54歳のベンジーが感じているあらゆることが作品に

──そういう流れの中で、特にお気に入りの曲はありますか？

「Sunny Precious」が好きかな。メロディとか、歌詞のちょっと面白いところとか。

──面白いところ？かわいいラブソングかと思いましたけど。「Sunny」という言葉から夏の曲かと思ったら、アイスキャンディに唇がくっつくことを歌った厳寒の歌で。

うん、誰しも経験したことがあるやつ（笑）。寒いときの「Sunny」だね。

──このアルバムには、歌詞の中での英語の使い方が面白いと思ったところがいくつかあって。例えば「Very War」とか。

なぜかそうなった。文法とか無視して。

──この曲はとてもポップだけど、浅井さん流の終末論を歌った曲かと。

わかりやすく言えば、テレビを観てたらみんな浮かれてて、「こんなに浮かれたことやっているうちに日本が乗っ取られちゃうよ」ってこと。俺たちが一生懸命働いて稼いだお金が税金として吸い取られて、うかうかしているうちにどうしようもない状態に陥っちゃうんじゃないかなと俺は思うんだよね。気が付いたときにはもう遅い、という警鐘を鳴らす歌。

──なるほど。タイトルのことですけど、確か瞳さんはバイリンガルですよね。

だから彼女に「変？」って聞いたんだけど、「んー、いいんじゃないですか」って。「世の中にそういう言葉はいっぱいあるから、気にしなくていいんじゃない？」と言ってたね。

──5曲目の「Colorful Elephant」の「Destory Wall People」という一節は、どういう意味で？

ウォール街の人たちのことだね。まあ結局、世界の悪の巣窟はあそこにあるのかなと思ってて。

──この曲には「株式市場」という、あまり歌詞には出てこないような言葉もあって驚きました。

「説明会に行ってみよう」と歌ってるもんね（笑）。実際にそういう招待状が来るんだよ。

──行くんですか？

行くわけないじゃん（笑）。なんでか知らんが来るよ、投資の説明会の招待状が。子供の頃から大人が「株」と言っているのを聞いて「株ってなんなの？」と思っていて、その頃よりはわかってるけど、やっぱりよくはわからないなあ。

──浅井さんが株をやってないだろうということはわかります（笑）。でも、このように社会に対する目配りも歌になるんですね。

こんだけ長い間生きとりゃさあ、そういうことも歌詞に出てきちゃうね。

──高校時代の思い出から昨今の社会情勢への警鐘まで、曲のテーマが広い作品ですね。

54歳の自分が今感じているあらゆることが、このアルバムになっているということかな。

──ソロ作品にはそういう要素もあるんですね。バンドとはまた違った表現として。

1人の人間の作品だからね。

音楽を聴いて、血が変わっちゃうぐらい影響を受けてほしい

──発表されている10月からのツアーはKILLSのメンバーと回るんですね。照井さんや仲田さんたちと録った曲をどう演奏するのか楽しみです。

うん、すごくいいツアーになると思うよ。KILLSの演奏は今すごくいいし、あの2人は完璧に再現するから。

──以前のライブではブランキー時代の曲も演奏してましたが、それもよかったですもんね。

あれはあれでね。ブランキーのメンバーとやるのは最高だったけど、KILLSの2人とやるブランキーの曲もいいんだよ。

──今回のレコーディングでのKILLSセットのきっかけになった「ノー・ガンズ・ライフ」のオープニング曲「MOTOR CITY」もありますね。

それもやらないとね。難しいんだよね。ギターでメロディを弾きながら歌わないとあかんもんだから。

──アルバムの初回限定盤に付属するDVDには、KILLSの2人との特典映像が入ります。

今回ちょっと演技をしてみようという話になって。「演技、できるかな」と思ったけど、人はあれを演技とは思わないらしく、結局素のままでした（笑）。

──自然体ということでしょうか（笑）。

うん、自然体（笑）。一応セリフとかあるんだけど。

──どうして演技をやろうと？

今まではDVDの特典映像と言ったらツアー中のドキュメンタリーとかだったけど、たまにはストーリーを決めてショートムービーみたいなものを作ろうかって話になって。そしたら、意外にもちゃんとしたものができた。

