ナタリー PowerPush - あらかじめ決められた恋人たちへ
池永正二が語る「DOCUMENT」劔樹人が語る「劔樹人」
15年の活動を経て気付く「ウチ、変わってんねや!」
──今までのあら恋ってカッコつけてたんですか?
カッコつけてたっていうか、なんかギターを入れるとか、そういう普通のことはしなくていいって思ってましたね。というのも、これまでテルミンとピアニカが主旋律のインストバンドって編成に違和感がなくて。こんなん個性的なことでもなんでもないと思ってた。
──へっ???
いや、ホントにそう思ってたんです。周りにもっと変な編成のバンドがいっぱいいたから。だからギター入れたりとか、そういう普通のことをやったら、個性がなくなるって思ってて。でも「CALLING」以降、フェスに出るようになってほかのバンドを観てると、ウチってメッチャ個性的なんですよね。
──あはははは(笑)。遅すぎる気付きがありましたか。
「ウチ、変わってんねや!」って(笑)。右を見たらすっごい顔して劔(樹人)がベース弾いてるでしょ。で、左を見たらオッチャン(クリテツ)が難しい顔してテルミンを弾いてて、うしろ見たらキムがジャージ姿で鬼の形相でドラムを叩いてるし、ギター(オータケコーハン)はギターでむっちゃ弾くの速いし。しかもオータケくんだけやけにカッコいいしね。自分は自分で、なんか華奢で猫背で肩の張ったカッコ悪い兄ちゃんで。その兄ちゃんがジャンプしながらピアニカ吹いてる。これ十分ヘンやわ、って(笑)。その上、ウチらひと言もしゃべらへんし。
──あら恋のライブにおけるボーカルマイクの出番は池永さんが絶叫するときだけですもんね(笑)。
だから余計に変わってる感が増していく(笑)。
オッサンになったら照れなくなった
──「変わってる」とは言いつつ毎年フェスには引っ張りだこですよね。この夏、ナタリーのフェス出演者に関する記事を書くとき、何度「あらかじめ決められた恋人たちへ」ってタイプしたことか。
野外でのダブって気持ちいいんですよね。ツカーンッ!ってスネアが響く感じとか。こだまして広がっていく感じ。山頂に行くと叫びたくなるでしょ。あの感じに近いかもしれない。あと曲調がAメロは結構ユルめのダブというか、ちょっと落としたところから始まって、サビになったらズドーンッて。あの「溜めて溜めて溜めてドーンッ!」っていう楽しさっていうのは、ダブだろうとロックだろうと映画だろうと小説だろうと、共通した楽しさだと思うんで。
──そういうリスナーの期待に応える意味でも、今作ではよりアタックの強いサウンドを目指した?
なんかエネルギーがあって強くて大きいサウンドは目指しました。リスナーに応えるためだけに曲を作ってるわけじゃないんですけど、ライブのリアクションを肌で体感したら、もっと強いもの、もっと大きい音を出したいって。あんまり意識しすぎるとウソくさくなっちゃうけど、それでも今は「もっと広く鳴らしたい!」って気持ちになってる。30超えたオッサンがそういう向上心を持ってます(笑)。
──あはははは(笑)。
あと昔はベタなことが嫌いだったんですよ。それもギターを入れなかった理由で。ギターがジャキーンって鳴ったら、盛り上がるのは想像できるじゃないですか。だから自分らはそういうこと以外のことをやろうとしてた。だけどDinosaur Jr.なんかがまさにそうなんですけど、オレ、ギター大好きなんですよね(笑)。ギターバンドばっか好きで聴いてたんですよ、そういや。そういう自分をさらけ出せるようになったっていう意味でもなんか改めて若返っていってる気がしてます。そういうのありません?
──ありますあります(笑)。中年になると「好き」って口にすることに照れがなくなりますよね。今のアイドルブームをオッサンが下支えしているのにはそういう理由もあるんだと思いますよ。カワイイ女の子を見てあっけらかんと「カワイイ」って言えちゃいますから。
ねっ! オレ、Flaming Lipsとか好きだったことを今さら思い出したりしてますもん。
──まさに大型フェスのヘッドライナーバンドを素直に愛せるようになりましたか(笑)。
そうそう。ステージに紙吹雪をバーッて散らしたりとか、なんかいっぱい風船を出したりとか、ああいうのいいじゃないですか。本気で調べましたもん。「あれ、いくらでできんの?」「自主でやるとしたら、メンバー1人当たり何個風船を膨らませなアカンのやろ?」って(笑)。まあすぐに「ムリだ」ってなっちゃったんですけど、でも好きですね、ああいう壮大なの。そう言えるくらいには吹っ切れちゃった。
──ある意味、すごいですよね。“ベタ”に寄せることが“新機軸”になるバンド(笑)。
珍しいですよね(笑)。
- ニューアルバム「DOCUMENT」/ 2013年9月11日発売 / KI-NO Sound Records / KI-NO 001
- [CD] 2600円 / KI-NO 001
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収録曲
- カナタ
- Res
- Conflict
- へヴン
- クロ
- テン
- days
- Fly
"Dubbing 06" あらかじめ決められた恋人たちへ Release TOUR 2013
- 2013年9月22日(日)
- 京都府 京都METRO
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ / LAGITAGIDA - 2013年11月1日(金)
- 大阪府 梅田Shangri-La
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ - 2013年11月2日(土)
- 愛知県 池下CLUB UPSET
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ - 2013年11月9日(土)
- 東京都 代官山UNIT
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ - 2013年11月16日(土)
- 福岡県 天神graf
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ / LAGITAGIDA / チーナ / 百蚊 / Hearsays - 2013年11月23日(土・祝)
- 岡山 YEBISU YA PRO(オールナイト)
<出演者>
あらかじめ決められた恋人たちへ / and more
あらかじめ決められた恋人たちへ
(あらかじめきめられたこいびとたちへ)
1997年、池永正二(Track、鍵盤ハーモニカ)のソロユニットとして活動をスタートしたエレクトリックダブユニット。当時の池永の勤務先、大阪・難波ベアーズを中心としたライブハウスやカフェ、ギャラリーなどでライブ活動を開始し、2003年アルバム「釘」をリリースする。2005年のアルバム「ブレ」のリリースを経て、2008年に拠点を東京に移すと、クリテツ(テルミン、Per、鍵盤ハーモニカ)、元ズボンズのキム(Dr)、元ミドリの劔樹人(B)を迎えたバンド編成でのライブを積極的に展開。同年に3rdアルバム「カラ」を、2009年にはライブ音源をエディットしたフェイクドキュメンタリー的アルバム「ラッシュ」を発表する。そして2011年に全曲バンドレコーディングによる「CALLING」を発売。これと前後して“叙情派轟音ダブバンド”としてその名を広く知らしめ「FUJI ROCK FESTIVAL」「BAYCAMP」「RISING SUN ROCKFESTIVAL」「朝霧JAM」など、大型ロックフェスにも多数招へいされる。2012年、30分2曲のミニアルバム「今日」をリリースし、2013年9月には5枚目のオリジナルアルバム「DOCUMENT」を発表した。