。そんな中で、音楽として最初に好きになったのがaikoさんでした。

──なるほど。意識せずとも日常の中に音楽があったんですね。

そうですね、常にJ-POPが流れていました。

──では、自分で音楽をやってみたいと思ったことは?

小学校高学年から吹奏楽部に入っていて、中学校でも吹奏楽をやっていたんですけど、自分も歌いたいなと思い始めたのは高校の軽音楽部に入るときですね。軽音楽部ではコピー中心で、ギター2人、ベース1人、ドラム1人、ボーカル5人という編成で、私はボーカルとコーラスをやっていました。

──自分でオリジナル曲を作ってみようと思ったのは、高校を卒業してから?

はい。専門学校に入ってから作ったのが初めてです。

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──何かきっかけがあったんですか?

その頃、人生で初めて大きな失恋をして。悲しみに暮れていたときに、ちょうど学校の先生から「作ってみない?」と言われて作ってみたのが、最初に発表した「osanpo」という曲でした。

──歌詞では“失恋”というテーマが1つあったと思うんですが、音楽面やサウンドに関して自分の中で「こうしたいな」というイメージはありましたか?

ちょうどその頃はLUCKY TAPESさんにハマっていたので、そういうおしゃれなサウンドに憧れつつも、弾き語りのアーティストのキャッチーな音楽も好きやし、両方の要素を入れて聴き馴染みのあるJ-POPにしたいなと考えていました。

──専門学校時代はライブハウスで活動していたんでしょうか?

はい。当時は弾き語りだったんですが、同じようなアーティストよりもバンドと対バンすることが多くて。私は1人で周りは大勢やったから、どちらかというと心細かったんですけど(笑)、観に来るバンド好きのお客さんにどこかでハマればいいなと思っていました。

──音楽を通して歌いたいことや伝えたいことに関して、当時思い描いていたものは?

そのときはひたすら自分のことを書くのが楽しかったし、それに精一杯やったというか。特に何も考えずに、自分の恋愛観についてひたすら書いていました。

──それはポジティブなこともネガティブなことも?

はい。恋愛って100%ポジティブなときがない気がしていて。幸せなときも「このまま崩れていったらどうしよう?」という不安はあるので、聴いてくれている人の不安を和らげられるように、そして共感してもらえたらいいなという思いで書いています。

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──いざ言葉にすると、自分でも思ってもみなかったような表現が出てくることもあるかと思います。「自分って意外とこういう面があるんだ」という気付きって、何かありました?

その頃は無我夢中やったんであんまり考えていなかったんですけど、最初のアルバム「bond」を今聴くとストレートすぎて、「え、自分そんな感じやったん?」とちょっとゾッとするというか(笑)。今とは書き方が全然違うし、ひたむきに書くしかなかったんでしょうね。

──そのへんについて、ご自身の中でターニングポイントはあったんでしょうか?

その変化は自然とだったかもしれないですね。でも、19歳から21歳までの間、特に19歳から20歳って大人になることをすごく意識するタイミングだと思っているので、自然と階段を登っていたのかなと思います。

──アルバム「bond」をリリースした2020年は、Rin音さんとのコラボ曲「earth meal feat. asmi」を発表したタイミングでもあります。この時期、asmiさんの音楽でのモチベーションはどういったものでしたか?

ちょうどその頃は今の事務所に入ったタイミングやったので、シンプルに羽ばたいた瞬間というか。それまでは1人で活動するしかなかったので不安もあったけど、支えてくれる人が少しずつ増えたので、それだけで音楽をやるうえでは気持ち的にも強くなりましたね。

──ライブハウス中心に活動していた頃と比べて、受ける刺激の質も変わってくるわけですよね。

そうですね。ライブハウスでの弾き語りの経験も楽しかったし、必要な時間やったと思います。でも私は、ギター自体は好きだけど弾くのは難しいから、100%好きとは言い切れなくて(笑)。その点で、今は弾き語り以外の形で余裕を持ってやらせてもらえているので、そこに対して本当に感謝しています。