──演技に自信も？映画出演とか目指しますか（笑）。

まー、見りゃわかると思うけど、映画には出れんと思うよ（笑）。俺らミュージシャンだから別に演技なんかねえ。俺も憲太郎も役者なんてとてもとても（笑）。瞳ちゃんがうまい。徹底してる。日本語が喋れない外国人の役なんだけど。

──ご自身の映像への評価は？

面白いと思うよ。身内にしか受けないんじゃないかという心配があったんだけど、どうやら違うみたいなんで、ちょっと安心してる。その中で適当に歌ってる曲がカッコいいから、いつかレコーディングするよ。

──早くも次作への布石ですか。最後になりましたが、アルバムタイトル「BLOOD SHIFT」はどういう意味なんですか？

「血が変わる」という意味だね。潜水用語なんだけど、スキューバダイビングで海に潜っていって、ある深度を越すと体を守るために血の耐性が変わって、それを「BLOOD SHIFT」と言うんだって。だから音楽を聴いて、体の中のハートの部分の血が変わっちゃうぐらい影響を受けてほしいなって。

ツアー情報

浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS「BLOOD SHIFT TOUR 2019」

2019年10月6日（日）栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
2019年10月10日（木）兵庫県神戸VARIT.
2019年10月11日（金）京都府磔磔
2019年10月13日（日）三重県 CLUB ROOTS
2019年10月14日（月・祝）静岡県 Shizuoka UMBER
2019年10月19日（土）宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
2019年10月20日（日）山形県山形ミュージック昭和Session
2019年10月26日（土）北海道 cube garden
2019年10月27日（日）北海道 CASINO DRIVE
2019年10月31日（木）香川県 DIME
2019年11月1日（金）広島県広島セカンド・クラッチ
2019年11月3日（日・祝）福岡県 DRUM Be-1
2019年11月4日（月・振休）宮崎県 SR BOX
2019年11月6日（水）大分県 DRUM Be-0
2019年11月7日（木）福岡県 BRICK HALL
2019年11月9日（土）福井県福井CHOP
2019年11月10日（日）石川県 vanvanV4
2019年11月16日（土）大阪府梅田CLUB QUATTRO
2019年11月17日（日）愛知県名古屋CLUB QUATTRO
2019年11月19日（火）東京都マイナビBLITZ赤坂

浅井健一「BLOOD SHIFT」: 2019年9月25日発売 / アリオラジャパン; 初回限定盤 [CD+DVD]
4536円 / BVCL-996～7

Amazon.co.jp; 通常盤 [CD]
3240円 / BVCL-998

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CD収録曲

Old Love Bullet Gun
METALLIC MERCEDES
暗いブルーは暗いブルーさ
Sunny Precious
Colorful Elephant
目を閉じる映画
目覚める時
Very War
DEAD FISH
HARUKAZE
だからってさ

初回限定盤DVD収録内容

「SEEDS」

METALLIC MERCEDES
Old Love Bullet Gun
INDY ANN
FRIED TOMATO
Ginger Shaker
Sunny Precious

and more

浅井健一（アサイケンイチ）: 1964年生まれ。愛知県出身。1991年にBLANKEY JET CITYのボーカル＆ギターとして、シングル「不良少年のうた」とアルバム「Red Guitar and the Truth」でメジャーデビューを飾る。数々の名作を残し、2000年7月に惜しまれつつ解散。その後、SHERBETSやJUDEなどさまざまな形でバンド活動を続け、2006年7月にソロ名義では初となるシングル「危険すぎる」、同年9月に初ソロアルバム「Johnny Hell」を発表した。繊細なタッチで描かれるイラストも高く評価されており、絵本や画集などを発表している。2016年5月に新たなソロプロジェクト・浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLSを始動。メンバーは浅井、中尾憲太郎（B）、小林瞳（Dr）で、同年10月にシングル「Messenger Boy」、2017年1月にアルバム「METEO」を発表した。2019年9月には約5年ぶりのソロアルバム「BLOOD SHIFT」をリリースした。