亜咲花|アニソンシンガーを貫く揺るぎない信念と、私らしさ

HEART TOUCH→ハータッチ→ハタチ

──「笑顔の花を咲かせるから」というフレーズも、亜咲花さんを体現していますね。

亜咲花は「亜細亜に咲く花」なので、この曲の中でも何かの花を咲かせたいなって。自分で言うのもなんですけど、私は自分の周りにいる人たちを笑顔にさせるタイプだと思うんですよ(笑)。なので、この1文は特に気に入ってますね。あと、亜咲花らしさということで言うと「流行なんて欲しくない」もそうですね。これは私のいけないところだと思うんですけど、どうしても流行りモノに乗れないんですよ。例えばタピオカも流行りだしてから飲めなくなっちゃって。

──流行る前は飲んでたんですか?

亜咲花
亜咲花

めっちゃ飲んでたんですけど、いきなり行列ができるくらいブームになって「並んでまで飲みたいとは……」みたいな。むしろ今はパンケーキにハマってるんですよ。もうブームは落ち着いて並ばずに食べられるので。だから実は「街角聞こえる Talk piece」の「Talk piece」は、最初は「Pancake」だったんですよ。でも、田淵さんから「ちょっとあからさまだねえ」とチェックが入り、そこで「『Talk piece』をネイティブふうにラフに発音すると『タピ(オカ)』に聞こえない?」って(笑)。

──ははは(笑)。

そこに気付いてしまったんです、我々は。田淵さん的にはここが一番気に入ってるらしく「めっちゃいいじゃん。俺はよくやったよ」と自分で自分を褒めてました(笑)。

──サビの最後に「HEART TOUCH」というワードがありますが、そこからアルバムタイトルが決まったんですか?

いや、先に「HEART TOUCH」というアルバムタイトルが決まっていて、リード曲の曲名も「Raise Your Heart!!」ではなく「HEART TOUCH」にする予定だったんです。でも途中で考えが変わって、リード曲は「HEART」だけ残して「Raise Your Heart!!」に。「HEART TOUCH」はですね、ネイティブに発音すると「ハータッチ」になって、「あれ? 『ハタチ』に聞こえない?」という雑談から生まれました。ダジャレですね(笑)。

──先ほどの「Talk piece=タピ」といい、空耳やダジャレがお好きなんですか?

そうなんですよ(笑)。今年の1月に出したミニアルバムも「19BOX」というタイトルなんですけど、読み方は「ジューク・ボックス」。つまり“19歳”の亜咲花を詰め込んだ“箱”のようなミニアルバムで、それをみんなが“ジュークボックス”感覚でセレクトして聴いてほしいという気持ちを込めてるんです。そこからの「HEART TOUCH=ハタチ」なので、「これは名案だ!」とスタッフさんと盛り上がりましたね(笑)。

──ではこの先も、例えば21歳でアルバムをリリースすることになったら……。

ねえ、どうしましょう? アルバムタイトルは年齢と関連付けるというルールを作ってしまったので、自分で自分の首を絞めているんですけど(笑)。今後も関連付けるかどうかは……今はわかりません!

──「HEART TOUCH」という言葉そのものには特に意味はないんですか?

もちろん「亜咲花の曲をいつでも心の中に置いてほしい」「みんなの心に触れたいよ」という意味も込めていますよ。音の響きが一番の決め手になりましたけど(笑)。

千本ノックで苦手な「ら行」を克服

──ボーカルについてもお聞きしたいのですが、「Raise Your Heart!!」は最初の15秒で勝負が決まった感がありますね。

お!

──つまりイントロからの巻き舌のシャウトが強烈で。あれが録れた瞬間「勝ったな」と思いませんでした?

