「カナコさんはアルツバにとって特別な存在」
──シングルにはカップリングとして「Evergreen」というエモーショナルな1曲も収録されています。
カナコ 私にとっては本当に特別な楽曲です。いわゆる卒業ソングですが、最初、プロデューサーさんはもっとしんみりしたお別れの曲を想定していたそうなんですよ。でも今回の卒業にネガティブな要素はゼロだし、明るい感じがいいと私のほうから提案させてもらいました。私が辞めてもアルツバは続いていくわけで、明るく未来を照らすようなイメージにしてほしいなって。卒業ソングですが、これからもずっと歌い継がれるようなエモい曲に仕上がっていると思います。
ツカサ そこは私も同感なんですけど、カナコちゃんが卒業したあと、残されたメンバーはどうやってこの曲を表現していけばいいのか。そこは課題かもしれませんね。今はまだ考えなくてもいいけど。
リョーカ 私が加入したとき、最初に歩み寄ってくれたのがカナコさんだったんですよ。リーダーとしてたくさんLINEで連絡をくれたり、話しかけてくれたりして。正直、この期に及んでまだカナコさんの卒業を受け入れられていないところもあるんです。私は歌に感情を込めることを大切にしているのですが、この「Evergreen」に関しては歌うたびに感極まってしまう……。やっぱりカナコさんはアルツバにとって特別な存在なんです。
カレン カナコさんからメンバーに「卒業します」という報告があった日のことを、はっきりと覚えています。その話を耳にした瞬間、涙が止まらなくなっちゃったんです。さらに追い打ちをかけるように「Evergreen」のデモ音源が届いたときは……もうギャン泣き状態でしたね(笑)。そしてライブで歌うときも号泣。気持ちがめちゃくちゃ入る曲です。
ツカサ オトちゃんも含めた新メンバー3人が加入したタイミングで、カナコさんがリーダーになって。それまではリーダーというシステムがアルツバになかったんですよ。
カナコ 正確に言うと、一時期はキャプテンという役職があったんだけど、それはそこまで活動内容に深く関わる感じでもなかったし。
ツカサ カナコさんは冷静に全体を見渡す力がすごくあるんですよね。メンバーそれぞれのことを細部まで気にかけてくれますし。カナコさんがリーダーだからこそ、チームとして一体感が出ているのは間違いないと思います。
──ものすごく慕われていますが、カナコさんはどうして卒業を決めたんですか?
カナコ 「どこかで区切りを付けなきゃ」という気持ちはずっと持っていたんです。もともと私はモデルをやりたくて上京したわけですけど、ひょんなことから始めたアイドル活動が想像以上に楽しくて、長く続けてしまったというのが正直なところで。そんな中、最近になって本来自分がやりたかったような仕事がけっこう舞い込むようになってきたんですね。そこで「とうとうそのタイミングが来たんだな」と自分の中で決心がつきました。
──カナコさんが卒業すると、シオリさんが唯一のオリジナルメンバーということになりますね。
シオリ 周りからは「よく続けているよね」と言われることも多いです(笑)。ただ今のところ、私は辞める気は一切ございません! というか、今後のことについては何も考えていないんですよね。今はカナコの卒業のことで頭がいっぱいですし。
──もともとはカナコさんもシオリさんも「石に噛り付いてでもアイドルを続ける!」という感じではなかったですよね。
カナコ 私もシオリもアイドル経験はなかったし、知識もなかったですからね。でも逆にアイドル業界の常識とか慣習がわからなかったからこそ、続けられたのかもしれない。いきなりメンバーが一気にいなくなったときも「アイドルってこういうものなのかな?」と呑気に捉えていましたし。
シオリ 確かにそれはあったかもね。
自分たちで物事を決めていったほうがいいパフォーマンスができる
──先の話をして恐縮ですが、順当にいけばシオリさんが2代目リーダーに就任ということになりますよね。
シオリ うーん、どうだろう……。今の段階でその話をされても、という感じですね。
カナコ 私が卒業を発表してから最後のライブまで約3カ月あって。私としては、アルツバが次のステージに進めるように、その間にすべてをクリアにしてから残るメンバーにバトンタッチしたいんです。
──退社する社員が引き継ぎ作業するように?
カナコ そう、まさにそんな感じです。はっきり言ってしまうと、これまでアルツバというのは行き当たりばったりのグループだったんですよ。メンバーが激しく入れ替わるものだから、そうせざるを得なかったんですね。「次はここ!」「その次はあそこ!」という感じで、長期的に大きな目標を立てることが難しくて……。ただ、その状況も一昨年くらいから徐々に変わってきたんです。ワンマンをやったり、定期公演を重ねたりすることで、グループとしてのビジョンができてきたと言いますか。だから私がいなくなっても、グループが前に進み続ける体制は変わってほしくないんです。少なくとも私はその準備を済ませてから去るつもりですので。
──素晴らしいと思います。最近のアルツバを見ていると、衣装をカナコさんがデザインしたり、セットリストを自分たちで決めたり、メンバーの自主性が重んじられている印象もあります。
キアラ そのあたりは去年くらいから変わったところですね。確かに初期の頃はスタッフさんに指示されたことをこなす感じだったんですけど。
シオリ 去年の年末に卒業した(アクエリアス・)イオリちゃんが中心になって、自主的な体制に変えていったんです。
カナコ このグループは、自分たちで物事を決めていったほうがいいパフォーマンスができると私は考えています。それでみんなの意見をかき集めて作り上げたのが、この間の10月5日にKANDA SQUARE HALLで開催した結成4周年ライブ。手応えはすごくありました。
カレン ステージ上に流れる動画も私とカナコさんで作ったんですよ。
ツカサ MCの流れとかも自分たちで決めるようになりましたね。演出とか構成といった部分は、今はほとんど自分たちでやっている感じになっています。
カナコ 結局、グループのことを一番理解しているのはメンバーなんですよ。ファンのことを一番理解しているのもメンバー。なのでメンバーの考えがストレートに反映されるようになったのはグループにとってすごくプラスだったなとリーダーとしては感じます。組織としてすごく風通しがよくなりましたね。
──先ほど卒業メンバーのイオリさんの名前が出ましたが、彼女の歌唱力がなくなったことはパフォーマンス面にかなりの影響があったと思います。そこからどうやって新しいアルツバ像を再構築したのでしょうか?
