麻倉もも|中毒者続出! “あざとかわいい” が詰まった新曲「ピンキーフック」誕生

麻倉ももが8月18日に9thシングル「ピンキーフック」をリリースする。

シングルの表題曲は現在放送中のテレビアニメ「カノジョも彼女」のエンディングテーマ。「カノジョも彼女」は週刊少年マガジンで連載中の同名マンガを原作とした作品で、高校生の主人公・向井直也と美少女たちの関係を描くラブコメディだ。この曲で麻倉はアニメのキャラクターたちが持っている“あざとかわいさ”を表現するために、ボーカルに関しても新たなアプローチを取っている。一方、カップリング曲「ふたりシグナル」は麻倉が考えた歌詞のイメージをもとに作られたナンバー。これまで数多くの恋愛ソングを歌ってきた彼女のこだわりが詰まった、ストーリー性のある恋の歌となっている。

音楽ナタリーでは麻倉にインタビューを行い、楽曲の制作過程やこの頃の音楽活動に対する姿勢について話を聞いた。また特集の最後にはこのシングルに携わった作家陣のコメントも掲載している。

取材・文 / 須藤輝

ステップアップした姿を見せられた

──トピックとしては少し古いのですが、去年の11月に幕張イベントホールで行われた麻倉さんのワンマンライブ(参照:麻倉ももが幕張でファンと再会、真っすぐに届けた“愛の言葉”)、僕も観に行きました。

わあ。ありがとうございます。

──この公演は、去年の4月から5月にかけて行われる予定だった「Agapanthus」(2020年4月発売の2ndアルバム)のリリースツアーの代替公演であり、前回のインタビューで麻倉さんは「ツアーがなくなったことで完結できていなかった『Agapanthus』を、このライブでようやく完結させられます」とおっしゃっていました(参照:麻倉もも「僕だけに見える星」インタビュー)。完結させられました?

完結させられました! やっぱりツアーの中止が決まってからの数カ月間は不完全燃焼みたいな感じだったんですけど、いろいろと制限がある中で「Agapanthus」のライブをやってみて、思った以上の満足感と手応えを得られて。本当にあそこで全部出し切ったし、すっきりした気持ちで新しいシングルの制作にも臨むことができました。

麻倉もも

──麻倉さんのソロライブは2018年に舞浜アンフィシアターで開催された1stライブ以来になりますが(参照:麻倉もも、ファンタジックな世界作り上げた初のソロライブ)、会場のキャパ云々を抜きにして、パフォーマンスが格段にスケールアップしていると思いました。

うれしいです。1stライブではどちらかというと受け身だったというか……自分でセットリストを考えたりはしたんですけど、基本的にはチームの皆さんが用意してくださった枠組の中で自分を表現していく感じだったんです。でも、今回はセットリストはもちろん、「この曲はこういう演出で見せたい」とか「ダンスパートを作りたい。そのときはヘッドセットで歌いたい」とか、より具体的に自分のやりたいことが見えていたし、チームと一緒にライブを作っていけたという実感がありますね。1stライブから2ndライブまで2年ぐらい間が空いていたんですけど、その2年間は私にとってかなり大きな成長期間でもあったので、2ndライブではステップアップした姿をお見せできたんじゃないかと思います。

──先ほど「いろいろと制限がある中で」とおっしゃいましたが、不安もあったのでは?

そうですね。あの時期はまだ有観客ライブをやるアーティストさんがほぼいなかったというか、有観客ライブが再開され始めた最初期のタイミングだったと思いますし、コロナ禍以前のライブでも「成功するかな?」みたいな不安は付きものだったので。でも、声は出せなくてもお客さんの熱量は変わらなくて、それも本当にうれしかったですし、おかげで無事に終えることができました。今思い返すと、達成感と同じくらい、ホッとした気持ちも大きかったかもしれないですね。

今までの私の曲にはないものを感じた

──「すっきりした気持ちで」制作されたという今回のシングルですが、表題曲「ピンキーフック」の作詞・作曲は渡辺翔さんです。アルバム「Agapanthus」では、麻倉さんのご指名で渡辺さんに表題曲の「Agapanthus」を作ってもらったという経緯がありましたね。

麻倉もも

はい。でも今回は、アニメ「カノジョも彼女」の制作サイドの方も麻倉チームのスタッフさんも「渡辺翔さんがいいんじゃないか」という意見で一致したらしく、それをあとで聞いた私が「またご一緒できるんだ!」と喜んだ格好でした。とはいえ私としては、渡辺さんにはTrySailでもソロでも曲を作っていただいてますし、私も渡辺さんの曲が好きだというのを、スタッフさんが汲んでくれたんじゃないかと思ってはいるんですけど(笑)。

──具体的に、渡辺さんの曲のどんなところが好きなんですか?

