ASKAインタビュー|ソロデビュー35周年を迎えたASKAにとっての“心の鍵を壊されても失くせないもの” (2/2)

デイヴィッド・フォスターとの邂逅と、伝説の“飛び入り事件”

──つい先ほど聞いたばかりの話なんですが、なんでもデイヴィッド・フォスターとの共演コンサートが予定されているとか(参照:ASKAとデイヴィッド・フォスターが競演、東西2公演のプレミアムコンサート開催)。

うん、ちょっと前からその話は出ていたんだけど、詳しい内容はまだ決まっていないんです。ちゃんと告知できるときが来たら、オフィシャルでドンと情報を出しますんで(笑)。

──現段階では話せることがほとんどないんですね。

今詰めているところですね。

ASKA

──ちなみに、どういう経緯で決まった話なんですか?

これはちょっと長い話になっちゃうけど(笑)、僕はデイヴィッド・フォスターが大好きだったんですよ。僕はほら、みんながよく言う自分の音楽のルーツと言えるような背景が何もないから。

──ASKAさんは常々そうおっしゃっていますよね。

はい。その中で唯一、衝撃を受けた存在がデイヴィッドで。ひょんなことからお会いする機会があって、その後ライブを観に行ったとき(今年8月に東京・Billboard Live TOKYOで行われた来日公演)にステージに飛び入りもしたんです(笑)。「誰か、舞台に上がって歌いたい人はいませんか?」とデイヴィッドが言ったんだけど、普通はそんなの誰も出て行かないですよね。だけど、僕は手を挙げて。

──伝説の“飛び入り事件”ですね。

そのとき、会場の皆さんも僕が出て行ったら温かい拍手をくれてね。その光景をデイヴィッドの奥さんがすごく面白がってくれたという流れもあって。

──そうして親交を深めていって、今回の共演につながったわけですね。

彼はアカデミックさとロックフィーリングを兼ね備えていて、そんなプロデューサーほかにいるかな?というくらいの人ですよね。グラミー賞も数えきれないくらい獲ってるでしょ? そんな人と……例えば1曲だけ共演するとかであれば、そこまで難しい話でもないと思うんですよ。だけどどうせやるなら、同じステージに上がる以上はね、お互いの持ち場と言えるくらいの時間はやってみたいなと思っていて。今そこを詰めている段階です。

──1曲どころか、ツアーを回ると聞いていますが……。

いや、そんな時間はないですね。僕もこのために自分のツアー日程をずらしたくらいなんで。まあ、多くても関東と関西で1公演ずつくらいじゃないかな。

──十分すごい話です。この座組で複数公演やるというのは。

もしこれがうまくいったら、アジアを回ってみたい気持ちもありますけどね。

死ぬ前の日まで点滴打ちながら曲を作ってます

──ちなみに、先ほどデイヴィッドのことを「どんな音楽もやれる人」というような表現をされていましたが、ASKAさんも完全にそういうタイプのミュージシャンですよね。

ああ、言われてみればそうですね。そんなふうに自分とデイヴィッドを比べて考えたことがなかったですけど、まあ影響された感はバリバリありますよ。向こうがどう思ってるかは知りませんが……僕もけっこうあるんですよ。若いミュージシャンから「影響されました」とか「曲聴いてました」とかよく言われるんだけど、彼らの音楽を聴いても、僕のどこに影響されたのかわからない(笑)。

──あははは(笑)。なんでもやれるからこそ、人によって影響を受けるポイントも全然違ってくるんでしょうね。

なんでもやりますからね。……いや、「なんでもやる」という言い方はちょっとアレですね。クオリティを落とさずに、設定した高度まで自分の音楽を到達させたいと言うんですかね。突き抜けられれば最高なんですけどね。

──「同じような曲は作りたくない」ということもよくおっしゃっていますが……。

そうですね、はい。

──それをこのキャリアでやり続けるのは相当しんどいのでは?とも思うんですけど。

どうでしょう……確かに、ちょっとしんどくなってきたかもしれないです(笑)。

──いや、そこは「才能で余裕だよ」と返していただきたいところだったんですけど(笑)。

ははは(笑)。まあ、「4ビートのアルバムを作ってみたい」という願望もあるし、まだまだやりたいことはいっぱいありますよ。

ASKA

──ASKAさんは死ぬまで音楽をやり続けると思っていていいですか?

よくジョークで「死ぬ前の日まで点滴打ちながら曲を作ってます」と言ってるんだけど(笑)。僕は、自分のアイデンティティって“楽曲を作ること”だと思ってるのね。音楽の楽しさにはもちろん歌うこともあるんでしょうけど、やっぱり楽曲を作るというところに軸足がある。だから、これができなくなったら音楽自体そんなに面白くなくなるんじゃないかと思ってるんだよね。今回のアルバムで昔の曲を2曲やり直したみたいに、新しいものを作り続けながら旧作も歌っていくスタイルは全然いいんですけど、新しいものを作れなくなって旧作だけでやっていくのは、自分は無理かなと思いますね。僕の場合はですよ。

──なるほど。シンガーであることよりソングライターの意識が強いんですね。

ソングライティングをやれているから、その上に乗っかる形でボーカリストとしてもやれているんじゃないですかね。僕の意識としてはそんな感じですね、うん。

公演情報

ASKA & DAVID FOSTER PREMIUM CONCERT 2023

2023年3月16日(木)神奈川県 ぴあアリーナMM
2023年3月19日(日)兵庫県 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

<出演者>
ASKA / デイヴィッド・フォスター
ASKAバンド / Get The Classics Strings

プロフィール

ASKA(アスカ)

チャゲ&飛鳥(のちに「CHAGE and ASKA」に改名)のメンバーとして1979年にシングル「ひとり咲き」でデビュー。約300万枚のセールスを記録した「SAY YES」をはじめ、ヒットナンバーを数多く世の中に送り出す。1988年にアルバム「SCENE」でソロデビュー。1991年にリリースされた3rdシングル「はじまりはいつも雨」が、ミリオンヒットを記録し、ソロアーティストとしても地位を確立した。2017年には自主レーベル「DADAレーベル」を立ち上げ、アルバム「Too many people」「Black&White」を発表。同年10月には配信サイト「Weare」を開設した。2022年11月にアルバム「Wonderful world」をリリースした。