ASCAの1stシングル「KOE」がリリースされた。
2011年に「第5回全日本アニソングランプリ」でファイナリストに選出され、2013年にシングル「Prime number~君と出会える日」で歌手デビューした大倉明日香のソロプロジェクトとなるASCA。まだ高校生だった当時から表現力豊かな歌唱で話題を集めていたが、その歌声はさらに進化しアニメ「Fate/Apocrypha」2ndクールのエンディングテーマとなるタイトル曲では力強さと情念をたたえた歌声を聴かせている。
音楽ナタリー初登場となる今回は、シングル収録曲の話題はもちろん、ASCAとして始動するに至るまでの日々や再デビューにかける思いなど、新しいスタートを切る現在の心境について話を聞いた。
取材・文 / 北野創
今までの大倉明日香のイメージを一掃する気持ち
──ASCAさんは高校1年生の頃に大倉明日香として「Prime number~君と出会える日」(2013年2月リリース)で歌手デビューされましたが、その後しばらく作品のリリースがありませんでした。その間も音楽活動はされてたのですか?
はい。「Prime number~君と出会える日」をリリースしたあと、今お世話になってる事務所に移りまして、地元の名古屋でガールズバンドを組んで活動したり、中学時代から音楽学校に通ったりしながら、東京にも定期的に来てデモを録ってたんです。高校を卒業してからは名古屋で路上ライブもやっていて、それは今年の2月に上京するまで1年半ぐらい続けてました。
──路上ライブではどんな曲を歌ってたのでしょう?
基本はカバーなんですけど、洋楽だったらピンクさん、邦楽だったらMISIAさんや小柳ゆきさんの曲とかが多かったです。でも歌う曲はアーティストというより曲で選んでて、自分がそのとき伝えたいことを代弁してもらえるような曲を選んで歌ってました。普段から女性シンガーの曲を聴くことが多くて、そういう方の強い部分には惹かれますね。
──2016年12月にはひさびさの新作となるミニアルバム「デイズ」を発表されましたが、ほぼ全編がパンキッシュなサウンドで「Prime number~君と出会える日」の頃とは随分印象が変わっていたので驚きました。
確かにあの作品は、表題曲のみがバラードで、あとは激しめな曲でまとめてましたね。私もよくロックを聴いたりするので。
──ずっと音楽活動を続けてこられたわけですが、やはり自分の中で歌に対するこだわりは強かったのですか?
それはもう中学の頃からずっとありますね。私は高校を卒業してから「自分は何ができるんだろう?」って考えたときに、自分には音楽活動を応援してくれる家族や友達がいるし、歌に何度も救われたところがあるので、やっぱり歌しかないと思ったんです。でも、路上ライブをやってる中で「このまま名古屋にいてもいいのかな?」っていう葛藤が自分の中に生まれてきて。それで歌をやっていくには東京に行くことが必要だと思うようになって、20歳の節目を迎えて成人式が終わったあとに、「(東京へ)行こう」って決心して上京してきたんです。
──そこからASCA名義でのデビューが決まったのですから、本当に上京が転機となりましたね。
そうですね。今までの大倉明日香のイメージを一掃する、ここからASCAという新たなアーティストとして活動する気持ちで、すべてを出していこうと思いました。
──そして今年8月、アニメ音楽誌「リスアニ! Vol.30」の付録CDに収録されたオリジナル楽曲「RUST」で音源デビューを果たしました。この曲がASCA名義で世に出る最初の楽曲になりましたが、どのようなアーティスト像を打ち出そうとしたのですか?
楽曲自体がすごく力強さのある曲だったので、いただいたときに私自身を強いアイコンにしてくれる曲のような気がしたんです。私は気持ちを言葉にすることがすごく苦手なタイプなんですけど、うまく他人に気持ちを伝えられない人の思いを代弁できる強いアーティストに憧れているので、ASCAではそういうものを表現していけたらと思いました。この曲のミュージックビデオでは自分の顔をそんなに出さない形で、その“思い”を表現しようと思ったんです。
自分自身の経験と重ねて歌った「KOE」
──メジャーデビュー曲となる「KOE」は、ストリングスと電子ビートが緊張感を生む冒頭から、曲が進むにつれて音数が増えてエモーショナルに展開していくドラマチックな楽曲です。この曲はアニメ「Fate/Apocrypha」のエンディングテーマですが、どのようなイメージで作られたのでしょうか?
もちろんアニメとのタイアップを意識したところもあって。「Fate/Apocrypha」はサーヴァント(アニメに登場する使い魔)たちが戦いの中で亡くなって別れを繰り返していく物語ですけど、この曲も全体的に別れがテーマの曲になっています。曲自体にすごくストーリー性を感じたので、歌うときはアニメを観て感じたことも思い描きつつ、それよりも一番は自分自身の経験と重なる部分を思い浮かべて歌いました。
──その自分自身の経験というのは?
