ナタリー PowerPush - アルカラ
策略家それともピュア? 全員インタビューで探るその素顔
今こそ素直さを出したかった
──今回の「ドラマ」ですが、今までにない挑戦をした部分はありますか?
稲村 僕的には「愛」っていう言葉のニュアンスをちょっと変えてみたり。例えば「恋愛」でいう「恋」の部分より、もうちょい心が真ん中にある感じの「愛」というか。でもきれいなもんじゃなくて、「いびつな」っていう言葉を使いましたけど。あとは「キミ」って歌い方をしたりとか。今まであんまり「キミ」とか歌わなかったんです。「あたい」とか「あんた」って言い方をしてたんですね。赤裸々な二人称は恥ずかしいなと思ってきたんですが、あえてやってみたというか。結成から10年経って、そこをやってみたかった。
──「あんた」だと少し強いし、聴き手に拒絶されてしまうこともありそうですよね。
稲村 そうですね。今まで素直に自分を見せられないから、横からパンチを打っていたようなところがあったんですけど、今回は素直に見せたくて、そういう言葉をチョイスしましたね。
──では皆さんが今作の収録曲で気に入ってる曲と、そのポイントを教えてください。
疋田 僕は2曲目に入ってる「踊れやフリーダ」。ドラマーとしてですけど、前作と前々作はちゃんと「引く」ことを考えたんですけど、この曲に関しては、いかに雰囲気を壊さずに目一杯叩くかということをしてて。
──この曲は途中の変拍子のハンドクラップもすごいですよね。
稲村 あれはライブでは再現できないです。何人も必要なので。レコーディングのとき、ディレクターにこういう音はサンプラーを使うほうがいいんじゃないかって言われたんですけど、サンプラーを探すより、人間の手でやるほうが早かった(笑)。
──では田原さんは?
田原和憲(G) 「380」ですね。僕はインストのクオリティが作品ごとにどんどん上がってると思って。ギタリストとしては、そんなに大したことはしてないですけど。
──この曲はロマ音楽っぽいですね。
稲村 僕がバイオリンかじってるんで。昔習ってたときよりむっちゃ一生懸命弾いてるんですよね。
下上 これもライブでは再現不可能です(笑)。
稲村 バイオリン5台分なんで。実際に5人探してきたら、できるかもしれんけどな。
──それはぜひ観てみたいです。下上さんは?
下上 僕は「ビデオテープ」。神戸にいた4、5年前からAメロ~サビ~Bメロ~サビみたいな曲の原型はあって。僕、スタジオでやった演奏をMP3プレーヤーで録って聴くのが好きなんですけど、これは特に好きでずっと残してて。「いつかやらへんのかなあ」と思ってたら、今回レコーディング終盤でギリギリのときにやることになって。やっと完成したのは感慨深いですね。
稲村 今やからこそ付けれる歌詞も書けたし。タイミングもあったというか。
──歌詞に出てくる“10年後の僕”に「今の姿をまっすぐに見れていますか?」というフレーズがあったり、アルカラにしては珍しいタイプのストレートな内容ですね。
下上 今回のアルバムやからこそできたし、ちょうどハマったっていうのはあるかな。
ボーナストラックはアルカラのピュアすぎる部分
──じゃあ最後は稲村さんに締めていただきましょうか。
稲村 僕は2曲あるんですけど(笑)。まず「YOKOHAMAから来た男」は、アルバムタイトルを「ドラマ」にしたきっかけの曲でもありますし。こういうテイストだったり昭和歌謡な曲は今までもあったんですけど、内容が少女が大人になっていく中での精神的な葛藤だったり、憧れと現実の狭間で揺れる感じだったりをいろんな方向から描いてて、それを昭和歌謡テイストの曲で出せたんは自分の中で新しかったです。
──そしてもう1曲は?
稲村 ボーナストラックです。
一同 ハハハ!(笑)
──いいんですか? 内緒にしなくて。
稲村 全然構わないです! ボーナストラックの真っ直ぐすぎる感じは、アルカラのピュアすぎる部分を出した感じやなと思うし。
──この曲を聴くと、アルカラは本当はピュアなのか、それとも二面性があるのか、どっちかわからなくなりますね。
稲村 ま、実は僕らもわからないんですよね(笑)。それがアルカラなのかなとは思いますけど。
ニューアルバム「ドラマ」/ 2012年7月25日発売 / 2300円 / Victor Entertainment / VICB-60090
アルカラ
稲村太佑(G, Vo)、下上貴弘(B)、田原和憲(G)、疋田武史(Dr)の4人からなるロックバンド。2002年7月に結成され、2003年1月に現メンバーとなる。ギターロック、オルタナティブロックをベースとしながらも、その枠に留まらない自由奔放なサウンドで頭角を現す。2011年7月にアルバム「こっちを見ている」をビクターエンタテインメントより発表。2012年2月にDVD付きシングル「おかわりください」を、同年7月にニューアルバム「ドラマ」をリリースした。