思いました(笑)。みんなで「優勝したな!」とはしゃいでたんですけど、もともとシャウトを入れる予定はなくて。でもなんか寂しい気がして、レコーディング当日に田淵さんに「叫んでいいですか?」と聞いてみたら、「やっちゃおう」とお許しをいただいて。結果、「アニソンシンガーでこんなに吠えた人はいないんじゃない?」と言ってもらえるぐらい、ワイルドにやらせてもらいました。

──加えて、全体として亜咲花さんの歌声がめちゃくちゃ楽しそうなのがとてもいいですね。

実際めちゃくちゃ楽しかったんですけど、レコーディングはだいぶ難航したかなあ。田淵さんの思い描く亜咲花像にいかに近付けるかというのが課題だったので。あと、私は日本語の「ら行」を発音するとき、英語の「R」のように舌を巻いちゃうクセが残ってるらしいんですよ。

──亜咲花さんは3歳から5年間、アメリカで暮らしていたんですよね。

はい。だから「大好きになRu」みたいになっちゃって、そこをちゃんと「る」と発音するのに特に苦戦しましたね。今まではその独特な発音が亜咲花節としていい方向に作用していたんですけど、この田淵ビートに乗せると歌詞が聞き取れなくなってしまって。それをどうやって克服すればいいのかを、田淵さんとみんなで話し合って完成させました。

──どうやって克服されたんですか?

千本ノックです。

──おお。

もう、ひたすら録る! やっぱり体に染み付いちゃってるクセなので口で言われたくらいじゃ直らないし、そもそも舌を巻いてる自覚すらないんですよ。逆に英語の歌詞はびっくりするぐらいスラスラ録れたんですけど、速いテンポの曲に日本語を乗せるのはホントに難しいんだなって思い知りました。田淵さん、スパルタで千本ノックもキツかったんですけど、そういうノリは私も嫌いじゃないので「はい、わかりました!」って言いながら楽しんでましたね。へっへっへ(笑)。

アニソンではなかなかできない歌い方

──アルバムの2曲目から6曲目まではアニメ、ゲームの主題歌が5曲続きます。ここでキャリアの充実ぶりと、最初にお聞きした変化やボーカルの多彩さが見てとれますね。

ありがとうございます。曲の並びもリリース順に近い形になっているので、亜咲花がどんどん亜咲花っぽくなっていくのがわかるんじゃないかなと。

──6曲目が「SHINY DAYS」で、その“明るくてポップ”な雰囲気を引き継ぐ形で新曲の「Turn Up The Music」へ。「SHINY DAYS」が60~70年代のソウル、R&Bを意識した曲だとしたら、「Turn Up The Music」は同じ年代のロック、ポップスですね。

亜咲花

まさに。私はそういう昔の洋楽にはほとんど触れてこなかったので、すごく新鮮でしたね。

──歌詞の内容はロードムービー的というか、大雑把に言うと「カーステレオで音楽かけて歌って踊ろう」みたいな。いい意味で脳天気ですよね。

うんうん。あと「トランクに何を入れようかな?」みたいな、旅行に出かける前のワクワク感もすごくて。ただ、最初にデモを聴いたときは自分の声質と合わないんじゃないかなと思ったんです。でも、いざ歌ってみたら「なんだこれは! 私の声にぴったりじゃないか!」と気持ちがオンになって。新曲のレコーディングの中で一番楽しかった……いや、4曲全部楽しかったんですけど、特に楽しかった記憶がありますね。

──おっしゃる通り、太陽や青空を感じさせるカラッとした曲に亜咲花さんの声はよく合っています。

レコーディングでは、今言った旅行前のワクワク感を出すべく最初は楽しさメインで歌ったんですけど、けっこうギターの音が強くて。なのでカッコいい成分も足していこうとエッジボイスで歌ったりして、特にサビ終わりの「Like a Sun!」とかはだいぶハスキーでエッジの効いたテイクを採用してもらいました。こういう歌い方はアニソンではなかなかできないし、ハモリのボリュームも大きめに出してもらっているので、いつもとはちょっと違う亜咲花を感じてもらえるんじゃないかな。