シオリ “魅せ方”を変えるしかないという考えでした。イオリちゃんがいた頃は個々のカッコいい魅力を前面にバーンと打ち出して、全体としてのパフォーマンスにつなげていくという発想。今は逆にグループとしてのまとまりを重視している感じです。
キアラ 幸いにして新しく入った3人も歌える子たちだったので、その声質を生かそうという話も出ましたし。
オト そんな……。まだついていくので精一杯です。
カナコ 実際の話、この1年でファンの方が一気に増えたんですよ。以前では考えられない規模の会場でワンマンができるようになりましたし。それはもちろん3人が加入した効果もあったと思いますし、ファンの方からも「グループとしてまとまりが出たね」とよく言われるんですよね。自分たちでもチームワークみたいな部分はすごく強くなったと感じますし。
卒業ライブには「絶対に来い!」
──この記事が出る頃はライブツアー「かなこのいきたいとこ」の真っ最中です。意気込みを聞かせてください。
カナコ このツアーは名目上、私の卒業ツアーということになっておりまして、個人的なわがままで実現したようなものなんです。「どうしても関西や九州に行かせてくれ!」とスタッフさんに頼み込みました。ただ、そうは言っても私個人が満足すればOKという話ではなくて、グループにとって次につながるツアーにしたいんですよね。「やっぱりアルツバって最高だな。次のライブも来たいな」と思ってもらえるのが一番なので。
ツカサ すごくワクワクしますね、このツアーは。私は本来すごく出不精で、ちょっとでも遠いところに行くとホームシックにかかってしまうんですよ。だけど、最近はライブのあとでメンバーとその土地のおいしいごはんを食べに行ったりするのが楽しくて。卒業旅行じゃないけど、最高の思い出を残したいです(笑)。
リョーカ カナコさんが卒業したあとも、希望を感じてもらえるようなツアーにしたいなと考えています。私たちはまだ入って1年くらいですけど、これまでみたいに任せっきりの状態じゃなくて、成長した姿をお見せしたいです。
──そして12月28日、池袋のStudio Mixaでカナコさんの卒業ライブが行われます。
オト 辞めてほしくないというのが率直な気持ちではあるんですけど、もうそんなことも言ってられないですからね……。「これなら残された6人に任せられるな」ってカナコさんにもファンの方にも安心していただけるライブにしたいです。
キアラ 私の気持ちとしては、過去にアルツバを好きだった人も全員強制的に来てほしいくらいです! カナコさんを最初から知っている人は変化を感じることができるだろうし、最近知った人にも有終の美を見届けていただきたい。とにかく何がなんでも絶対にこの日だけは会場には来てください! それくらいアルツバにとっては大事な1日です!
──すさまじい気迫でプロモーションしますね(笑)。
キアラ だって本当に“次”がないんですよ? ここで見逃したら絶対に後悔すると思います!
──最後にカナコさんから意気込みをお願いします。
カナコ まず言っておきたいのは、今後、アイドルになることは絶対ないということ。ですから……(カシオペア・キアラのほうを見ながら)「絶対に来い!」と言いたいです(笑)。
キアラ そうですよ! 「お忙しいとは思いますが、来ていただけたらうれしいです」なんて流暢なことを言ってる場合じゃないので(笑)。
カナコ 最初は本当に何もできなかった私が、アルテミスの翼というグループで一人前のアイドルになることができました。その集大成を目に焼き付けていただければ幸いです! それから今後のアルテミスの翼もよろしくお願いします!
公演情報
アルテミスの翼 カナコ・ケンタウロス卒業記念ツアー「かなこのいきたいとこ」
- 2024年11月9日(土)大阪府 PLUSWINHALL大阪
- 2024年11月17日(日)福岡県 福岡ポケット
- 2024年11月24日(日)東京都 浅草 VAMPKIN
カナコ・ケンタウロス 卒業ライブ サヨナラ僕の愛した世界
2024年12月28日(土)東京都 Studio Mixa
プロフィール
アルテミスの翼(アルテミスノツバサ)
レコード会社・rock fieldがプロデュースするアイドルグループ。「100年に一度の混沌とした世界に“愛と勇気と友達”を与えるためにギリシャ神話の世界から人間界に降り立った7柱」というコンセプトで活動している。2020年11月に東京・TSUTAYA O-WESTでデビューライブ「ともだちいっぱい」を行い、2021年1月に1stシングル「最終ゼンヤ / MONSTERビーツ」を発表。2022年8月に初のアルバム「Wings of Artemis」をリリースした。2023年2月にはタイ、7月にはフランスで行われた「Japan Expo」に出演。同年9月に初のミニアルバム「Road to Greece」を発表した。2024年10月に東京・KANDA SQUARE HALLで結成4周年記念ワンマンライブ「Wings of Artemis 4th Anniversary ONEAN LIVE」を開催し、11月にシングル「ちゅき...ちゅ!」をリリースした。
アルテミスの翼 Wings of Artemis Official Website