ホンマに炒飯食べたくなってきちゃう

──フルサイズバージョンだと間奏も1分くらいあって、さらに聴きごたえがありますね。

田原　そうですね。そこはギターを弾きまくれました。

下上　間奏のシンセベースもレコーディングの後半まで入れる予定がなくて、たまたま友達に借りてたのを鳴らしてみたくなっただけなんです。結果、採用されましたが。鳴らす前は「それはないわ」的な空気だったけどな。

稲村　ははは（笑）。俺らの場合、レコーディングの現場でいろいろ変わることが多いな。ま、こういう遊び心にあふれた曲こそが「ドラゴンボール」なんじゃないかな。子供も楽しいやろうし。僕らも小っちゃい頃、「変な曲やなー。面白いなー！」って感じで主題歌を聴いてたから、そんな曲にしたかった。大きくなったときに思い出せるような。

──子供に引っかかるキャッチーさというか。

稲村　そうそう。「アルカラって人たちは何を歌ってるんだろう？」みたいな。「魔訶不思議アドベンチャー！」の歌詞に出てくる「世界でいっとー イカした物語（ドラマ）」にしても、「いっとーってなんやねん？」ってずっと思ってて。大人になってみると、「一途をいっとーにして歌うなんて、乙やな！」ってなりましたしね。「一途」も歌詞にオマージュで使わせてもらいました。

疋田　子供たちも、めっちゃノリやすいと思いますね。

──最近の「ドラゴンボール」シリーズでは、ロックバンドが主題歌を担当することも増えてますが、そのあたりはあまり意識せず？

稲村　作るときは全然意識しなかったです。レコーディングの直前にようやく「そういえば」と思ってほかのバンドの曲を聴いてみたら、「アレ？ 60秒なんや！」って。そこで間違いに気付かせてもらったくらい（笑）。

下上　「炒飯MUSIC」ってアルカラだからこそアリなアプローチやしね。LACCO TOWERがこんな曲やるの、そもそもナシだろうし（笑）。

──確かにそうですね。あと、「ドラゴンボール」にいろんな要素がある中で、曲の取っかかりが「大食い」になったのは？

稲村　「ドラゴンボール」の初期って、悟空のわんぱくさとか純粋な少年性とかの印象が強いんです。ごはんが出てきたらバクバク食うて、口の周りを散らかし倒して。俺はあのシーンが一番人間臭くて好きなんです。ヤジロベーが仙豆食べすぎるのもそうやし。

下上　あー、腹がパンパンになるやつか。

稲村　ああいうキャラクターの食べることに対する貪欲さというかさ。

下上　背デカなっても、あの世に行っても、悟空はめっちゃ食うてるけどね（笑）。

稲村　だから「食べもんがええなー」「あと中国っぽいのがええかな」思って、バーッて食べてる画が面白いのが炒飯やったんですよ。飛び散る感じが浮かぶし。最初は肉も考えたけど、それだと「はじめ人間ギャートルズ」っぽくなっちゃうんで、違うなと。

疋田　そう言えば「ニーハオ」とか「シエシエ」とか、仮歌の段階から中国語っぽいものは当ててたね。

田原　えらいもんで歌詞を見てると、ホンマに炒飯食べたくなってきちゃうんですよ（笑）。

──ちなみに「炒飯」って、ピラフの服に書いてありますよね。

稲村　あ！ 書いてますね。

──「炒飯MUSIC」はそこからインスピレーションを受けたと思ったのですが。

稲村　……ということにしましょう！ そうや、ピラフ様が着てた。「ドラゴンボール超」にもピラフ出てるし、いいですね。つながりましたね。一応、キャラクターも考えながらは作ったんですよ。餃子（チャオズ）とか天津飯とか食べ物の名前だったりするし、「その中で出てきてないのは炒飯やな」と思ったけど……実は出てましたね（笑）。

一同　ははははは（爆笑）。

稲村　まあ、いっか！

やりすぎるんなら大歓迎

──「炒飯MUSIC」はMVもオマージュ満載に仕上がってますので、その話も聞かせてください。

稲村　最初、監督の田辺（秀伸）さんが「どうしますー？ 『ドラゴンボール』に寄せます？」って言ってきて、俺らは「絶対、寄せたくない」って話してたんですけどね。

──そうだったんですか？

稲村　ただスタッフらも込みで考えてるうちに、「そんなん、悟飯が歩いてるあのやつ（「ドラゴンボールZ」の初代エンディングテーマ「でてこいとびきりZENKAIパワー！」のアニメ映像）やったらええやん」みたいな感じになって。寄せるんじゃなくて、むしろまんま（笑）。その意見が出た瞬間に全員「それ、めっちゃええやん！」って。3時間くらい田辺さんに打ち合わせの時間いただいてたんですけど、20分とかで一気にまとまった。中途半端に寄せず、やりすぎるんなら大歓迎やなと。NG来るノリでやりまくりました。

──オマージュというか、再現に近いですよね。

稲村　そうそう。ピッコロが上から降りてくるシーンとかをみんなで一緒に観て、「これをギター持ちながらやったらええやん」って言ったり。

──ワイヤーアクションのシーンですね。

稲村　あれは撮影が大変でした。人間って、地面に付いてる部分が多ければ多いほど身体が動くシステムらしくて。だから浮いてしまうと、ホンマに何もできない。ギターも全然弾けなくて。それでも田辺さんは「ハイ、OK！」言うてるんですよ。「弾けてないのが、むしろいい」みたいな（笑）。

下上　エキストラも面白かったな。じいちゃん役の方が完全な姿で現れて場がザワつきました。

稲村　僕らは弾けてないくらいでちょうどいいのに、エキストラの方はむっちゃがんばってくれてて。おじいさんに何回もダンスしてもらったけど、疲れてだんだん肩が上がらなくなってくるんですよ（笑）。

下上　監督自らが前に出て、振付を指導してはりました。

稲村　こっちは「ハイ、OK！」しか言われんのに。逆再生の口の動きもルーズやしな。おじいさんにはがんばってもろたわ。

──「怪物（モンスター）」のところで出てくる中華街で見かけるかぶり面みたいなのは？

稲村　なんかヘンなやつ被ろう、みたいなノリですね。

下上　アニメではデッカい恐竜が横切るんやけど。

──メンバーが着てる服の色も、悟飯と一緒ですし。

稲村　はい、合わせまくりです（笑）。あとは神龍をギターのフレットにしたり、丘を炒飯のどんぶりにしたり。

下上　もとのやつより派手やと思うなー。途中でかめはめ波と魔貫光殺砲と気円斬も出てくるし。

稲村　「炒飯MUSIC」のMVを観て、アニメのエンディング映像を思い出したり、観てくれる人がいたらうれしいですね。もうね、歌詞もアレンジもMVもめちゃめちゃ盛り込んでるから。はちゃめちゃさを感じ取ってほしい。「がんばって生きていこうぜ！」みたいなメッセージじゃ、アルカラらしくないんで。