今まで自分自身が経験してきたいろいろな別れですね。でも、この曲自体は、いろんな別れがあるけどそれを悲観的に捉えるのではなく、思い出があるからこそ前向きに生きていこうっていう気持ちが込められてるんです。昔聞いてた「声」をきっかけに、その当時の思い出がよみがえるという内容の歌詞なので、聴いてくださる方にもそれぞれの思いを想起してもらえる曲になってるんじゃないかなと思います。
──個人的には初めてフルで聴いたとき、特に2番以降の歌詞はどちらかと言うとASCAさん本人に当て書きされた内容なのかなと思ったんです。Cメロの「まだ 聴こえているかな? まだ 憶えているかな?」以降の部分は、一度デビューされてしばらく表舞台から遠ざかっていたASCAさんの状況をそのまま表した部分なのかなと思って。
私から昔の曲を知ってる皆さんに向けて「憶えてますか?」と問いかけてるということですよね? この曲の歌詞自体、どういうふうにも解釈してもらえる曲だと思ってるんですけど、そういう一面もあるかもしれませんね。私自身はそういう思いで歌ったわけではないんですけど、もし私の昔の曲を聴いたことのある方がそう捉えていただけたのなら、すごくうれしいです。
──そういった歌詞の内容についてSakuさんとお話しされたりは?
歌入れのディレクションはSakuさんにしていただいたんですけど、歌詞の具体的な意味については話してないです。私の中でもあらかじめここはこういうふうに歌いたい、こう歌ったら気持ちが伝わるだろうって考えて歌入れに臨んでいて、今お話に挙がった2番以降の展開のところは自分でもこだわって何回も納得いくまで歌い直しました。ここの表現の仕方はレコーディングでも一番時間のかかったところですね。
──2番以降はワウギターやハーモニーなどが挿入されて曲の雰囲気も変わりますし、歌いこなすのが難しそうですね。
そうですね。だいぶ展開が変わっていきますし、ストリングスとギターが複雑な心情を映してるようでもあるんです。割り切れなかったりごちゃごちゃした感情を演奏で表してくれてるのかなと思います。この曲を最初に聴いたとき、どういうふうに表現したらいいのか悩んでしまったんですけど、デビューするまでの期間に歌詞の意味や表現について学んでいたので、そういう経験は今回の曲に生かせたんじゃないかと思います。自分が持ってる表現力を幅広く出さなくてはいけないという意味では、一筋縄ではいかない曲でしたね。歌入れのディレクションが終わったあとはホッとしましたから(笑)。
──あと、歌声に関しては昔に比べて重さが増した印象を受けました。
そこは意識しましたね。重さと言うか自分の声自体がけっこう低いので、そこを生かすことでこの曲の幅も広がっていくと思いました。特にAメロ、Bメロでそれを意識して歌ったら、サビで開いていく感じにつながるので。
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自然と気持ちが入ったレコーディング
- ASCA「KOE」
- 2017年11月22日発売 / SACRA MUSIC
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初回限定盤 [CD+DVD]
1728円 / VVCL-1123~4 -
通常盤 [CD]
1296円 / VVCL-1125 -
期間生産限定盤 [CD+DVD]
1620円 / VVCL1126~7
- 初回限定盤・通常盤 CD収録曲
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- KOE
- リインカネーション
- 最低な朝と名付けたのは
- KOE -Instrumental-
- 期間生産限定盤 CD収録曲
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- KOE
- リインカネーション
- 最低な朝と名付けたのは
- KOE -TV size mix-
- 初回限定盤・期間限定生産盤 DVD収録内容
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- 「KOE」 Music VIdeo
- 「リインカネーション」 Music Video
- 「最低な朝と名付けたのは」 Music Video
- アニメ「Fate/Apocrypha」2ndクール ノンクレジットエンディング(期間生産限定盤のみ)
- ASCAスペシャルイベント
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- 2018年1月8日(月・祝)
ASCAスペシャルイベント@都内某所にて開催決定。シングル「KOE」に封入されている専用ハガキで応募ください。
- ASCA(アスカ)
- 1996年生まれ、愛知県出身。中学生時代よりロックバンドのボーカリストとして音楽活動を開始し、2011年開催の「第5回全日本アニソングランプリ」でファイナリストに選ばれる。2013年にアニメ「さくら荘のペットな彼女」のエンディングテーマ「Prime number~君と出会える日~」で大倉明日香としてCDデビューを果たす。2016年12月にミニアルバム「デイズ」を配信リリース。2017年8月にアニメ音楽誌「リスアニ!」誌上にてASCA名義では初のオリジナル曲「RUST」を発表する。同年11月にアニメ「Fate/Apocrypha」2ndクールのエンディングテーマ「KOE」を収録したシングルで、SACRA MUSICよりメジャーデビュー。