音楽ナタリー PowerPush - aquarifa
月の下で育まれた“秘密”
aquarifaが3枚目のミニアルバム「マーニの秘密」をリリースする。
繊細な女性ボーカルとソリッドなロックサウンドを融合させた前作「月明かりのせいにして」から1年9カ月を経て、今作でさらに音楽表現の幅を広げた彼女たち。今回ナタリーでは岩田真知(Vo, G)と松川真也(G)にインタビューを実施し、制作過程などを振り返ってもらうことでその成長の背景を探った。
取材・文 / 鵜飼亮次 インタビュー撮影 / 佐藤類
長い制作期間の中で起こっていたこと
──前作から1年9カ月ぶりということで、決して短くない時間が経過しました。当事者としてはどう感じていますか?
岩田真知(Vo, G) もう念願のリリース、っていう感じです(笑)。何度かリリース日を仮決定させたことはあったんですが、それが延びに延びてしまって。
松川真也(G) 制作に時間がかかってしまった結果ではあるんですけど……まさかこんなにかかるなんて(笑)。
──ご自身にとってもようやく、という感じなんですね。
松川 はい。ただこの期間に僕らはすごく濃密な時間を過ごしていて。特に自分にとってはこの期間を経なければ将来的にバンドを続けていられたかわからないぐらい重要だったと思っているんです。
──どういった過ごし方をしてきたんでしょうか?
岩田 メンバー1人ひとりがaquarifaの強みをどう出していけるかをとことん追求してきたんです。
松川 凛とした女性ボーカルの声に激しいサウンドをぶつけるっていう自分たちのスタイルをよりよい形で提示する、そのためには個々の音を純粋によくしなきゃいけないっていうことに今作の制作途中で気付いて。そこでプロデューサーさんやテックの方が日々メンテナンスしてらっしゃる機材を見せてもらったり、そこで実際に音を出していい音とは何かを学んだりしてました。
──その体験を経てバンドにどんな変化が?
松川 いい音に出会った結果、「自分はこういう音を出したい」みたいなのが見えてきたんです。それによってプレイヤーの男3人はもう音作りが面白くなっちゃって(笑)。欲しい機材を新たに買うとか、機材のツマミをいじったりネジの締め具合を調整してみたりとかして……そんなことで音がかなり変わってくるんですよね。
──音作りで試行錯誤を繰り返していたと。皆さんにはaquarifaとして出したい音というか、理想の音が最初からあったんですか?
松川 イメージは前から持ってましたね。でも前作「月明かりのせいにして」までセルフプロデュースでやってきて、それを描くには限界が来ていたんです。前作から先をどうしていいのかわからなくなっちゃって。それで今作を手がけたプロデューサーの1人・akkinさんに会ったときに「こういうことを自分たちはやりたい、でも知識がなくて」って相談して。
──ヒントを得ようとしたんですね。
松川 はい。それをakkinさんやもう1人のプロデューサーの石崎光さんは僕らの課題が何かを自分なりに解釈した上で新しい試みを提案してくれたり、ほかのテックの方を紹介してくれたりして。それが自分らが新しい音を知るきっかけになったという感じですね。
岩田 それで自分たちのやりたいことや求めてるものがわかってきて、理想の音も出せた結果、「マーニの秘密」は自分たちのことが皆さんに伝わりやすい内容になったかなって。自分たちが狂気と優しさをあわせ持った音を出す、二面性を持ったバンドだってことがわかりやすく提示できた気がします。
シンガーとしての成長
──岩田さんの場合はいかがですか? この1年9カ月の間で起こったエピソードなどあれば教えてください。
岩田 私は「MINAMI WHEEL 2013」に出演した際に体調を崩してしまって。お客さんの前で声がうまく出せない、すごく悔いの残る内容のライブをしてしまったことがあったんです。
──ええ。
岩田 でも観に来てくれた方々は、ふがいないライブをした自分に文句を言うのではなく、逆にすごく応援をしてくださって。そういう経験をしたことで、ハッキリとは見えていなかったお客さんの姿、温かみをすごく感じられるようになったんです。その結果、私を支えてくださる人たちに向けて「もっと歌を届けたいな」って気持ちが生まれました。
──それによって具体的に変わってきたものは?
岩田 1つは歌詞ですね。これまですごく幅広い対象に向けて書いていたものを、より明確に相手を考えて書くようになって。例えば今作だと「その手をつなげたら」の歌詞は自分を支えてくれたお客さんに向けて、今度は自分がその人たちを支えたいというか、少しでも救えたらという気持ちを込めて書いたものになってます。
──なるほど。
岩田 あと体力もつけなきゃって思うようになったり、歌唱力の向上を目指してボイストレーナーの先生を紹介してもらったりしました。自分の価値観や目指すべき理想の声みたいなものがより明確になってきたような気がします。だからほかのメンバーが音を作っている間、自分はその音に負けない声を作らなきゃいけないと思って取り組んできました。
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収録曲
- その手をつなげたら
- ex) Wonderland
- 崩壊リカバリー
- 溶けない嘘
- Mirror
- 321(スリーツーワン)
aquarifa ニューアルバム「マーニの秘密」発売記念ミニライブ&サイン会「密会に月あって~皆既月食ver.~in TOWER SHINJUKU」
- 2015年4月4日(土)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
START 21:00
aquarifa 岩田真知(Vo, G)ソロ・アコースティックライブ&サイン会
- 2015年4月11日(土)東京都 タワーレコード難波店 5Fイベントスペース
START 16:00
aquarifa ニューアルバム「マーニの秘密」発売記念 岩田真知(Vo, G.)&リンタロウ(カホン)ミニライブ&サイン会
- 2015年4月19日(日)広島県 タワーレコード広島店 イベントスペース
START 13:00
「マーニの秘密」リリースツアー ~君の秘密を教えて~
- 2015年5月21日(木)宮城県 仙台MACANA
- 2015年5月31日(日)福岡県 Queblick
- 2015年6月10日(水)愛知県 池下CLUB UPSET
- 2015年6月25日(木)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
- 2015年7月24日(金)東京都 WWW
aquarifa(アカリファ)
岩田真知(Vo, G)、松川真也(G)、TAKUTO(B)、リンタロウ(Dr)からなる4人組ロックバンド。エモーショナルなギターサウンドと儚げな女性ボーカル、内省的な歌詞を特徴とする。2012年4月に1stミニアルバム「scene」を発表し、同年「SUMMER SONIC 2012」の「出れんの!?サマソニ!?」や「MINAMI WHEEL 2012」といった大型イベントに出演して注目を集める。2013年7月に2ndミニアルバム「月明かりのせいにして」をリリース。2015年4月に1年9カ月ぶりの新作ミニアルバム「マーニの秘密」を発表する。