中毒性のあるメロディラインというか、もちろん一聴して「いい!」って思うんですけど、何回も聴いていくうちにずぶずぶとハマっていく感覚があって。歌詞にしても言葉のチョイスが独特で、ときに詩的だったりして、毎回素敵だなって思います。

──「ピンキーフック」では、渡辺さんとはどんなやり取りを?

今回は「カノジョも彼女」のエンディングテーマということもあって、当然アニメの制作サイドからの指定もあったと思うんですけど、その中で渡辺さんは2曲作ってどちらがいいか私に聞いてくださったり、歌詞にしても私の意見を取り入れてくださったりして。タイアップ曲だと「今回はこの曲で行きます」みたいにあらかじめ決まっているケースもあって、別にそれが嫌だったことはないんですけど、「ピンキーフック」に関しては私のやりたいことをかなり尊重していただきました。

──2曲あった中から「ピンキーフック」を選んだ理由は?

もう1つの曲はほのぼのとしたかわいい曲で、もちろんいい曲だったんですけど、今まで私が歌ってきたものに近い感じだったんです。逆に「ピンキーフック」は、今までの私の曲にはないものを感じて。音の使い方やテンポ感とかも、コミカルにパパパパッと進んでいく作品のノリにすごく合っていて、聴けば聴くほど「絶対こっちだ!」と思ったんですよ。

──麻倉さんはダンサブルな曲はたくさん歌ってこられましたが、「ピンキーフック」のようなソウルやディスコっぽいグルーヴのある曲はなかったですよね。

そうですね。私はどちらかと言うとサビは音を大きく取って、ロングトーンというか声を伸ばして気持ちよく歌えるような曲を選びがちだったので、リズミカルに言葉をハメていくような曲は珍しいですね。

言葉遣いにおける私のポリシー

──先ほどおっしゃった歌詞に対する意見とは、具体的には?

歌詞の内容というよりは、細かい言葉遣いに関してですね。例えば1番Bメロの「こんな好きってズルイ」という歌詞は、最初は「こんな好きってヤバイ」だったんです。これは私のポリシーというか、ソロ曲では自分が普段使わないような言葉は歌詞に入れないというルールが私の中にはあって。ただ、「ヤバイ」という言葉自体は作品の雰囲気にも合うし、どうしようかと渡辺さんとも相談したんですけど、今言ったように私の中で線引きができているなら変えましょうと、「ズルイ」になりました。

麻倉もも

──確かに、麻倉さんにフィットするのは圧倒的に「ズルイ」ですね。

TrySailの曲とかキャラソンだったら気にならないんですけど、ソロの曲では「ヤバイ」とか「マジで」とか、あとなんだろうな……「○○じゃねえ」とか「××だぜ」みたいな言葉は、今のところは使わないようにしていて。でも「ヤバイ」って、いろんな意味に取れるので、面白い言葉だなとは思うんですけど。

──ご自分ではあまり使わないと。では、歌詞の内容に関してはどのような印象を持たれました?

ちょっと小悪魔っぽい、あざとかわいいイメージは全体としてあるんですけど、相手に対する思いは本当にまっすぐで。それも今までの歌にはない人物像だなと思いましたね。恋の駆け引きをしているような、聴き手側がドキッとするような要素もあったりして、そういうのも新鮮でした。

──僕は「カノジョも彼女」の原作は未読で、アニメも先日放送された第1話しか観ていないのですが、そのエンディングテーマだからといって、別に二股をかけられた女の子の歌というわけでは……(※本インタビューは7月初旬に実施)。

ないです(笑)。作品としてはそうなんですけど、曲としては、純粋に相手に対する「好き」という感情や甘えたい気持ちを歌っているので。私も、二股というシチュエーションは考えず、あくまで作品全体の印象というか、コミカルだけどみんなまっすぐみたいな雰囲気を意識しながら歌いましたね。