ASKA|Made in ASKAで31年 活動の中で生じた音楽の変化

死ぬまで歌詞で苦しむと思ってました

「Too many people」ジャケット

──自主レーベル「DADAレーベル」の設立後に発表されたアルバム「Too many people」(2017年2月発売の8thアルバム)からも「FUKUOKA」「東京」「と、いう話さ」「しゃぼん」といった楽曲が、ベスト盤の収録曲として選ばれています。ASKAさん自身は、活動再開以降の楽曲に関してどういう変化を感じていますか?

作品に迷いがなくなった気がしますね。それまでは1つの作品にこだわりすぎていた感じがあって。こだわり自体は今もありますし、捨てちゃいけないことなんですけど、こだわった挙句に選択を迫られたとき、費やす時間が以前と比べてすごく短くなった。選んだものが違ったことに気付いたら、素早く違うものにいけるようになりました。以前は、ものすごく悩んで時間を使っていたんですけど、今はすぐにほかを選んでそこから広げていけるようになったから、楽曲を書く時間はかからなくなりましたね。

「Black&White」ジャケット

──以前のインタビューでは、歌詞を書くのに七転八倒していた以前と比べて「Too many people」や「Black&White」(2017年10月発売の9thアルバム)のときはそれがなかったという話をされてました。

そうですね。以前はシンガーソングライターでいる間は死ぬまで歌詞で苦しむと思ってましたから(笑)。曲はいくらでもとは言いませんけど、昔からわりとすぐにできるんです。曲ができるたびに歌詞を考えなきゃいけないから、曲が溜まるにつれてどんどん自分に重くのしかかってくる感じがあって。でも今はそうならない。曲を作ったらすぐに歌詞を書く。書けるようになりましたからね。

──ベストアルバムの収録曲の中には新曲「メリーゴーランド」が含まれています。ここまでのASKAさんの歩みをすべて受け止めた曲のようにも感じました。

60歳になったということもあるんでしょうけど、最近はよく故郷の福岡に帰るんです。そうすると帰るたびに仲間が集まってくれる。そうやって話をしていると昔の僕はいろんなことをやらかしたみたいで、いろいろと逸話が出てくるんです(笑)。それをみんなが語ってくれるんですけど、僕はそのときの心境とかをだいたい覚えてるんですよ。「あのときはこうだった」とか話すと「だからあんなことをしてたのか」とか、話が尽きない。そういう中で1人のヤツが「そう言えば地元の川の本当の名前をちゃんと呼んでなかったんだよな」という話になって。僕の街には「大川」と呼んでいた川があります。ある時それが「御笠川」という名前であることを知ったんです。「じゃあ『大川』という名前は誰が付けたんだ?」って話になって、僕もそのことが気になっていたんですけど、それは僕だけじゃなくてみんなが思っていたことで。そんな話を60歳になってからしてるのが面白くて(笑)。

──そういうエピソードが「メリーゴーランド」という曲に反映されているんですか?

そうですね。昔一緒に過ごした連中がときを経て集まる。みんないろんなところを潜り抜けてきて、第三者からすれば「〇〇は成功した」だとか「〇〇は失敗した」みたいに言えるかもしれない。でもそれは周りが勝手に言っていればいいことで、僕ら自身がこうして集まって食事をしているという事実が一番大切だと思うんですよね。だから歌詞の中で「僕らは長い冒険をした」と歌ってみたんです。60歳になるまでの長い冒険を僕らは今語り合っている。それでいいじゃないかと、そういう気持ちになれたんです。

音楽の歴史の中で一番目まぐるしかった時期

──ASKAさん自身の年の重ね方があり、それが曲に、アルバムという作品になっているわけですが、若い世代の聴き手にはASKAさんの作品をどんなふうに聴いてほしいと思っていますか?

30代くらいのミュージシャンで、僕の音楽を通らなかったミュージシャンはいないという自負がありますが、どういうふうに聞いてほしいというのは、僕からは何もないですね。今回、僕が出したのは「Made in ASKA」と「We are the Fellows」だよ、というだけの話です。どう聴いてくれるかはあなた次第で構いません。ただ僕らの世代はいろんなことを経験してますよね。それこそ音楽の話で言えば、レコードからCDになって、配信になるまでのすべてを経験していますから。音楽の歴史の中で一番目まぐるしかった時期に僕らはたまたまここにいたわけで、僕らの語ることは後世にとって貴重かもしれませんね。すべて経験してますから。

