「そういう恋もあるよね」と割り切って歌える
──麻倉さんの恋の歌のバリエーションも増えてきましたね。
ありがたいことに、「恋愛」というテーマの中でいろいろな方向性の曲に挑戦させてもらえて、自分でも楽しいです。それこそ「“さよなら”聞いて。」のような、失恋を乗り越えてまた前に進もうという気持ちを歌うのも今回が初めてですし。
──今後、歌ってみたい恋のシチュエーションなどは?
ああー、今は具体的なシチュエーションがパッと出てこないんですけど、そういうのを考えるのも楽しいですよね。とりあえず、浮気が絡んだりするようなのはイヤだなあ。
──そうだ、前作「スマッシュ・ドロップ」のカップリング曲の「シュークリーム」って、「365×LOVE」のカップリングとして当初予定していたという“おのろけソング”ですか?
あ、そうですそうです。結果的にそこまで甘々な歌詞にはなっていないんですけど、歌詞を乗せたメロディは「“おのろけソング”に合いそうだな」と思って選んだものですね。「シュークリーム」の歌詞は、第三者から見ると「その彼、大丈夫? DV男じゃないの?」と心配になっちゃうかもしれないんですけど、本人が幸せならいいよねっていう。
──麻倉さん個人としては、「シュークリーム」で描かれている男性像はアリですか?
ナシですね(笑)。
──ははは(笑)。
実際、私もリリースイベントで「みんな、こんな男になっちゃダメだぞ」って言っちゃいましたし。
──そうやって、ある種ドライに割り切って演じられるのも麻倉さんの強みなんでしょうね。だからこそ恋の歌のバリエーションも豊かになる。
ああ、そうかもしれないですね。すべての恋の歌の主人公に共感できるわけではないけれど、「そういう恋もあるよね」と、その世界を歌うこと自体はすごく楽しいんです。
早く次のアルバムを作りたい
──2019年も半年以上が過ぎましたが、その間、麻倉さんはTrySailとしてアルバムをリリースすると共に、約半年間におよぶ全国ツアーも行っています。その一方でソロとしてもシングルを3枚リリースしていますから、かなりお忙しかったのでは?
そうですね。TrySailのツアーも過去最長ですし、ソロとしてもこんなに短いスパンで立て続けにシングルを出すのは初めてですし。なので、すごく密接に歌というものに関わった半年間だったというか、ずっと歌っていたイメージがあります。
──ソロでシングルを3枚出したら、当然、アルバムへの期待も高まります。
ですよね。私としても早く次のアルバムを作りたいという気持ちは強いです。前回のインタビューでもお話ししたように、1stアルバムを作ったことで「恋の歌を歌いたい」という方向性がより固まったし、アルバムの制作に入った頃から「こういう曲がいいです」とか「こういうふうに歌いたいです」みたいに自分から意見を出すことも増えたんですね。なおかつ当時と比べて私の歌も変わってきているので、2ndアルバムではまた違った世界観を表現できるんじゃないかなって。まだ構想とかは全然ないんですけど、アルバムはより自由度が高いというか「シングルに入れるのはいかがなものか?」と思うような曲にも挑戦できたりするので、楽しみですね。
──少々気が早いですが、2ndアルバムをリリースしたら、今度はソロライブにも期待がかかりますよね。
やらないわけにはいかないし、私もやりたいです。去年の1stソロライブでは、まだ持ち曲が少なかったこともあって、本編で歌った曲をアンコールでまた歌ったりもしたんです(参照:麻倉もも、ファンタジックな世界作り上げた初のソロライブ)。でも、現時点で曲数もずっと増えたので、セットリストを組む楽しみも生まれてくるでしょうね。あと、やっぱり新しいアルバムを引っさげてのライブになるので……といってもまだアルバムを作り始めてすらいないからほとんど妄想なんですけど、やっぱり前回とは違ったものになると思います。
昔の自分の歌を聴いて、悔しく思う
──今年は麻倉さんが精力的にアーティスト活動をなさっている一方で、現時点で雨宮さんもシングルを2枚、夏川さんも1stアルバムをそれぞれリリースされています。TrySailのお二人のソロワークを、麻倉さんはどのようにご覧になっているんですか?
もちろん刺激は受けますけど、それぞれ方向性が違いすぎて、競争心みたいなものは湧いてこないですね。やっぱりTrySailとして3人で同じ歌を歌ったりして、ずっとそばで見続けているからこそ、近過ぎて見えなかった部分もあって。そういう見えない部分が、各々のソロ活動ではよく見えるんですよ。例えば「こんな曲調が好きだったのね」とか「うわ、レベル上がってる!」とか。そうやって前に進んでいる2人を見て、「私も置いていかれないようにしなきゃ」と思ったりします。
──客観的に見て、麻倉さんも着実に前進していますし、今回のシングルでまた先へ進んだように思います。
そう受け取ってもらえるとうれしいです。やっぱり自分だと、自分の進み具合がよくわからなくなったりすることもあって。ただ、私はときどき昔の自分の歌を聴き返すんですけど、そのとき「もし今この曲を歌うなら、こうするのに……」とか、ちょっと悔しい思いをすることもあるんです。
──おおー、それはいい傾向なのでは?
はい。「もっと語尾をしゃくれば、よりエモーショナルな歌になったのになあ」とか「ここは息混じりでそっと歌ったほうが、曲の雰囲気に合ったかもしれない」とか。そういうふうに思えるようになったということは、多少なりとも成長しているのかなって。
──今だったらそういう発想にも至るし、それを実践できる技術も身に付いているということですからね。
やっぱり歌にしろお芝居にしろ、よくも悪くも作品として残ってくれてるから、自分の変化や成長を感じやすくはありますね。以前の自分の拙い表現を恥ずかしいと思う気持ちもあるけれど、そのおかげで今の自分の立ち位置が明確になるところもあって。それはとてもありがたいことですよね。