──1つ負担が減ると、考えられることが増えますものね。

私はけっこう気にしいなので、それがちょっとでも減るだけですごく楽になりました。

──では、この1、2年でどんどん自分の理想に近付けているわけですね。

はい。それこそ、バンド形態でのライブというのも最初の頃には考えられなかったですし。それも、2019年とか2020年にちゃんと経験を積んできたからだと思っています。

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“バズる”を意識して曲を作れるタイプではない

──2020年以降、いろんなアーティストとのコラボレーションが増えていきますが、その中でも2021年に音楽コラボプロジェクト・MAISONdesで「ヨワネハキ」を発表したのはかなり大きかったのではないでしょうか。

そうですね。MAISONdesはさとうもかさんとかEMAさんとか私が好きな方々が参加してはったので、そこに自分も加わることができることで単純に喜びましたし、何より和ぬかさんの「寄り酔い」がすごく好きやったので、その和ぬかさんが曲を書いてくださると聞いてめっちゃうれしかったです。

──それにしても、TikTokを含め、あそこまでバズるとは想像もしてなかったと思います。

想像もできなかったですし、今でも信じられないです。

──なぜここまでウケたんでしょうね?

なんでやろう……一番は和ぬかさんの曲がよかったからだと思うんです。でも、私の声も中毒性があると言ってもらえるのは、すごくうれしいですね。

──asmiさんの声ってすごく大きな武器ですよね。ご自身で特徴的な声だと意識していましたか?

中学生のときに「ぶりっ子してる」とか言われてめっちゃ悲しかったし(笑)、高校の軽音楽部でボーカルをやっていたときも歌声がいいとあまり言われなくて。でも、高校3年生のときに専門学校の高校生向けイベントで2曲歌わせてもらって、そのときに専門学校の先生に「あなたの声は歌うのに向いているから、もっと歌ったほうがいいよ」と言われて、そこで初めて「自分の声っていいんや!」って思えたので、そこが意識し始めたタイミングです。

──以前リリースされた「memory」であったり最近の「PAKU」であったり、TikTokを通じてバズる機会が増えています。実際、「PAKU」は3月末に配信が始まったばかりですが、ここまで浸透しているのはすごいことですよね。

すごいですよね、本当に。でも、それはmeiyoさんが書いてくれた曲がよかったことと、TikTokで踊ってくれた人たちのおかげだと思うんです。

──中毒性の強いフレーズとasmiさんの歌声とが相まって、一聴しただけで耳に残るキャッチーさが強まっているんだと思いますよ。音楽活動を始めた頃はこうした未来は想像できていなかったと思いますが、当時はどんな将来を思い描いていましたか?

みんなが私の曲を聴いて「いいな」と思ってくれたらうれしいなってくらいで。ただ、イヤフォンから私の曲が流れてくることはすごくイメージしていたかもしれないです。そもそも私は、バズるとかTikTokで踊ってもらうことを意識して曲を作れるタイプではないんです。

──みんなでワーっと盛り上がるというよりは、1人ひとりへ着実に届けるほうに意識が向いている?

はい。そのほうがイメージしやすいかもしれません。

──今年2月に配信された「Gerbera」なんて、まさに1人で浸る感じがすごく合いますし。

「Gerbera」は姉が失恋したときに、姉に向けて書こうと思って作り始めた曲なんですけど、書きながら「これはファンの人に向けてでもあるな」とだんだん思えてきて。なので、聴く人1人ひとりを元気付けられたらなと思っています。

──そう考えると、「earth meal」を含む今年配信された3曲はすべてタイプが異なりますよね。

違いますね。いろんなasmiを見せていけたらと思っているので、自分の中で壁を作らないようにしていて。私は常に更新されているし、いろんなことを歌いたいから、その都度その都度できる限り楽しんでほしいです。

──そういう楽曲を携えて、最近は「CDTVライブ!ライブ!」や「ポップUP!」などテレビ番組でパフォーマンスする機会も増えています。

単純にうれしいです。最近は曲を聴いてもらえていてもasmiが歌っていると知らない人もいるので、そういう場で答え合わせをしてもらえたらなと思いますし、それでさらに好きになってもらえたらうれしいですね。