──ASKAさん自身は音楽配信のレーベルを持つようになり、ただ作品を作るということに留まらない活動もなさっています。

20年くらい前に「どういう形かはわからないけど、これからの音楽は皆さんのところになんらかの通信によって送られるようになると思う」とステージで言ってたんです。どういう形はわからないけど、送られてきたものを録音したり、機材を使って受け取ったりして聴くことになると。それが配信という形になったんですよね。これから先で言うと、音楽はもしかしたら1曲10円とか20円になっちゃうかもしれない。そうなったとき、音楽はすごく価値の低いものになってしまうとも言いました。それはストリーミングのことだったのかもしれませんね。もし音楽の価値が低くなってしまえば、アーティストがいなくなるだろうとオーディエンスに語りかけました。今、そうなりかけてる。それがわかっているなら、そうならないよう行動しなきゃと、僕は自分でレーベルを持ち、アーティストへの最大還元率を謳う配信サイト「Weare」を作ったんです。

──新しいアーティストが生まれるような場所にしたいというのが、ASKAさんのレーベルや配信サイトの目的なんですね。

そうですね。もっと理想的な形になるように今動いているところです。すでに世に出ているアーティストではなくて、若いアーティストでちゃんと音楽に夢を抱いてくれる人たちにとって、大きな意味を持つ場になると思います。

──11月にはシンフォニックツアー「billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 -THE PRIDE-」が始まります。来年はバンドツアーもあるようなので、その辺りの話も聞かせてください。

11月のツアーについては、こういう形のものができるとは思ってなかったので、感謝しながら歌わせてもらいます。「さあ」と意気込んで乗り込んでいくのは来年のツアーということになりそうですね。「Made in ASKA」というタイトルは気に入っているので、この言葉を掲げて回るツアーになると思います。

──「Made in ASKA」というタイトルはどんなふうに決まったんですか?

小田(和正)さんのベストアルバム「自己ベスト」に対抗しようと思って(笑)。「自己ベスト」はもう小田さんらしいネーミングでやられましたね。「そんなタイトルが残ってたのか。じゃあ、それに対抗できる名前はなんだろう」とずっと考えていて、「Made in ASKA」を思い付いたんです。いい名前でしょう?「Made in ASKA」。

ASKA

※記事初出時、曲名の表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

ツアー情報
billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 -THE PRIDE-
  • 2018年11月5日(月) 東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2018年11月14日(水) 大阪府 フェスティバルホール
  • 2018年11月26日(月) 宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2018年12月3日(月) 東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2018年12月6日(木) 東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2018年12月8日(土) 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 大ホール
  • 2018年12月10日(月) 京都府 ロームシアター京都
  • 2018年12月13日(木) 北海道 札幌コンサートホールKitara
  • 2018年12月15日(土) 神奈川県 神奈川県民ホール 大ホール
  • 2018年12月19日(水) 福岡県 福岡サンパレス
ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -
  • 2019年2月6日(水) 東京都 オリンパスホール八王子
  • 2月8日(金) 神奈川県 神奈川県民ホール
  • 2月15日(金) 埼玉県 大宮ソニックシティ
  • 2月19日(火) 福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
  • 2月21日(木) 広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2月22日(金) 香川県 サンポートホール高松
  • 2月26日(火) 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 3月1日(金) 静岡県 静岡市民文化会館
  • 3月12日(火) 大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)メインホール
  • 3月13日(水) 兵庫県 神戸国際会館
  • 3月20日(水) 新潟県 新潟県民会館
  • 3月23日(土) 栃木県 宇都宮市文化会館
  • 3月24日(日) 宮城県 仙台サンプラザホール
  • 4月12日(金) 東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • ほか、追加公演開催予定
ASKA(アスカ)
1979年に「ひとり咲き」を発表し、チャゲ&飛鳥としてデビュー(のちに「CHAGE and ASKA」に改名)。約300万枚のセールスを記録した「SAY YES」をはじめ、ヒットナンバーを数多く世の中に送り出す。1988年にソロアルバム「SCENE」をリリースし、ソロデビューを果たした。1991年にリリースされた3rdシングル「はじまりはいつも雨」が、ミリオンヒットを記録し、ソロアーティストとしての知名度も高めていった。2017年には自主レーベルを設立し、アルバム「Too many people」「Black&White」を発表。同年10月には配信サイト「Weare」を立ち上げた。2018年10月には2枚のベストアルバム「Made in ASKA」「We are the Fellows」を同時リリースした。

2018年10月17日更新